声明:森林など自然生態系地域でのメガソーラー建設に反対!

一社)日本オオカミ協会第8回総会(2018年5月19日)

メガソーラー

【声明:森林など自然生態系地域でのメガソーラー建設に反対!】

 私たち一般社団法人日本オオカミ協会は、大面積にわたって森林を伐採して建設されるメガソーラー建設に反対します。森林地帯でのメガソーラーの建設は、森林の価値を大きく損ない、景観破壊(観光価値破壊)、森林植生の消滅、森林土壌の流失、微生物など土壌動物の死滅、昆虫類、両棲類、爬虫類、鳥類、哺乳類などの野生生物の生息環境破壊、そしてオオカミ復活のための環境条件の破壊など、広範囲の破壊をもたらします。大面積の裸地を作り出すメガソーラーは、植生による気温調節機能を森林から奪う結果、地域の気温の極端な上昇と低温化をもたらします。また、流出土砂は河川を埋めたり、浸食したりして、沿岸に流れ出し、埋土や水質汚濁により沿岸生態系に甚大な破壊的影響を及ぼします。メガソーラーは現在全国で100か所以上の建設が進められようとしています。その規模は、一か所で数十~数百ヘクタールに及びます。森林生態系は、歴史的に、農林業、薪炭林利用、観光開発など様々な開発によって破壊され続けてきました。メガソーラー建設による、これ以上の森林破壊は最早認められません。日本のかけがえのない国土を守るためにも、オオカミ復活のためにも、メガソーラーの森林地帯での建設は認めるべきではなく、その規制に関する法的環境の整備を緊急に進めるべきです。

[背景:メガソーラーによる環境破壊]

 核廃棄物の無害化技術が存在しないかぎり、原発などの原子力エネルギーは利用すべきではありません。だからといって、従来の地球温暖化により、化石エネルギーに戻ることはできません。そこで、脱原発、脱化石燃料を目指して、再生エネルギーが注目され、風力、太陽光、地熱、バイオマスといろいろと模索されています。だが、再生エネルギーならどれでもよいというわけではありません。
 ひところソーラーを抑えて花形と目された風力(風車)発電は、バードストライクや景観破壊、超低周波音などの騒音障害などの環境問題によって、立地の選択が難しく、一定規模を超える風車は、都市や村落をはじめとした人の居住地域での建設は適当でないことがわかっています。
 代わって太陽光発電が注目され、現在、急速に普及しつつあります。だが、これも環境破壊が問題になっています。家庭等での自家消費を主目的とする小規模な分散型設備とは異なり、メガソーラー(1千キロワット以上の出力がある大規模な太陽光発電所)など、その面積規模が大きければ大きいほど、環境への負荷は大きくなり深刻となります。メガソーラーによる環境破壊とは、植生の消滅、景観破壊、気温上昇(駐車場並み)、裸地化による不栄養土壌や土砂の流出、微生物など土壌動物の死滅、野生生物のハビタット(生息環境)破壊、昆虫類、両棲類、爬虫類、鳥類、哺乳類などの野生生物の絶滅・減少などです。このように森林の働きを害し、その資源的価値を大きく損ないます。さらに、これからの問題としては、有害物質を含む発電パネルなど廃棄物処理による環境汚染が心配されています。メガソーラーのこうした環境問題の中でも、森林の大面積伐採はオオカミの復活にとっても問題です。これは、オオカミの生存に必要なハビタットを破壊し、自然生態系破壊や生物多様性低下をもたらすことが避けられないからです。これは、増えすぎシカによる生態系破壊と同様かそれ以上です。植生破壊はシカの生息密度と比例的ですが、シカがいなければよいというわけではありません。シカは、捕食者であるオオカミとともに食物連鎖の担い手として生態系の構成者として不可欠な存在であるからです。しかも、適正な低い生息密度であれば生物多様性を高め、その維持に貢献します。しかし、メガソーラーは生態系にとってはあくまで異物に過ぎません。メガソーラーの存在は生態系に対しても生物多様性に対しても貢献は期待できないのです。こうしたことから、メガソーラー建設は、森林地帯をはじめとした自然地域では認められません。
 これらの様々な問題から、メガソーラー発電所の建設は各地で厳しい反対運動を引き起こしています。こうして、現在、野放し状態にあるメガソーラーの建設を規制する法的整備が求められています。基本的には、国土保全の観点から、メガソーラーは山林原野など山地での建設は禁止されるべきであると考えられます。

