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オオカミ、エルクジカとバイソンの関係:アメリカ イエローストーン国立公園で観察された「不安な生態系」

2012 年 9 月 19 日 水曜日

http://www.esf.edu/efb/faculty/documents/laundreetal2001elkandbison.pdf
Laundre,J.W., L.Hernandez, & K.B.Altendorf (2001) Can.J.Zool. 79:1401-1409.

イエローストーン国立公園のエルクジカやワピチ(Cervus elaphus)とバイソン(Bison bison)は、今まで50年間ものあいだオオカミ(Canis lupus)のいない環境で生きてきた。
1994-1995年の冬に、オオカミはイエローストーン国立公園の地域に再導入された。
捕食理論からすると、エルクジカとバイソンが、このオオカミ導入の脅威に対して彼らの警戒レベルを上げるだろうと予測された。我々はこの予測を検証するために、公園のまだ“オオカミ非生息地”とオオカミ生息地でエルクジカとバイソンの警戒レベルを比較した。

雄のエルクジカとバイソンはオオカミの再導入に反応しないように見えたが、研究により、低レベルでの警戒は維持されていることが判明した(約12%~7%の時間は警戒に費やされた)。雌のエルクジカとバイソンは、オオカミ生息地では、非生息地と比較して、かなり高い警戒レベルを示した。最高警戒レベル(47.5%±4.1%SE)が維持される傾向は、オオカミ存在地区で、2年目のメスエルクが子ジカと一緒にいる時には、調査の間3年連続で観察された。

オオカミの分布がオオカミ非生息地にも拡大したので、これらの地区のメスエルク、および子ジカと一緒のメスエルクの警戒レベルは、それまでの20.1±3.5%SEと11.5±0.9%SEから43.0±5.9%SEと30.5±2.8%SE と上昇したことが、5年目までの詳細な研究から判明した。

我々は、こうした社会的グループの違いの間で観察される理由を考察している。
オオカミ生息へのこのような行動学的反応は、エルクジカとバイソンの生態を考える上で、オオカミによる直接的な捕食より大きな影響があるのではないかと考えている。

(抄訳:佐々木まり子 2012,9 19)

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ポルトガルのオオカミ保護団体「ロボ」が援助を求めています!

2012 年 8 月 16 日 木曜日

ポルトガルのオオカミ保護団体「ロボ」から、日本オオカミ協会にメールをいただきました。ポルトガルでのオオカの状況、その内容をここにご紹介いたします。

 

《はじめに=ポルトガルのオオカミの背景》

ポルトガルにはオオカミが約300頭生息しているそうです。しかし、シカ類はポルトガル人に「捕食」されて殆ど絶滅状態なので、オオカミはかわりに羊を捕食して生き延びてきました。EUの加盟国は、だからといってオオカミの駆除を認めていないどころか、オオカミを保護するために、被害者に補償金を支払うことを決めています。これは政府にとっては馬鹿になら ない財政支出です。そこでポルトガルでは、他国からオオカミの野生餌であるアカシカやノロジカなどの再導入も視野に入れているそうです。

グレー:EUベルン条約で承認オオカミ生息国
黒:2005年のオオカミ生息域



《オオカミ保護団体ロボからのメール》

私たちは、JWAのHPでポルトガルでのオオカミ保護キャンペーンを紹介し、我々の現状を広めていただけることに感謝いたします。

ヨーロッパのほとんどの地域と、スペインイベリア半島の一部のオオカミが復活し、その個体数を増やしていることに反して、ポルトガルのオオカミの個体数は増加しておりません。

最後の個体数調査(1996-97年と2002-03年)によると、約300頭のままであり、若干の群れがわずかな地域で安定しているものの、むしろ個体数の不安定性と、増加することへの高い困難をみせております。

リカバリーセンター(IWRC)は、イベリア半島のオオカミのために、1987年に我々グループロボが作ったプロジェクトの一環です。このプロジェクトでは、荒野で自由に生きることができないオオカミのために、我々の保護下で安全な環境を提供する目的で創立されました。

センターの土地は17ヘクタールで、樹木が茂る閑静な谷です。様々な植物に覆われ、バラエティ豊かな景観を持ち、オオカミを保護する上で良い環境を備えております

我々のプロジェクトは、オオカミのリハビリ施設として、福祉的側面からもしっかり機能しています。ここのオオカミたちは、残る生涯をこのセンターIWRCで過ごします。

オオカミの野生の生息環境をできる限り再現し、自然の中で生きられるようにしています。

各ポイントに設けられた観察塔からは、オオカミの独自の生態が広い視野で観察できるようになっています。

センターでは、オオカミのために可能な限り最高の環境を提供するだけでなく、グループロボが野生のもとで行った調査と関連する、オオカミの社会生態に関する科学的研究も行なっております。これらの研究は広報的キャンペーンの一環で、市民にオオカミの本当の性質を知ってもらうためのものです。

