ノロジカを好んで食べるラウジッツのオオカミ

ノロジカ

http://www.nabu.de/aktionenundprojekte/wolf/hintergrund/14694.html

家畜が捕食されるのは、オオカミの餌の1パーセント未満だった

 

2012年3月、グルリッツのゼンケンバーグ-研究所の科学者は、ドイツに再びオオカミが戻ってから8年間のオオカミの食性を調べた。その結果は、我々に大きな安堵をもたらした。オオカミの食物のうち、家畜の占める割合は1パーセント未満だった。

長い間、オオカミはドイツで根絶されていたが、現在、徐々に元にもどりつつある。しかし、すべてのドイツ国民がこれを歓迎しているわけではない。オオカミは、多くの寓話や伝説の中で肉食獣として悪者扱いされている。オオカミというと、羊を捕食する、ペットを食べる、さらに人々を襲うとさえ思われ、ドイツ国土にこういった捕食者が戻ってくるとなると、個体数によっては、ハンターや農民たちに、過去の好ましからざる思い出を呼び起こさせることとなる。

「オオカミの食性は、ドイツでの復活の最大の論点だった。そこで我々は,10年前からラウジッツに戻ったオオカミの食性を調査することにしたのです。」ゼンケンバーグ研究所動物学部長のヘルマン・アンゾルゲ氏は説明する。「我々は、オオカミがどんなものを食べていたのか、そして、ドイツ東部にオオカミが再び現れてからこの10年間に何が変わったのかを見てきました。」

この目的のために、研究者は3,000以上のオオカミの糞を集め、未消化食物残渣、例えば、体毛、骨、蹄または歯などを調査した。さらに、獲物となった死体の残りも調べ、これらより、オオカミが摂取する栄養の詳細を解析した。餌食の96パーセント以上が野生の有蹄類であった。主なものはノロジカ55.3%で、続いて、アカシカ20.8%、イノシシ17.7%であった。ウサギは少なく、3%であった。

「餌動物に占める家畜の割合は、僅か1%に満たなかった。」

「羊やその他の家畜が、電流を流したフェンスや護衛犬に保護されており、野生の中で十分な獲物が得られる限り、オオカミは危険ではありません」とアンゾルゲ氏は言う。

オオカミが何を食べる動物かというだけでなく、長年にわたって食性がどのように変わってきているか、グルリッツの科学者たちは研究している。オオカミは、食性に関してとても順応性が高い。たとえば、カナダではよく知られていることだが、カナダのオオカミは、秋にはサケを好んで食べるのである。

ラウジッツのオオカミは、ポーランドから来ている。ポーランドでは、ドイツのオオカミと対照的に、主にアカシカを獲って群れを養っている。

ポーランドの森と比較すると、ラウジッツの森はむしろ小規模で点在し、道や草原が入り組んでいる。こういった環境が広範囲に及ぶため、少数の大きなな森に、ノロジカや野生のイノシシが引きこもっていて容易く獲ることができる。ポーランドから来たオオカミから見れば、ノロジカはこのように環境条件の変化とともに出現してきた獲物であり、オオカミの食性を速く変化させることとなった。オオカミは、2世代も経ない間に、ドイツ東部の文化的な景観の新しい環境に適応したのだ。

  (抄訳:佐々木まり子 2012年7月3日)

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