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ヨーロッパでのオオカミの保護

2013 年 12 月 30 日 月曜日




「オオカミと人類基金」のホームページ記事20131227日から

 

○ オオカミは、保護と保全が必要な社会的に重要な種として、ヨーロッパ連合によって以下の協定に基づき、指定されている。

 

ヨーロッパの野生生物と自然生息地の保全に関する協定(通称「ベルン協定」):オオカミは付属書IIの厳正保護種a strictly protected speciesに指定されている。しかし、同協定署名国のうち、ブルガリア、チェコ共和国、フィンランド、ラトビア、リトアニア、ポーランド、スロバキア、スペイン、トルコは、オオカミの保護を留保している。

 

自然生息地と野生動植物に関する1992年5月21日付けEEC議会指令92/43(通常、ハビタット指令と呼ばれる): オオカミは付属書II(保全目的に地域指定を要すると社会的な関心をもたれている種)と付属書IV(厳正保護を要する種)に収録されている。スペインのDuero川北部、ギリシャの北緯39度線以北、フィンランドのトナカイ放牧地帯は、付属書V(管理の対象とされ得る野生下で利用対象になっている種)に収録されている。この指令は、ヨーロッパ連合の全加盟国に義務付けられている。

 

ベルン協定は、国境をまたいだオオカミ個体群の保護、ならびに各国の個別行動計画の調整を求める、ヨーロッパ全体のオオカミ保護実行計画を採択している。

 

しかし、オオカミは、いくつかの国(スウェーデン/ノルウェー、ドイツ、フランス)では国家レベルで絶滅危惧(endangered)または危急(vulnerable)とされているのだが、ヨーロッパレベルでは個体数、分布域とも増加しつつあるため、世界自然保護連合(the World Conservation Union : IUCN)によって、ヨーロッパでは「危惧(Least Concern)」と分類されている。オオカミの狩猟は、未だに、ヨーロッパ連合に加入していない、ロシア、ベラルーシ、ウクライナ、FYRマケドニア及びアルバニアを含む、ヨーロッパの多くの国で合法とされている。合法的限定狩猟は、フィンランド、ノルウェー、リトアニア、ラトビア、エストニア、ブルガリア、ルーマニア、スロバキア、スペインで行われている。スウェーデンは、最近、オオカミの個体数コントロール、及び、ハンターと家畜所有者の受忍が増していることから、制限つき狩猟を復活させることに関してヨーロッパ委員会による審査を受けている。

 

ヨーロッパ文化では、オオカミには深く根ざした負のイメージが存在する。それは、人へのオオカミの攻撃に関する恐れ、家畜すなわち生計の損失、略奪行為に根ざしたものである。これらの要素は、開発や農耕による適当なハビタットの消失や餌動物の減少と重なって、21世紀のヨーロッパでのオオカミの保護と復活に対する主要な障害となっている。

 

家畜被害

 

ヒツジ、ウシ、ヤギ、ウマ、飼犬に対するオオカミの捕食はオオカミの生息域で発生するが、死亡する家畜のパーセンテージは、病気や事故と比べて低いことが多い(2001年から2003年にかけてのスロバキアでは、ヒツジの捕食に占めるオオカミによる割合は毎年1%以下であった)。農業者個人に関する被害に対して、国家レベルでは、オオカミによる損失は経済的には僅かなものである。オオカミによる家畜の損害に対する感情的な反応、そして、その後のメディアの報道は、オオカミについての世論への影響要因としてはるかに重大である。

 

家畜被害は一年中発生するが、ピークは晩夏と秋である。ヒツジとヤギが、ウシのような大型の家畜よりも、特に夏の牧草地で無防備に採食中にも襲われやすい。家畜や飼養動物の損失はオオカミ復活反対の主要な要素になっていると考えられる。それゆえに、捕食レベルと状況に関する調査は、この論争を処理する上で重要である。

 

家畜に対する襲撃は、防御措置を講じることで減らすことができる。

 

