第8回全国オオカミアンケート調査2016報告 « 一般社団法人日本オオカミ協会

第8回全国オオカミアンケート調査2016報告


「賛成」は 5.1 ポイント増加し45.5%
【1】この報告書は、一社)日本オオカミ協会による第8回全国オオカミアンケート調査(2016年1月1日から12月31日の間に収集)の結果である。アンケート集めは、日本オオカミ協会会員560人(全国13支部)に依頼するとともに、会員以外の多くの協力者にもお願いした。アンケート回答者は、特に定めず、現場収集者に任せた。ただし、回答者は、調査関係者とは無縁な不特定多数を対象とすることを原則とした。調査場所は、道路、公共広場、公園、登山道、ハイキング道、トレッキング道などの公共の場及びこれに準じる場所で行った。講演会や教室でも行ったが、講話の影響を避けるために、アンケートの記入は講話の前に行うこととした。本調査は、乏しい資金のもとで実施せざるを得なかったために、系統抽出手法を採用できず、「行き当たり的・場当たり的」に可能な限り多数の回答を集めることにした。調査手法によるバイアスを極力小さく抑えるために目標数は1万以上とした。

回答者数は 11,586 人であった。この調査では系統抽出手法を採らなかったため、地方別回答者数には大きな差が出てしまった。最多が関東 49.7%(5,759)、それに中部 20.5%(2,374)、四国 14.2%(1,642)と続いた。近畿 6.0%(695)、北海道 3.3%(381)、九州 2.6%(299)、中国と東北各 1.4%(157;158)。したがって、地方間の比較は行わなかった。都市 54.9%、農山漁村 28.6%、その他と無回答 16.5%。回答者の年齢分布は 10 代後半(4.9%)から 70 代以上まで(各10~21%)。性別は、女性45.6%、男性53.9%、無回答0.3%。

【2】「オオカミ復活必要」は前回と比べて 5.1 ポイント増加して 45.5%、「不要」は 2.9 ポイント減少して僅かに11.0%、「わからない」は 2.4 ポイント減少して 43.3%であった。このアンケート調査を始めた 1993 年以降、オオカミの復活に賛成する者は、J 字あるいはやや S 字曲線を描いて着実に増加している。「不要」の減少は直線状である。「わからない」は緩い山なりを描き、2002 年までやや増加、2009 年まで横ばい、以後緩やかに減少している(図1)。

図1.オオカミ復活賛否の変動

【図1】オオカミ復活賛否の変動



【3】「二ホンオオカミもエゾオオカミもハイイロオオカミと同種であることを知っているか」 「知っていた」は僅かに13.5%に過ぎず、「知らなかった」が 86.1%と大多数であった。これを性別にみると、「知っていた」のは男性 9.6%、女性 5.9%となった。男女とも、大多数は「別種」あるいは「わからない」と答えていた。この認知度の低さは、外来種排斥観とつながって、オオカミ復活賛成数を押し下げていることが考えられる。正しい知識が普及すれば、復活賛成意見は大きくアップすることが考えられる。

【4】「オオカミ復活賛否」を性別にみると、男性 46.6%に対して女性 44.3%で、女性の方が 2.3 ポイント低かった。しかし、「不要」は男性 13.9%に対して女性 7.6%で、女性の方が 6.3 ポイント低かった。「わからない」は女性 47.9%に対して男性 39.4%で、女性の方が 8.5 ポイント高かった。年齢階別には、前回(2012/2013 年)と同様に、今回もまた「必要」は 10 代と 60 代以上で高く、30 代、40 代の壮年層で低かった(図2)。

図2.オオカミ復活の賛否:年齢階別分布

【図2】オオカミ復活の賛否:年齢階別分布(数値は四捨五入)



これは、多忙で厳しい就労・子育て条件に災いされて、周囲の社会的環境に目を配るゆとりを持ちにくい壮年層の厳しい現状を反映しているように考えられる。女性の場合は男性よりもさらに子育てや性差別による厳しい社会的条件に影響されて社会的関心が男性よりもやや低いのかもしれない。オオカミ復活だけでなく環境保全への関心を高める上でも、壮年世代から社会的関心と活力を奪っている格差社会の改善が必要である。

【5】「オオカミ復活必要(5273 人)」に関する理由のうち最も多かったのは、「オオカミは生態系・生物多様性にとって必要」68.7%であった。次は、「獣害対策にとって狩猟だけでは不十分」44.4%、そして「絶滅した種の復活は人間の責務」40.1%と続いた。「オオカミは好きな動物だから」という感情的な理由は 13.5%と僅かであった(図3)。

図3.オオカミ復活賛成の理由(n=5273)

【図3】オオカミ復活賛成の理由(n=5273)



この結果には、主にエコ及び倫理思想の影響が出ているように考えられる。「獣害対策」には、益害論的な価値観も影響しているかもしれない。感情的な回答が低かったのは、エコ思想と獣害情報が普及した結果かもしれない。

【6】「オオカミ不要(1277 人)」の理由で比較的高かったのは、前回同様「オオカミは人を襲う」38.9%と「家畜・ペットを襲う」34.0%であり、次は、「日本はオオカミにとって狭すぎる」「現在のままで自然は安定している」がほぼ同じで各 20.7%、20.4%であった。他の理由は低くなるが、「生態系に悪い影響を及ぼすから」15.9%、「関心がない」13.9%、「害獣対策は狩猟でよい」11.5%と続いた(図4)。

図4.オオカミ不要の理由(n=1277)

【図4】オオカミ不要の理由(n=1277)



これは、オオカミの生態、行動などの真実の姿が理解されていないからであろう。オオカミ迫害の歴史の中で醸成されたオオカミ嫌悪感が根強いことが感じられる。また、ニホンオオカミが日本の固有種ではなく、ハイイロオオカミと同種であるという最新の科学的情報が理解されていないこともある。ジビエ(野生獣肉料理)普及による狩猟振興の支持者は2.9%に過ぎず、行政による鳴り物入りの宣伝にかかわらず、国民の大多数はジビエに期待していないことがわかる。

【7】カワウソについては、これといった害性が知られていないにもかかわらず、オオカミよりも復活支持率が低く(37.4%)、「わからない」54.9%、「不要」6.3%と否定的で無理解な回答が多数を占めた。これは未知なものに対する恐れとともに、復活運動が存在しないことが影響しているのかもしれない。いずれにせよ、野生哺乳類をはじめとした野生生物とその保護に関する国民の好奇心、関心の低さを示しているのかもしれない。カワウソは河川湖沼といった水界生態系の頂点捕食者である。強力なカワウソ復活運動が必要であり、世論喚起が必要である。

【8】日本オオカミ協会を「知っていた」のは 19.1% で、前回(2012/2013 年)の 16.0% と比べて 3.1 ポイント増となった。これを性別で見ると、男性 24.5% は女性 12.7%に比べて 11.8 ポイント高かった。都市と農山漁村での認知度はほぼ同じであった。

【謝辞】今回アンケートにあたり快く回答していただいた全国各地にお住いの皆様に改めて厚く御礼申し上げます。また、アンケート集めにご協力いただいた一般の皆様、ボランティアはじめ会員、役員の皆様に感謝いたします。

【調査グループ】総括:丸山直樹、集票:井上守、集計:田中清司、PC入力:秋葉哲雄、斉藤恭子、白木登、大槻国彦、辻奈那子、後藤亘、田島美和、手戸博信、澤川隆、林貴士、平田元宏、井上千代子(順不同)、編集:知念さくら



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