オオカミ無視の自然保護行政: 欧米のオオカミ情報を集めようとしない環境省!!

オオカミ無視の自然保護行政:
欧米のオオカミ情報を集めようとしない環境省!!

朝日新聞GLOBE2015年2月1日(日曜版)記事
「シカ激増で変わる保護のあり方」を読んで

 
朝日新聞GLOBE2015年2月1日(日曜版)記事「シカ激増で変わる保護のあり方」を見て驚いた。【日本の環境省の鳥獣保護業務室は「外来種のオオカミには未知の点が多く、導入は現実的でない」とみている】とある。「そんな、とんでもない」!との思いから、2月6日、コメントを出した鳥獣保護業務室に電話をかけてみた。その回答の要点は以下のとおりである。

【1】「外来種」の環境省の定義は、同種、異種にかかわらず国境を越えて移住してくる、あるいは運び込まれる生物種との回答。北海道に生息していたエゾオオカミも北海道以外の日本列島に生息していたニホンオオカミもハイイロオオカミと同種であることが証明されたが、やはり外国から導入されればハイイロオオカミも「外来種」となる。となると、既に野生化して自己繁殖しているトキやコウノトリの扱いが問題となる。両種も外来種であることに違いない。もっとも、外来種でもケースによって扱いが異なるというのであれば問題はない。そういえば、かなり以前になるが、同室の担当官の見解として、トキやコウノトリは自力で飛来する可能性があるから再導入は問題ないが、オオカミは自力で渡来できないから再導入は認められないという回答があった。どうも苦しい言い訳にしか聞こえない。

【2】ニホンオオカミは固有種ではなくて、エゾオオカミと同じように大陸に広く分布するハイイロオオカミと異ならないというDNA分析の報告(石黒直隆教授、岐阜大学)は読んでいないとのこと(昨年、同じ朝日新聞が報じている)。このような重要な輪文を読んでいないとは驚きだ。環境省は少なくともオオカミに関しては、もともと真偽が危ぶまれていた、時代遅れの形体分類学レベルにかじりついていて平気なのだ。

【3】「外来種のオオカミに関して未知の点が多い」という記事の記載に関して:「未知の点」と言ったのではなく、「わからない点」と言ったのだと言う。ここではどちらでもよい。「外来種」であれば「わからない点」が多いと決まり文句のように言いたいのだろうか。欧米のハイイロオオカミに関する調査研究は生態をはじめとして幅広い分野をカバーしており、研究論文はたいへん多い。最近ではインターネットを通じて、行政刊行物も手軽に入手できる。しかし、回答では、欧州のものはまったくみていないということであった。北米のものも読んでいるのかどうか曖昧であった。これにはまたまた驚いた。これでは「外来種としてのハイイロオオカミについてはわからない点が多い」となるのは当然である。あきれて、開いた口が塞がらない。このような無いに等しい情報で「導入は現実的でない」はないだろう。

 昨春、衆議院環境委員会で「オオカミ再導入」に関する質疑が行われた。国会始まってはじめての「オオカミ論議」で画期的であったと評価されるが、このような無知な官僚が恥ずかしげも無く、ぬけぬけと事実とは無縁な答弁しているというのが現実なのである。与野党の国会議員は、低レベルの不勉強な大臣や官僚たちを相手にしているのだということを認識してもらいたい。このような無知な官僚が「オオカミは検討するな」と地方行政に指示しているのである。だから地方行政はいつまでたっても動こうとしないし、動けない。地方自治の無視もはなはだしい。このような官僚たちによって、日本の自然は破壊され続けている。国民はもっと怒ってもよい。必要な情報をいち早く収集分析し国民に判断の材料として提供する。そして国民の求めるものを実現する。これが行政の役割であるはずである。優秀なはずの官僚がこうした無知無神経な発言を続けて平然としていられるのは異常だ。この背景には何があるのだろうか。

[朝日GLOBE2015年2月1日(日曜版)記事コメント2015年2月9日]                               

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