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【意見】毒殺によるシカ管理はすべきでない

2018 年 3 月 14 日 水曜日

鹿毒殺

毒薬で野外のシカを殺すことは、危険猟法として法律で禁じられています。しかし2014年に静岡県が硝酸塩を利用したシカの毒殺方法について発表し、環境省では野外での実証事業を行う段階になったとして、法の例外規定である大臣による許可のもと実証事業を実施するため、2017年12月11日~2018年1月9日にかけてパブリックコメントを募集しました。ウェブページを見ても、なぜ毒殺の研究を進めなければならないのか、その手法、その他必要な情報の記載がないため、非常に意見を述べにくいハブコメでした。

学術研究目的に限定し安全性が確認されるまでそれ以外は許可しない旨の説明があるものの、果たして本格的に事業が始まったとき、生態系をかく乱するなどのおそれはないのでしょうか。 説明図中の文に手がかりがありました。「広く野外に散布される利用形態が想定される」「鳥獣保護管理事業において広く使用が認められるまでの人畜や生態系等への影響等の科学的知見が不足していることから、それを明らかにするための学術研究を目的とするものである」とのこと。これにより研究の目的は、今後鳥獣保護管理事業において広く野外に散布することを想定していることが分かります。

パブコメ募集にあたり明らかにされていませんが、「広く野外に」が全国の森林、国立公園などを含んでいるとしたらどうでしょう。いつまで続くともしれない自然生態系へのこのような不自然な人為的介入をもって野生動物の保護管理と呼ぶことはできません。かつてオオカミをはじめ、トキ、カワウソ、ニホンジカ、カモシカ、ツキノワグマ・・・を絶滅、地域絶滅、絶滅寸前まで追い込んだ人間の自然かく乱を思い起こしてください。毒薬は非常に強力な自然かく乱の手段です。「害獣対策として野外で毒薬を使う」などという発想が国民に浸透することは、個別の毒薬そのもの以上にリスクが大きいと危惧します。

動物倫理や自然に相対する哲学等の社会的議論を置き去りにしたまま実用化を進める態度には、手段を問わずシカの数だけ減らせればよいという安易な考え方が透けるようです。しかし野生のシカを家に棲みついたネズミや害虫のようにイチコロに殺すことは、仮に可能でも実行してはならないのでないかと私は思います。
生態系における捕食者としてのオオカミの役割を理解していても、狩猟を強化すればオオカミは不要、毒薬を使用すればオオカミは不要という事なら、結局は自然のことを理解しておらず、理解しようともしていません。狭く人間中心主義の考えにとらわれ、いつまでも自然の摂理に人為をもって逆らう方法を考え続けること、これは本当に私たちがすべきことではないはずです。

最初の研究発表のニュースを聞いたとき、私は本当にここまで来るとは思いませんでした。うすら寒い感覚を持ちながら、環境省に私個人のコメントを送りました。

■コメント1
広く野外に散布される利用形態を想定し、将来的に鳥獣保護管理事業において広く使用を認めるという方向性に異議あり。特殊な場所に限定するならいざ知らず、自然生態系の野生鳥獣を管理するため毒殺するというのはあまりに不自然な方法である。また思想的にも日本人の自然観になじまない。
野生生物の毒殺は一度に多数の駆除が可能で、かつ散布地域の個体を無差別に捕殺することにもつながりかねない。あるいは、特定のエサに誘因されやすい個体のみを選択して捕殺する可能性もある。そもそもニホンジカであれば、捕食者により、より弱い個体が選択的に捕食され生息数が一定に保たれるのが自然な生態である。それらを鑑みれば、鳥獣保護管理事業における頭数管理として毒殺を用いることは、いずれのケースでも自然の摂理に沿わない不自然な捕殺方法だといえる。そして狩猟鳥獣の不自然な捕殺は、長期的に進化上好ましくない結果をもたらすことがある(※1)。
通常の狩猟であれぱ人間と動物の知恵比べの側面もあるが、毒殺は人間が優位に立ち、簡単に多数の殺傷が可能な手法である。野生動物の命と対峙するにはあまりに安易な手法で、森林やそこに棲む命を畏れ敬ってきた日本人の自然観から逸脱するものだ。神社の社叢により生態系が守られたように、我々に引き継がれてきた自然観にも自然への過度な干渉を抑制する機能があり、このような形でなし崩しに侵されてよいものではない。
※1デビッド・W・コルトマン.トロフィー狩猟がもたらす進化上好ましくない結果.ネイチャー426 6967.2003年12月11日