補償金は、オオカミによって家畜が殺されている多くの国で政府によって支払われている。しかし、補償への依存とその悪用を避けるために、襲撃を防ぐための防御措置を家畜所有者が実行することを進めるべきである。また、家畜を殺したのがオオカミによるものか野犬によるものかを判断するのが困難であることが時々起きる。

 

 

オオカミに対する恐れ

 

ヨーロッパでオオカミによる人身害が発生してきたことは疑いないが、20世紀初頭にさかのぼるならば、確証のあるものはほとんどない。今日、ヨーロッパではオオカミによる人へのリスクはきわめて小さいと考えられているが、大衆の意識には否定的な考えが残っている。調査によれば、オオカミの攻撃は、実際以上によく起きると思われており、オオカミへの恐れは、多くの地域でオオカミ復活反対の重要な要因なのである。

 

この恐れへの効果的な対処方法としては、オオカミに関するレクチャー、話し合い、情報センター(博物館、自然教育センターなど)や出版などを通しての良い教育が上げられる。教育は社会のいろいろな場面で行われ、オオカミによるリスクについては正直であることが大切である。オオカミの潜在的な危険性を否定することは、良い結果をもたらさない。たとえば、反オオカミ論者は、保護論者が大衆を恣意的に間違った方向に導こうとしていると非難することだろう。リスクに関するより良い理解は、恐れを減らすことである。教育は、大衆がオオカミに餌をやったり、近づき過ぎたりするのをやめさせるような内容を含むべきである。最近数年のオオカミによるほとんどの傷害事故は、オオカミが人間の周りに居るのに馴れたり、食べ物で彼らを馴らそうとしたりして起きているのである。

 

狩猟動物をめぐる競合

 

ハンターは、また、オオカミは、エルクジカ、中・小型ジカ、イノシシなどの狩猟動物をめぐっての競争者であるとみている。これはしばしば、オオカミが多すぎるとか狩猟動物の数を減らすといった彼らの文句となる。

 

オオカミの個体数に関する多くの公的な推定は、狩猟協会によって提供された数値に基づいている。そして、誇張されている場合が普通である。捕食者-被食者の動態と地域的生態系でのオオカミの重要性に関する教育と相俟って、オオカミと餌動物の実際の数に関する客観的な調査が、オオカミとハンターの間の論争を緩和するのに役立つ。

 

違法な殺害

 

無制限な狩猟は、生き続けているオオカミを脅かしている。狩猟が禁猟期、狩猟免許、狩猟可能頭数で制限されている場合、これらは、生態や個体群動態に関する理解が十分でないままに実施されている。個体群が国境を越えて分布している場合には、一方の国で保護されているのに、もう一方では狩猟されていたりするような場合、オオカミの保護は保障されていない。2000年には、ポーランドで調査されていた全パックは、法的猟期制が導入されていたスロバキア国境を越えた後にハンターによって撃たれてしまった。

 

何人かの保護論者は、制限つき狩猟はヨーロッパの活力あるオオカミ個体群の管理に貢献し、これの容認は、保護対策に関して狩猟団体の支持を確実にする可能性があると考えている。ゾウのような数種に関して、狩猟からの収入が保護に使われている場合もある。

 

エコツーリズムは、別の、非致死的な、オオカミの利用方法を提供する。旅行者は、地元の宿泊施設に泊まり、交通手段を利用し、他のいろいろな施設を用いて、オオカミの存在が地域社会に経済的利益をもたらすこと、そして、地域のワイルドライフの所有意識と自尊心を養うのに役立つ。エコツーリズムは、また、ハンターだった人たちにガイドとしての雇用の機会を作り出す。

 

 

ハビタットの消失

 

