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オオカミ再導入講演

2019 年 7 月 3 日 水曜日

主催:入間市立図書館金子分館 2019.6.22


オオカミ再導入埼玉講演


昨年の秋、埼玉県比企郡小川町の町立図書館でオオカミフォーラムを実施した。その時に会場に来られた入間市立図書館金子分館の深野和彦分館長より、直後に講演の依頼を受けた。

 

この地区には大場烈夫さんという古いオオカミ協会会員がおいでになる。この支部会員のお勧めがあり、講演会の開催に大きな力となっていただいた。

 

私も経験があるが、この分館は指定管理者制度により運営されており、深野館長は有効な事業を行い高い評価をうることが大切である。小川町オオカミフォーラムで行ったように、埼玉県生態系保護協会の堂本事務局長にも講演に参加して頂き、オオカミ協会埼玉県支部長の私と二人で講師を務めて欲しい、ということになった。

 

オオカミ再導入は「生物多様性保護」の観点から、国際的にも実行に移して行かねばならないテーマとなっている。野生動物頂点捕食者不在の日本では、シカ、サル、イノシシの増加などは、人間の手では抑えきれないことが明白になりつつある。深野図書館長の認識とオオカミ協会埼玉県支部の立場とは馴染みが良かった。

 

又深野さん自身がフットワークよく各種オオカミ関係の展示会などに足を運び、理解を深めて頂いたことも有益であった。私の会社にも新年度の4月になって早々にお訪ね頂いた。オオカミ協会の立場をお話したところ、頂点捕食者オオカミを欠く日本の山林が、どのような現状になっているか等多くの課題もすぐ理解され、十分に事前の擦り合わせが出来た。

 

はじめは「20人くらいしか集められないと思うが、それでもよいか」とのことであった。私の立場は「一人でも多くの人に日本の山林の現状を知っていただくための広報活動が責務なので、何人でも良いですよ」とお答えした。但し当支部からも参加者が増えるような働きはして行きます、とのお約束もした。幸い読売新聞川越支局の丹下記者と知り合いなので、講演会の予告記事を書いて貰えるか打診したところ、すぐ取材して頂き、かなり背景も含め丁寧な記事を掲載して貰った。この時点で定員40名のところ参加申し込み者は32名となったとのメールを受けた。


オオカミ金子分館展示物


金子分館は武蔵七党の金子十郎家定が統治していた地域にある。川越の仙波氏と同じ村山党に属する武将で、川越とは縁も深い。あたりは狭山茶の店が軒を連ね、分館から茶畑が一望できる茶所である。

 

当日支部役員と1時間前に金子分館に行ったところ、深野さんの見通しは、雨でもあり3名くらい減るとおもいます、とのことであった。

 

館内の掲示板に、裏山の加治丘陵から、茶畑の中に現れたシカの写真が張り出されていた。初めてのことで近隣住民としては、実害があったわけではないが心配であろう。展示物は井上千葉支部長から24枚のオオカミ関係の展示用写真を頂き、すべて上手に展示していただいていた。その上、丸山会長の出版物をはじめ、赤ずきんちゃんの絵本も含め、相当数のオオカミ関係出版物が集められ展示されている。さすがに図書館だな、と感心した。私達にはとてもできないことであった。

 

講演は2時の開始である。深野分館長が開会の挨拶をされたが、定員を超えて44名の参加者となり、資料が行き渡らないので、後日送付する旨お詫びをするところからスタートした。

 

「日本山林の現況 ―川の清流を取り戻すには― 「害獣から森を守る!日本オオカミの復活」と題してパワーポイントの解説をして行った。

環境省HPによる三角図を最初に示して、土中の微生物が生活する黒土から、植物、各種動物、頂点捕食者のキツネまで、環境省がいう、「自然界を形づくる生態系の仕組み」についてお話した。

 

続いて付近を流れる入間川源流の土壌崩壊の様子、埼玉県秩父地方の山林林床の荒廃、荒川上流水源林の表土流失による二瀬ダムの堆砂進行などの解説を50分間行った。

 