[メガソーラーではなく、水力発電を見直す]

 風力、メガソーラーだけでなく、自然再生エネルギー源として水力を再評価すべきだという指摘があります(竹村公太郎著「水力発電が日本を救う」東洋経済2016)。日本には幸いなことに全国にダムが建設されています。戦後電源開発の花形だったダムも、水没、局地的地震発生などの公害が危惧され、先祖伝来の耕作地を失い、住み慣れた居住地を追われた住民による地域ぐるみの激しい反対運動がいつまでも記憶に残っています。だが、一旦出来上がったダムは壊れることもなく、今でも各地で健在です。それらは、発電能力を含めて、半永久的に利用可能であると考えられています。さらに水力発電量アップができるのはもちろん歓迎なわけですが、これは可能だと考えられています。すなわち、新ダムを造る必要はなく、既存ダムの貯水量を上げる嵩上げ、そして多目的ダムの利水強化に向けての運用方法の変更、砂防ダムや多目的ダムへの発電機設置などが有望だと言われています。さらには、農業用水や汚水処理場の排水路への小型発電機設置による中小規模発電も考えられています。私たちの先人が、公益への貢献のため、先祖伝来の家と田畑を犠牲にし、自然環境も犠牲にして建設に協力して現代に引き継がれた膨大なエネルギー遺産を、現代人が無駄にすることは許されないのではないか、と竹村氏は指摘しておいでです。
 これに加えて、海洋の潮汐や海流を利用する潮力発電も水力利用の一つです。潮の満ち干の持っているエネルギーに着目するならば、全国各地の湾や入り江もダム機能を持っているわけです。瀬戸内海はその最大のものでしょう。日本列島周辺には黒潮や親潮など巨大なエネルギーを持った海流が勢いよく流れています。これらも利用可能になれば、さらに巨大な電力が入手可能と考えられるのです。

[水力発電の持続的利用とオオカミ復活]

 水力エネルギーの利用にとって、ダム湖や水路の堆砂が問題となります。ダムや水路への堆砂が進めば、その分だけ貯水量が減ってしまいます。土砂流出は、通常、天然林と比べて荒廃人工林で大きいことが知られています。現在、全国の森林面積に占める人工林の割合は41%、しかも手入れがされていない放置林が多く、人工林は荒廃が進むばかりです。そこで、人工林の手入れや収穫期にある人工林伐採の促進、人工林の針広混交林化、あるいは天然林化が求められていますが、伐採や改植すれば、シカの餌植物の増加をもたらし、その分、シカの食害を被り、林地の裸地化はさらに進みます。こうした、最近のシカの増え過ぎは、里山から奥山に及び、全国的に森林の裸地化が進んでいます。これは、もちろん、土砂流出量を増加させ、水力エネルギー源に悪い影響をもたらすことは説明を要しません。
 現状ではこのようなシカの増え過ぎをコントロールするためには狩猟者が欠かせないのですが、高齢化と狩猟離れによって狩猟者の下げ止まりは見えず、必要なハンターの確保は見通しが立っていません。これに加えて、予測されている長期的な人口減少で、さらに狩猟者のリクルートは難しくなるので、いつまでも狩猟に頼り続けることはできません。実際のところ、今でも狩猟者によるシカのコントロールには成果が出ていないのです。やはり、自然調節を重視すべきなのです。自然調節の有力な担い手は、オオカミしかありません。明治時代に絶滅したオオカミの復活はどうしても欠かせません。日本の森の守り手はオオカミです。脱化石エネルギー、そして脱原発の切り札の一つとして水力の活用にとっても森の守り手であるオオカミの再導入は欠かせません。私たちは森なしでは生きられないのです。私たちの生存に欠かせないエネルギーを得るためには、これ以上森を傷つけてはいけないのです。   
                                   (以上)

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