ヨーロッパの多くの国では、オオカミは人間の居住地に接近して生息している。しかし、彼らは、見つかることなく子供たちを育てることができる、撹乱されない地域と植生を必要としている。林業、特に皆伐、道路、家屋、観光施設を含む、農業や田園地帯での開発のための森林伐採は、そうした地域での生息を困難にしている。道路は、とりわけ柵で囲まれる場合、移動を制限し、餌動物への接近を妨げる。また、彼らが新しいテリトリーを求めて分散するのを妨害する。道路と開発は、生息地を細分化し、オオカミ個体群を孤立化させる。それは、結局、彼らを密猟や近親交配にさらすことになる。また、オオカミが現在は生息していないヨーロッパのいろいろな地域での復活を妨げることになるだろう。道路での自動車との衝突によるオオカミの死亡も重大問題である。

 

オオカミの自然な分散と復活をたすけるために、オオカミが現在生息し、オオカミが生息可能なハビッタト保護地域を、国境を越えて、相互に繋ぐハビタット回廊ネットワークを創出維持することの大切さの認識が増している。 主要道路や鉄道を越える、ワイルドライフに適した幅とデザインを持った跨線橋や地下道は、死亡率を下げ、オオカミが新しい地域に分散し、餌動物を追うことができるようにする。

 

ハビタットの消失と撹乱は、開発計画や地域計画立法中に位置づけられる必要がある。オオカミが生息しているか、移動に使われている地域でのすべての新しい開発にあたって、現在生息しているオオカミ個体群への影響に関する調査研究は、更なるハビタットの細分化や消失を避ける上で役に立つ。

 

 

イヌとの交雑

 

小さな孤立したオオカミの個体群と野犬との繁殖に関心が持たれている。交雑個体はイタリアとドイツで発見されている。イヌの飼養者への教育とすべてのイヌにマイクロチップを埋め込むことが、飼い主の責任を増し、野犬を減らすのに役立つだろう。ハンターによっては、彼らのイヌの紛失を防ぐために、発信機つき首輪を用いている。

 

餌動物種の減少

 

人間によるハビタットの消失と過剰な狩猟は、ポルトガルやバルカンのようなヨーロッパのいくつかの地域で、餌動物種を激しく減少させてきた。これは、結局、オオカミを家畜に向かわせ、人々を否定的な状態に追い込み、オオカミを密猟に晒させることになっている。

 

餌動物種の再導入と補充は、偶蹄類の狩猟割り当ての注意深い規制とともに、オオカミ個体群の保護に必要なことである。家畜やゴミのような人間に依拠した食物資源には、オオカミが近づけないようにして、依存しないようにするべきである。

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クマの好物キイチゴ類の回復を早めるイエローストーンのオオカミ

2013 年 9 月 1 日 日曜日

3glizBBCニュースのレポーター、サイモン・レドファーンは、「イエローストーン国立公園へのオオカミの復活はグリズリーベアの食べ物の改善につながっている可能性がある」と指摘する「動物学会誌」の論文を紹介している。

○二十世紀初め、オオカミがイエローストーンから根絶させられて以来、急増したエルクジカ個体群によってクマが依存するキイチゴ類の潅木群落は荒らされ放題だった。オレゴンとワシントンからの研究者のチームは、捕食者オオカミの再導入とエルクジカによる過剰採食の低下を結び付けている。グリズリーベアの穴ごもり前の好物である食べ物であるキイチゴ類の晩夏の実のつき方が、その結果増えているのである。この研究では、その証拠として、1990年代のオオカミ復活に続いてのエルクジカの減少につれて、クマの糞から検出されるキイチゴのタネが倍増していることが報じられている。

○イエローストーンの生態系の複雑な相互関係は、オオカミ再導入前後の比較計測によって示されてきた。合衆国地理研究所(USGS)の野生動物学研究者のデイビド・マトスンは、イエローストーンについて以前つぎのようなコメントをしている。「それは複雑なシステムなのであり、グリズリーベアは、ある意味でこの生態系に含まれるあらゆる生物の頂点を極めるコネクターなのだ。」

kiitigo16.6-4○エルクジカの個体群が減少するにつれてキイチゴ類の潅木群落は増加し続け、潅木群落が過剰採食から回復するにつれて、クマたちの果実の消費は増加し続けている。

