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【新刊】丸山直樹著『オオカミ冤罪の日本史―オオカミは人を襲わない』

2019 年 11 月 23 日 土曜日

JWA自然保護教養新書(2019)

オオカミ冤罪の日本史―オオカミは人を襲わない

 多くの人は、オオカミについて大なり小なり、わだかまりをお持ちのようです。「人畜を害する凶獣」といった、かつての国語辞典にあったような「猛獣観」です。オオカミが家畜を捕食することは事実としても、「人を襲い、人を食う」性質があるというのは本当でしょうか。そうだとしたら怖いですよね。これには「赤頭巾ちゃん」のようなヨーロッパの寓話の影響があることは良く知られていますが、日本にもオオカミによる人食いに関する古文書が数多く残っていて、「・・・だから」と口にする人もすくなくありません。日本でのそうした出来事が本当のことなら、今でも数多くのオオカミが生息するヨーロッパや北米、モンゴルをはじめとした国々の人々がいつもオオカミに襲われていないのはむしろ不思議です。

 このような素朴な疑問を解き明かすことが本書の主題です。とすると、わが国の書物や古文書に記されているオオカミ事件を検証することが必要だと考えられませんか。そうした記録にある人食い事件は本当のことだったのでしょうか。古文書の信憑性の検証は歴史学にとっては常識なのですが、オオカミに関する歴史民俗学書でもこうした作業が欠かせませんし、これがなければオオカミを間違って理解してしまうことにもなってしまいます。それはオオカミにとっても私たちにとっても不幸なことだと思います。

 ここで紹介する新刊、丸山直樹著『オオカミ冤罪の日本史』(JWA自然保護教養新書2019)は、オオカミの真実に迫るために、これまで定説のように扱われてきた「オオカミ人食い」に関する事件を、関係文献を参照しながら根気よく検証した仕事です。その方法は簡単です。文書を鵜呑みにしないで、現代のオオカミに関する科学的な知見と照合しながら検証すること、また事件当時の様々な歴史的な事実と照らし合わせて、その周辺や背景を含めて多方面から総合的に解釈することでした。この作業の結果、驚くべき発見がありました。

 なんと、オオカミが人食いの冤罪を着せられたのは江戸時代だったのです。謎解きの結果、“犯人グループ”が浮かび上がりました。

 例えれば、“主犯”は、元禄の飢饉に関わる失政の責をオオカミに着せて幕府の追及を逃れた越中、諏訪高島、尾張、津軽、南部といった諸藩、“教唆犯”はそうした条件を準備強制した、あの有名な綱吉の政令群「生類憐みの令」。そしてこの時代に国外から侵入した狂犬病はもうひとつの“共同正犯”といってよいでしょう。オオカミは狂犬病に罹った犬による人身殺傷事件の罪も着せられていたのです。そして、江戸時代に大いに興隆した出版文化はこれを無分別にも社会に拡散したことで“従犯”としての罪を負うべきでしょう。明治以降、「赤頭巾ちゃん」などの新たな外来の“人食い冤罪菌”が侵入しますが、その定着のための土壌は江戸時代に用意されていたのです。明治以降の権力はオオカミに対して偏見の塊でした。ところで、当時の農民や猟師たちは、オオカミを狂暴な蛮獣といったイメージではなく、そのまるで正反対、オオカミは人を恐れて人前に姿を見せない臆病な動物と見ていたようです。オオカミは好んで人を襲うような動物ではなかったのです。これで、ヨーロッパ、北米、モンゴル、中近東、インドやネパールといったオオカミ生息国の人たちのオオカミ観と一致します。

 本書の狙いは、オオカミ人食いの冤罪を晴らすこと。濡れ衣の元凶は元禄飢饉に窮した幕藩体制下の「大嘘」。古代シュメールの箴言「嘘をつけ、然る後、真実を言え。それは嘘と思われるだろう」。もうこれは卒業しましょう。虚言を繰り返すコピペ出版はおしまい。いつまでもオオカミを信じないで、その復活を逡巡していると、とんでもない災禍を招きます。シカ荒れによる自然破壊、山地崩壊、大洪水、そして豚コレラ流行も。どれもこれも生態系の有力な捕食者オオカミが絶滅したままになっていることが原因です。オオカミに関する誤解を解いて、オオカミ再導入を一日も早く実現しましょう。オオカミ復活の必要性については良く分かっているのだが、人食いが心配だからとためらっておいでの方は是非とも本書のご一読をお勧めします。

丸山直樹著「オオカミ冤罪の日本史」JWA自然保護文化教養新書167頁
一社)日本オオカミ協会2019年11月発行
定価:550円+送料150円

ご購入ご希望の方は下記フォームからお願いします。

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書籍紹介「オオカミの群れはなぜ真剣に遊ぶのか」

2019 年 5 月 22 日 水曜日

オオカミが大好きな皆さん!オオカミを呼び戻そうと望んおいでの皆さん!