このプロジェクトでは、教育的観点から、学校の児童、個別の団体や一般市民のためにオオカミを観察して学ぶツアーも用意しています。

こうした教育活動は、オオカミ迫害の原因となっている古い神話や観念を払拭し、正しい知識を広め、オオカミを保護していくためには大変重要なものです。今日、センターの存続は危機にさらされています。センターの土地の購入以外、他に道がありません。

この保護基金援助キャンペーンが我々の目標に達しない場合、ゼロから他の方法を探さなければなりません。私たちのキャンペーンのリンクです。

http://www.indiegogo.com/IberianWolf

どんなかたちの援助でも歓迎いたします。我々は皆様のご理解とご支持に大変感謝いたします。

よろしくお願いいたします。

グループロボ

イザベル・アンブロシオ

(2012, 8.16 抄訳: 佐々木まり子)

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ノロジカを好んで食べるラウジッツのオオカミ

2012 年 7 月 12 日 木曜日



ノロジカ


http://www.nabu.de/aktionenundprojekte/wolf/hintergrund/14694.html

家畜が捕食されるのは、オオカミの餌の1パーセント未満だった

 

2012年3月、グルリッツのゼンケンバーグ-研究所の科学者は、ドイツに再びオオカミが戻ってから8年間のオオカミの食性を調べた。その結果は、我々に大きな安堵をもたらした。オオカミの食物のうち、家畜の占める割合は1パーセント未満だった。

長い間、オオカミはドイツで根絶されていたが、現在、徐々に元にもどりつつある。しかし、すべてのドイツ国民がこれを歓迎しているわけではない。オオカミは、多くの寓話や伝説の中で肉食獣として悪者扱いされている。オオカミというと、羊を捕食する、ペットを食べる、さらに人々を襲うとさえ思われ、ドイツ国土にこういった捕食者が戻ってくるとなると、個体数によっては、ハンターや農民たちに、過去の好ましからざる思い出を呼び起こさせることとなる。

「オオカミの食性は、ドイツでの復活の最大の論点だった。そこで我々は,10年前からラウジッツに戻ったオオカミの食性を調査することにしたのです。」ゼンケンバーグ研究所動物学部長のヘルマン・アンゾルゲ氏は説明する。「我々は、オオカミがどんなものを食べていたのか、そして、ドイツ東部にオオカミが再び現れてからこの10年間に何が変わったのかを見てきました。」

この目的のために、研究者は3,000以上のオオカミの糞を集め、未消化食物残渣、例えば、体毛、骨、蹄または歯などを調査した。さらに、獲物となった死体の残りも調べ、これらより、オオカミが摂取する栄養の詳細を解析した。餌食の96パーセント以上が野生の有蹄類であった。主なものはノロジカ55.3%で、続いて、アカシカ20.8%、イノシシ17.7%であった。ウサギは少なく、3%であった。

「餌動物に占める家畜の割合は、僅か1%に満たなかった。」

「羊やその他の家畜が、電流を流したフェンスや護衛犬に保護されており、野生の中で十分な獲物が得られる限り、オオカミは危険ではありません」とアンゾルゲ氏は言う。

オオカミが何を食べる動物かというだけでなく、長年にわたって食性がどのように変わってきているか、グルリッツの科学者たちは研究している。オオカミは、食性に関してとても順応性が高い。たとえば、カナダではよく知られていることだが、カナダのオオカミは、秋にはサケを好んで食べるのである。

ラウジッツのオオカミは、ポーランドから来ている。ポーランドでは、ドイツのオオカミと対照的に、主にアカシカを獲って群れを養っている。

ポーランドの森と比較すると、ラウジッツの森はむしろ小規模で点在し、道や草原が入り組んでいる。こういった環境が広範囲に及ぶため、少数の大きなな森に、ノロジカや野生のイノシシが引きこもっていて容易く獲ることができる。ポーランドから来たオオカミから見れば、ノロジカはこのように環境条件の変化とともに出現してきた獲物であり、オオカミの食性を速く変化させることとなった。オオカミは、2世代も経ない間に、ドイツ東部の文化的な景観の新しい環境に適応したのだ。

  (抄訳:佐々木まり子 2012年7月3日)

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鹿の食害を考える ドイツに見るオオカミとの共生

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(動物や自然を守ろう にて)

トカゲ太郎のワンダー・ワールド

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