○この論文の第一著者であるウイリアム・リップルがコメントしている。「野生の果実はグリズリーベアの食べ物の中でとりわけ大切なものである。彼らができるだけ早く穴ごもりの前に体重を増やそうとしている晩夏には特にそうなのである。」

○「エルクジカの採食がキイチゴの生産を減らすことはヨーロッパでも良く知られている」と、オスロ大学の生態学者アトレ・マイストルドは言う。この研究は、キイチゴ類の新たな群落がオオカミが再導入後に形成されたことを示している。キイチゴの生産がグリズリーにとってきわめて大切であることは明らかである。

○しかし、エルクの減少はまったく良い知らせかというとそうでないかもしれない。イエローストーン北部のエルク個体群は1988年には19,000頭が捕獲されていた。しかし、前年冬の推定頭数はたった3,900頭に過ぎない。


            (BBC NEWS SCIENCE & ENVIRONMENT 29 July 2013)

訳注:グリズリー(ブラウンベアUrsus arctosの北米に生息する亜種、北海道のヒグマも亜種)体重♂135-315kg、♀90-180kg、イエローストーン国立公園には、グリズリーよりも一回り小さいアメリカクロクマ(体重♂95-150kg、♀60-90kg)も生息。両種は同じ場所で観察されることもある。オオカミが捕獲したエルクジカなどの獲物を食べる。本州以南には、さらに小型のツキノワグマが生息。ヒグマやツキノワグマは雑食性なので頂点捕食者ではない。オオカミによってツキノワグマは減少すると心配する人がいるが、これは間違い。オオカミの復活によって、現在多すぎるシカが適正な密度にまで減少すると、ツキノワグマやヒグマの餌である木の実や蜂の巣などが増えるので、オオカミ復活はクマ類のためにもなる。

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オオカミ、エルクジカとバイソンの関係:アメリカ イエローストーン国立公園で観察された「不安な生態系」

2012 年 9 月 19 日 水曜日

http://www.esf.edu/efb/faculty/documents/laundreetal2001elkandbison.pdf
Laundre,J.W., L.Hernandez, & K.B.Altendorf (2001) Can.J.Zool. 79:1401-1409.

イエローストーン国立公園のエルクジカやワピチ(Cervus elaphus)とバイソン(Bison bison)は、今まで50年間ものあいだオオカミ(Canis lupus)のいない環境で生きてきた。
1994-1995年の冬に、オオカミはイエローストーン国立公園の地域に再導入された。
捕食理論からすると、エルクジカとバイソンが、このオオカミ導入の脅威に対して彼らの警戒レベルを上げるだろうと予測された。我々はこの予測を検証するために、公園のまだ“オオカミ非生息地”とオオカミ生息地でエルクジカとバイソンの警戒レベルを比較した。

雄のエルクジカとバイソンはオオカミの再導入に反応しないように見えたが、研究により、低レベルでの警戒は維持されていることが判明した(約12%~7%の時間は警戒に費やされた)。雌のエルクジカとバイソンは、オオカミ生息地では、非生息地と比較して、かなり高い警戒レベルを示した。最高警戒レベル(47.5%±4.1%SE)が維持される傾向は、オオカミ存在地区で、2年目のメスエルクが子ジカと一緒にいる時には、調査の間3年連続で観察された。

オオカミの分布がオオカミ非生息地にも拡大したので、これらの地区のメスエルク、および子ジカと一緒のメスエルクの警戒レベルは、それまでの20.1±3.5%SEと11.5±0.9%SEから43.0±5.9%SEと30.5±2.8%SE と上昇したことが、5年目までの詳細な研究から判明した。

我々は、こうした社会的グループの違いの間で観察される理由を考察している。
オオカミ生息へのこのような行動学的反応は、エルクジカとバイソンの生態を考える上で、オオカミによる直接的な捕食より大きな影響があるのではないかと考えている。

(抄訳:佐々木まり子 2012,9 19)

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鹿の食害を考える ドイツに見るオオカミとの共生

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(動物や自然を守ろう にて)

トカゲ太郎のワンダー・ワールド

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