イノシシ問題 « 一般社団法人日本オオカミ協会

‘イノシシ問題’ カテゴリーのアーカイブ

イノシシとの戦いは房総でも:高まるオオカミへの期待!

2017 年 3 月 17 日 金曜日


房総半島の中央部に位置する千葉県市原市(368km2)には、平成12年度からイノシシ被害対策のために市の補助金で設置された延長259kmの侵入防護柵が張りめぐらされています(個人で設置した柵も多くありますが、延長はわかりません)。近年は、個々の田畑を囲う電気柵から、田畑に隣接した森との境に地域ぐるみで設置し、地域全体を守るワイヤーメッシュの広域防護柵に変わりつつあります。

我が物顔に田んぼを荒らすイノシシ


国が推奨して進めているイノシシに強い集落作りですが、現在の個体数を減らすことができずに、このようにフェンスを設置しても、おまじないの様なものでしかないようで、効果はもう一つです。

静かな村に今年もイノシシ被害

千葉県では、シカ、キョン、サル、アライグマ、ハクビシンなども増えていますが、田畑を荒らすイノシシ対策で手一杯です。明治時代以前オオカミは里山にも住んでいましたが、人を襲うことはありませんでした。現在、保護が始まりオオカミの数が増えているヨーロッパや北米大陸では、オオカミによる人身事故はありません。オオカミ問題を所管する環境省でもオオカミが人を襲わないことは承知しているのではないかと思われます。しかし、「オオカミは怖い」ので「自然は人が管理する」としか言いません。オオカミは人を恐れて人目を避けて行動していることを知った村の人たちは、「人の捕獲ではどうにもならない」「早くオオカミを連れてきてくれ」と言います。本当の敵は誰なのだろう?

千葉県支部長 井上 守


イノシシとの戦い

写真の説明(ブログ「うちだの風」から)
集落ぐるみで勉強会を開き、放置水田をなくしたり、わなを設置する等イノシシに負けない集落づくりに努めてきた村の人達は、稲刈りを終えて、
①10日間汗を流して、イノシシ対策で国が推奨するワイヤーメッシュ防護柵4500m設置。
②設置翌日、一か所を押し倒され、半月も経たずに、再度押し倒される。
③支柱を増やしたり、突っ張り棒で補強。
④フェンスの設置で、田んぼに大きな被害は起きていないが、さらに1週間後、フェンスのないところが大変!イノシシが道路の土手を掘り返し、軽トラが通れない!

コメントは受け付けていません。

公開質問提出のお知らせ

2015 年 12 月 18 日 金曜日

日本オオカミ協会は、12月13日付け日本経済新聞電子版解説記事「温暖化が招いたシカ、イノシシ大繁盛 編集委員 志田富雄」に対して、12月16日下記のとおり質問を出しましたのでお知らせします。回答は受け取り次第皆様にお知らせいたします。

日本経済新聞編集部御中

貴紙電子版12月13日解説記事「温暖化が招いたシカ、イノシシ大繁殖  編集委員 志田富雄」下記引用についてご質問致します。
なお、本質問は、当協会ホームページに公開の上、お答えはいただき次第公開致しますのでよろしくお願い致します。回答期限は、勝手ながら12月31日とさせていただきます。

増えすぎたシカやイノシシの数を適正な数まで減らし、農業分野などの被害を防ぐ対策も容易ではありません。中には「海外からオオカミを持ち込み、日本の山に放ってはどうか」という意見もあります。シカなどが増えた要因のひとつに、天敵であるオオカミの絶滅が挙げられるからです。
ただ、北海道などの農家にはかつてオオカミによる被害に悩まされ続けた記憶があります。沖縄県や鹿児島県の奄美大島では毒蛇のハブを減らすために持ち込んだマングースが繁殖して鶏などの家畜を襲い、天然記念物のヤンバルクイナやアマミノクロウサギの数を減らしました。こうした事実を踏まえれば外来種である「オオカミ導入」は賢明な策とは言えないでしょう。(以上引用)

<ご質問>
【1】「北海道などの農家にはかつてオオカミによる被害に悩まされ続けた記憶があります。」について、具体的に教えて下さい。
【2】かつて生息していた種と同一である場合は「再導入」といいますが、ご存知でしょうか。お答えください。
【3】「オオカミ導入」といわれている理由を教えて下さい。
【4】かつて日本にいたオオカミと海外のオオカミが同一種であることはご存知でしょうか。お答えください。
【5】元来生態系に存在しない外来動物導入を、あえて再導入との比較事例として取り上げる理由は何ですか。教えて下さい。
【6】日本及び海外における絶滅種再導入の成功例について例示して下さい。
【7】オオカミ再導入とマングース導入の共通点と異なる点について教えて下さい。

一般社団法人日本オオカミ協会
会長 丸山 直樹

コメントは受け付けていません。

房総半島の山にオオカミの復活を

2015 年 8 月 17 日 月曜日


丘陵部に入り込んだ低い平地を谷(やつ)と呼ぶが、そこでは背後の森から湧き出る豊かな水と、さわやかな風がおいしいコメを育ててくれる。そのような房総半島丘陵部にある千葉県長南町で稲作を営む農家の方から、「私の田をぜひ見に来てほしい」との電話があった。一部の田は黄金色に輝き、モミのにおいが溢れ、そろそろ収穫の時期である。

8月5日に案内していただいたのは不整形の棚田で、肥料なしに1反当たり10俵はかたい美田だという。一番奥の小さな畑に湧き出した森からの冷たい清水が、水路に流れ出て田んぼを満たしている。谷の棚田は、森からの風が心地よい静かな憩いの場所だった。