環境省作成の「増える日本ジカ 迫り来る脅威 二ホンジカの増加と食害 あなたは知っていますか」などのポスター画像には、食い入るように見つめる人が多かった。最後にオオカミ再導入へ、杉並高校の高校生による提案を説明したところで、パワーポイントによる解説を終えた。

 

補足として、ファンの多い日本オオカミについては、世界のオオカミとDNAは同一であること、ただ小型であることをお話しして講演を終了した。

 

その後10分の休憩をとり、埼玉県生態系保護協会堂本事務局長が50分講演した。堂本さんは、生物多様性保護、生態系保護の視点から、オオカミ導入の議論を避けてはならない、大いに議論を盛り上げるべきである、との立場でお話をされた。その点会場の参加者も納得がいった様子であった。野生動物、鳥、虫、植物などの食物連鎖等話題は広範囲にわたり、皆さんも熱心に聴講した。

 

講演終了後の質疑応答は数人の方から頂いた。何時も必ずでる「オオカミと山で出会ったときは、どうするのか」との質問はなかった。会場に来られた人は、増大するシカの恐怖、を知り抜いているようで、昨年とはかなり違った様相になっていることを強く感じた。

 

翌日金子分館長から、図書館が行ったこの事業へのアンケート結果が送信されてきた。

それによると、この催しを知ったのは、金子図書館カウンターによる11人、分館だより6人、広報入間4人、知人から4人、ポスターチラシ2人、読売新聞3人、オオカミ協会HP3人、オレンジカフェその他6人となっている。44名中39人が回答している。回答率89%に上る。

 

講演会の内容が良かったとする人は81%、反対の1人は日本オオカミの解説ではなかった、というものであった。日本オオカミへの郷愁の思いが読み取れる。

 

金子地区という平安時代からの古い歴史を持ち、加治丘陵を身近に生活する方々の、社会的な意識の高さと、狭山茶を愛する住民の連帯感のようなものを強く感じた。多くの方々に最後まで熱心に参加して頂き、感謝いたします。

 

2019.6.26
日本オオカミ埼玉県支部長
岩堀弘明

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土佐林業クラブ6月例会で講演「オオカミは山を守る」

2018 年 8 月 14 日 火曜日

「林業者は興味・関心、林野庁は相変わらず無視・瞑目」

高知県の林業経営者組織である土佐林業クラブから「うちの例会で、オオカミの話をしてくれませんか。」という依頼がありました。

6月例会のテーマは「鹿の食害の状況とその対策について」。
林野庁の森林保護対策室長、林業会社の現場担当者、そして私と、3名がそれぞれ1時間話して、その後参加者とディスカッションするという形でした。

林野庁の方の話は相変わらず、「シカが増えすぎている。ともかく捕獲と殺処分のペースを上げていこう。どこそこではこんな方法で効果を上げている。こんな方法も有る、こんな方法も有る。」で終始。
林業会社の現場担当者の方は、「社員がワナ猟の資格を取って会社の林地内にワナを仕掛け、会社の仕事として毎週1回は見回り、掛かった獲物は撲殺するという苦労話。ワナの掛け方や掛ける場所などについての工夫話。そして色々な樹の種類を植えてみて、シカ被害を受けにくい樹木の選定やテスト植林をしている。カラ松などが需要もあるし有望。」等の話。
私はまず国のシカ対策が、「①人手によるシカの駆除 ②ジビエの盛り上げ ③フェンスやネット張り」に終始していること。そしてその鳥獣被害対策費が各省庁合わせて2000億円近くに上っていることを上げ、この3つの対策で効果は上がるのか、湯水のごとくつぎ込まれる税金は生かされているのか、という問いかけをしました。
そして自然を生かした一番安上がりの対策、シカ減らしのベース対策は、何と言っても森の頂点動物であるオオカミの再導入による生態系管理をすること。それに加えて狩猟とフェンスも組み合わせていく対策がベストではないかという提案をしました。