エリ・H・ラディンガー著 シドラ房子訳
 『オオカミの群れはなぜ真剣に遊ぶのか
築地書館 2500円+税

もう読みましたか。これはとても面白いし役に立ちます。何よりも素晴らしいのは、オオカミを信頼できるようになるということです。この著者は、本物のオオカミを観察しているから、記述を信じることが出来る。僕はいまオオカミの冤罪を晴らそうと、オオカミが人喰いだと思わせるような著作を批判する評論を書いていますが、この本を読んでいると、巷のオオカミ人喰い譚とは全然違うではないかと叫びたくなります。例えばジャーナリスト栗栖健が紹介している諏訪高島藩の元禄オオカミ事件、それに東北学06(2015)に紹介されている弘前藩、盛岡藩、小田原藩(現・小山町)の江戸時代の事件を読んでいると、オオカミ不信に陥り、やはりオオカミは怖いというおどろおどろしいイメージになってしまいます。でも、このランディンガーはホッとします。同じ動物とは思えない。ともかく、江戸時代の古文書の記載を信じるとオオカミは本当に悪獣だと思えてくる。オオカミを信じると古文書の記載は偽造・捏造だと思えてくる。どっちが真実か?もちろん、本物のオオカミを正しく書いているラディンガーを信じます。

僕は古文書をそのまま鵜呑みにしている民俗学者を信じないし、軽蔑しているからオオカミが人喰いだなんて信じない。多くの民俗学者は分析力に欠ける三流の研究者だと思う。大橋昌人編著『信州の狼(山犬)伝承と歴史』ほおずき書籍(2018)は最悪の出版。ただ古文書の記録とわけのわからない民間伝承を集めて羅列しているだけ。

信頼性????。

オオカミ悪者説は、元禄期、幕藩体制社会の捏造・偽造公文書の妄信が原因です。諸悪の根源は、将軍綱吉の「生類憐みの令」に毒された徳川幕府。幕府の咎めから逃げるのに汲汲としている各地の小藩。権力の愚策の最終犠牲者は百姓とオオカミ。こんなバカげた話を今頃になって世に広めているのは、検証抜きで偽文書をコピーしては本にしている、世俗的三流民俗学者なのです。つくり話のオオカミ伝承を「遠野物語」に収録した柳田文学もその類。のこんな連中の著述を信じるとオオカミが信じられなくなる。

クワバラ、クワバラ。

ラディンガーの本はお勧めです。この本をまだ読んでいない人は、是非是非、お読みください。ストレス解消。スッキリします。一気に読み切っても肩がこるようなことはありません。

一言:書名は違訳過ぎてよくない。長すぎるし、ゆるすぎる。訳者、築地、どちらの好み?原題をそのまま訳した方が短くて気が利いていると思います。『オオカミは賢い!』

丸山直樹

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【書評】漂泊の牙

2017 年 6 月 3 日 土曜日

漂白の牙

著者:熊谷達也(くまがいたつや)
書名:漂泊の牙(ひょうはくのきば)
発行年:2009年6月6日(第15刷)
(2002年11月25日初版)
出版社:集英社
ページ数:400p
版サイズ:文庫(集英社文庫)
定価:724円+税

 

 

本書は、東北地方を舞台とした、海外でオオカミの研究をしている城島郁夫が、日本に残した妻子をオオカミらしき動物に食い殺されるところから始まる動物冒険サスペンスである。城島郁夫は、かつて環境庁の自然保護レンジャーの職にあったが、現在は大学の非常勤講師をしながらWWFの仕事をエリック・ツイーメン博士に招かれて世界中でしている、という設定。結末は、邪念を持つものが作り出したオオカミ犬の仕業だったのだが、その過程では、「なぜ日本にオオカミがいなくなったのか」「なぜ日本人はオオカミを恐れるのか」「本来のオオカミは、どういう動物なのか」がよく描かれている。
また、オオカミ犬については、以下のように書かれている。

「オオカミ犬の育種に足を突っ込んでしまった人間は、一度だけの交配であきらめることはない。理想の犬、つまり、飼い主だけを受け入れ、飼い主に百パーセント従うオオカミ犬を作り出そうと、無益な、そして冒涜的な試みを繰り返す。

オオカミと交配させるような犬種としてよく使われるのが、ジャーマンシェパードだ。この犬は、ふつうに思われているような、オオカミに近い品種ではない。(略)しかし、一般の人々、そして、一部の育種家や飼い主は、ジャーマンシェパードにオオカミのイメージを重ねている。いや、そもそもが、交配、育種の過程で、育種家たちが、自分が抱いているオオカミのイメージ__それはオオカミの実像とは必ずしも一致していない__に、より近づけようとして作り上げたものとも言える。その結果、四肢が長くて、どちかといえばきゃしゃなオオカミよりも、胸幅が広く、胴体がどっしりとした威圧的な体躯の犬、ジャーマンシェパードが産み出された。当然のことながら、シェパードはオオカミではない。だが、一部の飼い主や育種家たちは、シェパードが決してオオカミではないという事実に行き当たると、幻滅を覚えるらしい。全く的外れな幻滅を。そして、彼らはこう考える。シェパードをオオカミと交配させれば、より鋭く、より勇敢な、そして、より忠実な、正にオオカミのような犬を作り出すことができるのではないか。

しかし、交配の結果生まれるオオカミ犬は、彼らの期待とは正反対の動物となる。すなわち、怖がりで、学習しようとせず、しかも独立心の強い肉食獣。飼い主が抱く”オオカミのように忠実な”というイメージからは全くかけ離れた存在となる。仮に、無理に調教しようとして、過剰なストレスをかければ、哀れなオオカミ犬は死ぬか、危険極まりない存在になってしまう可能性さえある。・・・」

この物語の場合は、ニホンオオカミとラブラトルレトリバーの交配によるオオカミ犬だった。そうなのだ、この物語ではニホンオオカミが山人に守られて絶滅せずに生き残っていたというオチで終わっている。実際にそうであったらほんとうにいいのだけれど。

評:吉浦信幸(長野県 獣医師)

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