■コメント2
硝酸塩を使用した捕殺は簡便で効果的な反面、違法な使用が容易でその場合には環境への高負荷があるケースも想定されうる。しかし違法使用者の取締りや違法使用後の環境負荷低減等には困難も予想され、それらを考慮すれば、実用化を目的とした研究はすべきでなく、審査基準設定の必要性もない。
密猟などで違法に使用された場合、個体数の過少化、死亡個体を摂食した動物への悪影響、その他周辺環境への悪影響等が懸念される。希少生物への間接的な影響等も広く想定する必要があろう。自然生態系のシカ等の個体数の適正化が目的ならば、むしろハイイロオオカミ再導入による生態系の修復のほうが環境や人間社会への負荷が少なく、総合的に適切な施策として検討されてよい(※1~6)。いまなぜ毒殺のような高リスクの技術開発をあえて進めようとするのか理由が分からない。やめておいたほうが良いと思う。

※1丸山直樹「オオカミが日本を救う!」白水社(2014)
※2 「オオカミの復活やハンターの育成、専門家の育成も十分に検討に値する・・・」高槻成紀「シカ問題を考える」p205、ヤマケイ新書(2015)
※3「オオカミについては社会の合意が得られれば再導入したいと考える哺乳類学者も多い。」松田裕之「世界遺産のシカを獲るのは是か非か」WEBRONZA(2017年6月26日)
※4「・・・オオカミに来てもらって放してみるということを実験的にやってみてもいいような気がする・・・」「・・・パイロット的にやってみようというのがあってもいいんじゃないかと私は思います。そういう柔軟な姿勢で臨んでいただきたいと思います。」
篠原孝.第186回国会環境委員会第6号.平成26年4月11日
※5「今、鹿、イノシシがふえ過ぎてしまったのは、その頂点捕食者たるオオカミを絶滅させてしまった、これは人間がやってしまったことであるんですが、ここは反省としてしっかりと持たなければいけないんだろうなと私は思っていますし、これからオオカミを導入するということも、本当に検討する段階に入っているだろうなと思っております。」
百瀬智之.第186回国会環境委員会第6号.平成26年4月11日
※6「・・・(オオカミについて)今後、生物多様性の基本法案、こういうものに基づいて、大自然の摂理の中でどう共生をしていくかというのも一つの今後の課題かとも認識をいたしております・・・」
北川知克環境副大臣.第186回国会環境委員会第6号.平成26年4月11日

大槻 国彦(JWA紀州吉野支部)

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誰もオオカミがこわいとは思っていなかった!

2018 年 2 月 8 日 木曜日


千葉県にオオカミがいた!
でも誰もオオカミがこわいとは思っていなかった!


2017年12月9日、千葉市民活動支援センター会議室で、江戸時代の千葉県のオオカミについて講演会を開きました。講演は、長年千葉県で文書、文化財の調査・研究をされてきた習志野市立第3中学校教諭で千葉古文書の会講師の笹川裕さんにしていただきました。現在、狼は存在していたことすら忘れ去られてしまいましたが、狼が身近にいた時代、誰も赤ずきんちゃんの話は知らず、人を襲う動物として恐れていた様子は全くなかったことは明らかです。オオカミの生態を知りたい私達にとってドキュメント画像が目に浮かぶような詳しい記録もありました。おおよそ次のような興味深いお話でした。(井上守)

『江戸時代の古文書に見る千葉県のオオカミ-小金牧の狼狩りを中心に』
笹川 裕

江戸時代、房総(千葉県)には小金牧、佐倉牧、嶺岡牧の3つの牧が存在しました。江戸幕府は駿河の愛鷹牧とあわせて4つの直轄牧場を開設し、放牧を行い軍馬の養成をしていました。それらは、古代から野馬の放牧場としての歴史があるところでした。

下総の小金(こがね)牧では将軍による鹿(しし)狩りが大規模な軍事演習として4回行われました。享保10年(1725)と11年(1726)に将軍吉宗が行っています。鹿狩りは牧に設けられた柵内に追い込んだ野生鳥獣を、伝統的な流鏑馬装束の騎乗の武士が弓矢で捕獲し将軍に武技を見せるもので、1725年には鹿964頭と猪3頭、狼1頭が捕獲され、1726年には鹿500頭、猪11頭、狼1頭が捕獲されました。これらの獲物は武蔵、下野、上野の百姓達約1万5千人が勢子(せこ)となって追い込んだものです。しかし、寛政11年(1795)に将軍家斉が行ったときには鹿98頭、猪9頭に激減しています。狼は捕獲されていません。嘉永2年(1849)には将軍家慶が実施しました。しかし、獣はさらに少なくなり、東北、北関東で捕獲した鹿、猪、兎などを当日柵内に放して行われました。野生動物は、関東平野一帯の新田開発等による自然環境の変化により著しく少なくなっていました。