そして現在の対策に窮した国が第④の対策を取らないようアピールもしました。それは、例の硝酸塩を使ったシカの毒殺計画についてです。『これは「狩猟とジビエで一石二鳥」というこれまでの楽観的対策の完全なギブアップ宣言であること。硝酸塩を山々にばら撒けば、それを食べるのはシカばかりではなく天然記念物のカモシカや他の生きものも必ず食べる。何より源流域の沢水を汚染し、生態系に大きな悪影響を及ぼしていくことになる。そして硝酸塩で弱ったシカがまず撃たれたり、ワナにかかったりしてジビエに供される。硝酸塩は決してシカだけに“効く”わけではなく、欧米では硝酸値の高いほうれん草を離乳食に与えた赤ちゃんが死亡したり、発ガン性も指摘され、地下水の汚染も問題になっていること。何より環境省自身が硝酸塩を水質汚濁に係わる環境基準項目の1つに挙げている。その環境省が水源となる山々にその硝酸塩をばら撒くと言うのは天に唾する行為。シカの毒殺計画は環境省が絶対にやってはいけない禁じ手だ。』と。

≪その後のディスカッションより。≫

・林業経営者の方「林野庁の方にお伺いしたい。今オオカミの再導入によってシカも減っていくという話をしてもらったが、あなたは個人的にどう思いますか?」
・林野庁 森林保護対策室長「イエローストーンでのオオカミ再導入でシカも減り自然全体が蘇ったという例はアメリカの広大な自然公園でのことで、日本にはなじまない。個人的にも反対です。」
・松林「私はイエローストーンの話もしましたが、オオカミが復活して20数年経つドイツの話もしたはずです。ドイツは森林率がわずか30%ほどで、人の居住区とオオカミのテリトリーが重なっている地域も多々あるが、今のところ人とのトラブルは1件も生じておらず、生活圏レベルでも人とオオカミが共存共生しているという実例を。」
・林野庁 森林保護対策室長「・・・・・・・・。」ノーコメント。

・林業経営者の方「山に苗木を植える作業は、以前は50年後の姿を思い浮かべながら楽しくやっていたが、今はまたシカにやられるだろうなぁと思うと、植える喜びが失せる。木材価格が安いということ以上に、精神的にまいっている。

・林業経営者の方「うちでも社員全員にワナ猟の免許を会社負担で取らせたが、誰も猟に出ようとしない。役所から出る駆除料は自分でもらって良いと言っているが、掛かったシカのとどめを刺す時、最後まで見つめているシカの眼が嫌らしい。」

その他の意見としては、「オオカミをテスト導入するとなったらどこを考えているか。」「北海道の動物園で初めてオオカミを見たが、あのでかいのを入れてくるのか。」「四国に入れるとしたら、何頭くらいどこから入れてくるのか。」「オオカミの生態としてはどのような生きものか。」「オオカミを再導入したら確実にシカは減るのか。」「1頭が食べる量からして、シカが減っていくには相当数のオオカミを入れねばならないのでは。」「獲物を追って人里まで出没してくるのではないか。」「今度はオオカミが増えすぎたらどうするのか。」「明治以降のオオカミ駆除は単に西洋文明の影響というより、実際に色々なトラブルが有ったからではないのか。ちゃんと調べてからの方が良い。もし1人でもオオカミに襲われたりしたら、ほら見たことかと言われるので。」「再導入するとなった場合、ワシントン条約はクリア出来るのか。」等々。

ディスカッションでは、オオカミについて費やす時間が一番多く、長かったように思います。そしてオオカミについては「賛・否」というより、「興味」としての意見や質問が多くありました。それだけ、今の“狩猟とジビエとネット張り”という対策だけではもう限界だということを、林業経営者の方々は身をもって知っておられ、目先の対応も必要だが何か根本的な解決策はないものかという気持ちが強いのだろうと思いました。中でも、会場からの意見で僕が大変気になった意見がありました。それは「シカの食害で林床がものすごく貧相になっている。林床木が、シカが食わないアセビ等しか残っていない。国はもっと山の深刻さを考えて抜本的対策を講じて欲しい。」という意見です。