イノシシに因って倒された稲

手前はイノシシに因って倒された稲。奥は昨年イノシシに明け渡した田んぼ



しかし、ここでコメを作り続けたいという農家に案内してもらった田に育った稲は、大半が押し倒されていた。写真には2段の田が見えるが、農家の話では、「谷(やつ)の一番奥の田には、7、8年前からイノシシが入り始め、毎年被害がひどくなり、昨年耕作を放棄、イノシシに明け渡した。今年は、その下の田に、複数のイノシシに何度も入られ、侵入場所を見つけてそこをふさいだり、柵を補強したりしたが、どこからでも柵を破壊し乗り越えたり、穴をあけてくぐり抜けたりして、泥浴びをするなどしたい放題で翻弄されてきた。とうとう結実を始めた稲穂をかじりとり、大半の稲を押し倒してしまった。この様に倒されると、コンバインでの収穫は不可能である。今年は、ここでの収穫は諦めなければいけないかもしれない。イノシシは増えるばかりで、しっかり柵を設置しても来年はコメを作り続けることは不可能かもしれない。

上の田のもう1段上に(写っていないが写真の左側)小さな畑があり、最近まで果樹や野菜を作っていたが、今は柵を作るための資材を置いている。野菜は何を作っても収穫直前にイノシシが荒らし放題である。昼間追い払っても夜間に出てきて、田の畔を壊し、水路を埋め、畑や斜面に大きな穴をあける。しかし、家から離れた場所にあるため夜に見回りすることはできない。冷たくおいしかった湧水は今もあるが、イノシシが汚物を残すので飲むことはできない。近くには、町がイノシシ害対策として数年前から箱ワナを1台置いている。最初は大きな大人のイノシシとウリボウが6、7頭かかったが、次の年は4頭に減った。その後かかるのは子供のイノシシばかりで、学習能力の高い大人のイノシシはもうかからないかもしれない」

箱ワナ

イノシシ害対策として数年前から設置してある「箱ワナ」



千葉県ではイノシシの捕獲は1970~80年前半にはなく、ほぼ絶滅状態にあったが、わずかに残った個体が激増したといわれる。このため、イノシシやシカなどの猟をするハンターが非常に少ない。「効果の高い電気柵を設置しないのですか?」と尋ねると、「小さい棚田は町の設置補助の優先度が低く、設置しても盗難の心配があるので、自力で柵を設置している」のだという。今年栽培を諦めた田んぼは、作付をしていないために昨年生じた被害額が今年はゼロになる。豊かな農地が消えて、やる気がある農家が疲弊しているにもかかわらず、千葉県のイノシシ被害額は減少している。栽培が放棄された田畑からは、その後被害額が計上されないために実態とは異なるのである。実態を正しく把握し必要な施策と情報を示し、獣害対策は進められなければならない。

野生動物と人との住み分けを行うために里山の再生が重要だと言われるが、増えたイノシシを山に押し戻す鉄砲を持ったハンターがいないので、どんなに整備をしても田畑の作物の味を覚え、それを食べたくて山から出てくるイノシシにとって里山は単なる通り道でしかない。ワナがあればそれを避けてやってくる。捕食者もハンターもいない山は、野生動物にとっては安全であり、増え続け過密になるばかりである。里山の環境整備よりも森林生態系の中に、食べるものと食べられるものとの関係が取り戻されなければならない。また、現在農家が管理している田畑の継続が優先されなければ、里山の再生は意味あるものにはならない。

ハンターはもちろん必要だが、房総半島の山に、絶滅させられたオオカミを復活させなければならない。江戸に近く木材や薪炭を供給する森林が多かった房総半島にもオオカミは普通に生息していた。あまりなじみがないのは、人を避けて行動するオオカミは、人との摩擦が少なかったためである。オオカミは人を襲う危険な動物ではない。また、大きなテリトリーを守って家族で生活するオオカミは増え過ぎることもない。にもかかわらず、“例えばオオカミを山間部に放したと仮定すると、山間部で生活をしている方や、仕事で関わる方、レジャーで山に入る方の安全が脅かされるなどの影響が考えられる(環境省)”など、全くの誤解に基づくたわ言ばかりで、オオカミ復活は一向に検討課題ともならない。

イノシシによる被害の話ばかりだったが、ここではキョンという中国原産の小さなシカも増え始めている。千葉県全体ではこの2年間で2倍に増え、現在4万7千頭が生息すると推定されている。足が非常に細く、くくりワナにはかかりにくい。ハンターによると、身体が小さく夜行性で素早い動きのために銃での捕獲は困難だという。農業被害額はまだ少ないが、1年中繁殖が可能で年間に36%増える小さな怪物である。外来動物のハクビシンも多い。まだ、ここにはシカは出ていないが、シカも確実に生息域を広げている。間もなくシカによる農林業被害、森林生態系の被害と県土の荒廃も始まるが、イノシシ被害対策が重視されまだ手付かずのようである。一刻も早いオオカミの復活による食物連鎖の復元が望まれる。

<追記>
後日、件の農家から、「周辺にいる何匹ものイノシシが捕獲されない限り、経営を続けることはできないので放棄することにした。農業は好きだし担い手としてやる気のあることを行政には強く伝えた。どうしてオオカミの導入をしないのでしょうか」という連絡があった。私には何も答えることはできなかった。(井上守)

コメントは受け付けていません。


鹿の食害を考える ドイツに見るオオカミとの共生

当協会が紹介されています
(動物や自然を守ろう にて)

トカゲ太郎のワンダー・ワールド

Get Adobe Flash player