≪昨年、鳥取県の智頭トンネル出口で起きたこと。≫

“シカの食害で林床が貧相になっている”という意見を聞いて、思い出したニュースがあります。昨年5月~6月の大雨で、国道53号線智頭トンネル出口付近の山林から土砂が流出し、通行規制を余儀なくされ、今後の危険性を考えると復旧は長引くというニュースです。大雨と言えど、時間雨量39~53ミリですから、そう大した大雨でもありません。
新聞記事はその原因について次のように伝えています。「県は6月、土砂流出の原因を探るため、ドローンやヘリコプターで上空から山林を撮影。山頂部の木が枯れ、山肌が露出している箇所が複数、確認された。職員が登って調べたところ、立ち枯れした木の幹に、鹿が樹皮を食べたとみられる跡が残り、周囲に鹿のふんが落ちていた。県は、鹿の食害による山林の荒廃が土砂流出を引き起こした可能性もあるとみて、詳しい原因を調べる。猟友会による駆除も検討するという。周辺の山林は、土砂災害防止などのため、森林法に基づく「保安林」に指定されているが、約10年前から地元住民らが「山が荒れてきた」と指摘。県は2009年度以降、砂防ダムの造成や土の流出を防ぐ金網の設置などを進めたが、今回の大雨による土砂の流れを止めることは出来なかった。県治山砂防課は「想定外だった。十分な再発防止策を講じたいと。」

<朝日新聞記事:国道53号智頭トンネル付近 繰り返す被>

≪そして今年、広島県呉市近辺で起きたこと。≫

大変な豪雨災害が起きてしまいました。“蛇抜け”と呼ばれる山林からの土砂流出が、大小さまざまに幾筋も流れ落ち、家屋や人を飲み込んでしまいました。
この“蛇抜け”の原因についてはこれから究明されていくでしょうが、僕には昨年起きた智頭トンネル出口で起きたこととダブって見えます。
2014年に環境省が発表したシカの生息域と生息密度を表す分布図を見ると、中国地方では岡山県東部と広島県が突出して多く、特に災害が大きかった呉市付近の背後の山々の表示は赤。赤は生息数が1平方キロ当たり50頭以上という表示です。10頭を超えると植生への影響が目立ち始め、2~30頭になると色々な草木が消滅し、50頭を超えると急速に森林が消滅に向い、シカが嫌いで食べない植物やシカの採食に強い抵抗力のある植物で構成される植生が出現するそうです。(適正規模は2~3頭/平方キロ)
もともと崩れ易い花崗岩の山地が、シカの食害によってその林床が貧相になり、保水力を失い、あちこちで山崩れが発生したのではないでしょうか?

≪オオカミ不在の山々が、キバをむき始めた。≫

“オオカミは怖い”とよく言われますが、“オオカミが居ない山はもっと怖い”と言う状況に、日本はなりつつあるように思われます。オオカミ不在の山々は、増え続けるシカの食害で豊かな林床を失い、山崩れというキバをむき始めました。これまではシカに“農作物を食べられた”、“植林木の皮をはがれた、枯れた”等の直接的被害でしたが、これからはゲリラ豪雨の頻発とも相まって、シカの食害で林床が貧相になった山々が“崩壊”していくという間接的被害が増えていくと思われます。シカ対策に費やされる直接的被害対策費(鳥獣対策費は各省庁合わせて2000億円)に加え、間接的被害に対する膨大な出費が余儀なくされ、何よりも人の生命や生活が奪われていく可能性がより高まっていくだろうことが辛いことです。 明治以降、懸賞金付き「オオカミ駆除令」によって絶滅に追いやられた日本のオオカミ。生態系の頂点動物であるオオカミを、今一度日本の山々に復活させる必要性をひしひしと感じます。カムバック、ウルフ!

松林直行(JWA四国支部長)

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声明:森林など自然生態系地域でのメガソーラー建設に反対!

2018 年 6 月 1 日 金曜日

一社)日本オオカミ協会第8回総会(2018年5月19日)

メガソーラー

【声明:森林など自然生態系地域でのメガソーラー建設に反対!】

 私たち一般社団法人日本オオカミ協会は、大面積にわたって森林を伐採して建設されるメガソーラー建設に反対します。森林地帯でのメガソーラーの建設は、森林の価値を大きく損ない、景観破壊(観光価値破壊)、森林植生の消滅、森林土壌の流失、微生物など土壌動物の死滅、昆虫類、両棲類、爬虫類、鳥類、哺乳類などの野生生物の生息環境破壊、そしてオオカミ復活のための環境条件の破壊など、広範囲の破壊をもたらします。大面積の裸地を作り出すメガソーラーは、植生による気温調節機能を森林から奪う結果、地域の気温の極端な上昇と低温化をもたらします。また、流出土砂は河川を埋めたり、浸食したりして、沿岸に流れ出し、埋土や水質汚濁により沿岸生態系に甚大な破壊的影響を及ぼします。メガソーラーは現在全国で100か所以上の建設が進められようとしています。その規模は、一か所で数十~数百ヘクタールに及びます。森林生態系は、歴史的に、農林業、薪炭林利用、観光開発など様々な開発によって破壊され続けてきました。メガソーラー建設による、これ以上の森林破壊は最早認められません。日本のかけがえのない国土を守るためにも、オオカミ復活のためにも、メガソーラーの森林地帯での建設は認めるべきではなく、その規制に関する法的環境の整備を緊急に進めるべきです。

[背景:メガソーラーによる環境破壊]

 核廃棄物の無害化技術が存在しないかぎり、原発などの原子力エネルギーは利用すべきではありません。だからといって、従来の地球温暖化により、化石エネルギーに戻ることはできません。そこで、脱原発、脱化石燃料を目指して、再生エネルギーが注目され、風力、太陽光、地熱、バイオマスといろいろと模索されています。だが、再生エネルギーならどれでもよいというわけではありません。
 ひところソーラーを抑えて花形と目された風力(風車)発電は、バードストライクや景観破壊、超低周波音などの騒音障害などの環境問題によって、立地の選択が難しく、一定規模を超える風車は、都市や村落をはじめとした人の居住地域での建設は適当でないことがわかっています。
 代わって太陽光発電が注目され、現在、急速に普及しつつあります。だが、これも環境破壊が問題になっています。家庭等での自家消費を主目的とする小規模な分散型設備とは異なり、メガソーラー(1千キロワット以上の出力がある大規模な太陽光発電所)など、その面積規模が大きければ大きいほど、環境への負荷は大きくなり深刻となります。メガソーラーによる環境破壊とは、植生の消滅、景観破壊、気温上昇(駐車場並み)、裸地化による不栄養土壌や土砂の流出、微生物など土壌動物の死滅、野生生物のハビタット(生息環境)破壊、昆虫類、両棲類、爬虫類、鳥類、哺乳類などの野生生物の絶滅・減少などです。このように森林の働きを害し、その資源的価値を大きく損ないます。さらに、これからの問題としては、有害物質を含む発電パネルなど廃棄物処理による環境汚染が心配されています。メガソーラーのこうした環境問題の中でも、森林の大面積伐採はオオカミの復活にとっても問題です。これは、オオカミの生存に必要なハビタットを破壊し、自然生態系破壊や生物多様性低下をもたらすことが避けられないからです。これは、増えすぎシカによる生態系破壊と同様かそれ以上です。植生破壊はシカの生息密度と比例的ですが、シカがいなければよいというわけではありません。シカは、捕食者であるオオカミとともに食物連鎖の担い手として生態系の構成者として不可欠な存在であるからです。しかも、適正な低い生息密度であれば生物多様性を高め、その維持に貢献します。しかし、メガソーラーは生態系にとってはあくまで異物に過ぎません。メガソーラーの存在は生態系に対しても生物多様性に対しても貢献は期待できないのです。こうしたことから、メガソーラー建設は、森林地帯をはじめとした自然地域では認められません。
 これらの様々な問題から、メガソーラー発電所の建設は各地で厳しい反対運動を引き起こしています。こうして、現在、野放し状態にあるメガソーラーの建設を規制する法的整備が求められています。基本的には、国土保全の観点から、メガソーラーは山林原野など山地での建設は禁止されるべきであると考えられます。

[メガソーラーではなく、水力発電を見直す]

 風力、メガソーラーだけでなく、自然再生エネルギー源として水力を再評価すべきだという指摘があります(竹村公太郎著「水力発電が日本を救う」東洋経済2016)。日本には幸いなことに全国にダムが建設されています。戦後電源開発の花形だったダムも、水没、局地的地震発生などの公害が危惧され、先祖伝来の耕作地を失い、住み慣れた居住地を追われた住民による地域ぐるみの激しい反対運動がいつまでも記憶に残っています。だが、一旦出来上がったダムは壊れることもなく、今でも各地で健在です。それらは、発電能力を含めて、半永久的に利用可能であると考えられています。さらに水力発電量アップができるのはもちろん歓迎なわけですが、これは可能だと考えられています。すなわち、新ダムを造る必要はなく、既存ダムの貯水量を上げる嵩上げ、そして多目的ダムの利水強化に向けての運用方法の変更、砂防ダムや多目的ダムへの発電機設置などが有望だと言われています。さらには、農業用水や汚水処理場の排水路への小型発電機設置による中小規模発電も考えられています。私たちの先人が、公益への貢献のため、先祖伝来の家と田畑を犠牲にし、自然環境も犠牲にして建設に協力して現代に引き継がれた膨大なエネルギー遺産を、現代人が無駄にすることは許されないのではないか、と竹村氏は指摘しておいでです。
 これに加えて、海洋の潮汐や海流を利用する潮力発電も水力利用の一つです。潮の満ち干の持っているエネルギーに着目するならば、全国各地の湾や入り江もダム機能を持っているわけです。瀬戸内海はその最大のものでしょう。日本列島周辺には黒潮や親潮など巨大なエネルギーを持った海流が勢いよく流れています。これらも利用可能になれば、さらに巨大な電力が入手可能と考えられるのです。

[水力発電の持続的利用とオオカミ復活]

 水力エネルギーの利用にとって、ダム湖や水路の堆砂が問題となります。ダムや水路への堆砂が進めば、その分だけ貯水量が減ってしまいます。土砂流出は、通常、天然林と比べて荒廃人工林で大きいことが知られています。現在、全国の森林面積に占める人工林の割合は41%、しかも手入れがされていない放置林が多く、人工林は荒廃が進むばかりです。そこで、人工林の手入れや収穫期にある人工林伐採の促進、人工林の針広混交林化、あるいは天然林化が求められていますが、伐採や改植すれば、シカの餌植物の増加をもたらし、その分、シカの食害を被り、林地の裸地化はさらに進みます。こうした、最近のシカの増え過ぎは、里山から奥山に及び、全国的に森林の裸地化が進んでいます。これは、もちろん、土砂流出量を増加させ、水力エネルギー源に悪い影響をもたらすことは説明を要しません。
 現状ではこのようなシカの増え過ぎをコントロールするためには狩猟者が欠かせないのですが、高齢化と狩猟離れによって狩猟者の下げ止まりは見えず、必要なハンターの確保は見通しが立っていません。これに加えて、予測されている長期的な人口減少で、さらに狩猟者のリクルートは難しくなるので、いつまでも狩猟に頼り続けることはできません。実際のところ、今でも狩猟者によるシカのコントロールには成果が出ていないのです。やはり、自然調節を重視すべきなのです。自然調節の有力な担い手は、オオカミしかありません。明治時代に絶滅したオオカミの復活はどうしても欠かせません。日本の森の守り手はオオカミです。脱化石エネルギー、そして脱原発の切り札の一つとして水力の活用にとっても森の守り手であるオオカミの再導入は欠かせません。私たちは森なしでは生きられないのです。私たちの生存に欠かせないエネルギーを得るためには、これ以上森を傷つけてはいけないのです。   
                                   (以上)

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鹿の食害を考える ドイツに見るオオカミとの共生

当協会が紹介されています
(動物や自然を守ろう にて)

トカゲ太郎のワンダー・ワールド

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