野馬が放牧されている牧では、幕府役人である牧士(もくし)たちが勢子を指揮し、捕込(とっこみ)に野馬を追い込む捉え馬が行われました。将軍献上用の馬を選別し、運送用、農耕用の馬が払い下げられました。この捉え馬は年に一度の大行事で、高さ3~4mの野馬土手の上に近在からたくさんの見物人が集まり、弁当屋なども現れ、祭りの様な騒ぎがありました。

牧周辺は田畑に開発されましたが、野馬たちの日除け風雨除けに植栽された牧の林は、草地と共に野生動物の住みかであり、村の生活を支える燃料用の薪炭林でもありました。村は幕府の御鷹場にも指定され自然保護区でもありました。一方、野犬や狼は牧で大事な仔馬を襲うことがある害獣で、牧士たちは狼退治のための鉄砲所持を許されていました。鉄砲は猪、鹿等の害獣退治にも重要な道具でもありました。牧周辺の村々には牧運営の役が課されていましたが、野馬が逃げないように作られた野馬土手は、野馬や猪、鹿が田畑に入って荒さないようにするための施設でもありました。人と自然との間に複雑な関係がありましたが、このような関係は、明治になり、牧が開墾地に変わったことにより消滅しました。

小金牧牧士の旧家に山犬、狼が捕獲された記録等が残っていますが、多くの狼がいたとは思えず、疑問があるものもあります。しかし、文化8年(1811)に行われた狼狩りの詳しい記録が残っています。現在の柏市、松戸市、鎌ケ谷市境付近で、山犬か狼の様な動物が徘徊しているとの訴えが牧士にあり、調べたところ、狐穴に4頭の子と2頭の親を発見、うち子1頭を捕獲しました。親狼達には逃げられましたが、巣周辺を調べるとそこには猪、鹿の骨がおびただしく散乱していました。この2頭は前年にどこからかやってきて住みつき、猪、鹿を捕食し静かに暮らしていていたのです。狼は、周辺の百姓達にとっては田畑の害獣を追い払い駆除してくれる存在でもありました。引き続き捜索したところ、古い狐穴に巣替えしているのを発見し子を捕獲。親狼2頭も近くで発見し、追いかけて撃ち殺したというものです。親狼は幕府の役人が検分の後、頭、皮、肢、肉等に分けられ牧士達10名に払い下げられました。魔除けや薬として使われたのではないかと思われます。また、この年には猟師の一人が狼の子を飼育しているとの噂があり、調べたところ仔馬を襲う狼の子に間違いないので役所が取り上げた、という事件が起きています。

安政6年(1859)には、船橋市から千葉市にかかる牧内を牧士と猟師約20名が5日間にわたり狼狩りを行った記録があります。しかし、これは野犬や害獣の駆除を目的とした村々の費用による接待付きの出張だったと思われます。

房総所在野馬牧位置図

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動物達との共生を考える個展のお知らせ

2018 年 1 月 6 日 土曜日

平井睦個展01
けものへんに、良し と書いてなんて読みますか。
そうです。ぼく(表の絵) おおかみ と読みます。
日本の昔の人達は、ぼくたちの事をたいせつと思い「狼」と書いてくれました。
でも、一部のひとたちが、こわいものと誤解して、ぼくたちは住処を追われてしまいました。たいせつに思っていてくれた人達は、ぼくたちがイノシシや鹿から農作物を守ってくれることを知っていました。
おおかみ、狼、山の大神、ぼくたちは、自分の役割を知っています。
もう一度考えてみてください。

平井睦個展03
藤枝市出身カナダ在住の平井睦が動物画を通して自然界との共存、生態系のバランスが大切であることを表現しています。第3回目は2018年 2月1日から2月末日まで藤枝市瀬戸ノ谷の「ゆらく温泉」にて動物たちの絵を展示します。
シカやイノシシの天敵であった日本オオカミの絶滅により、あらためて知らされる自然界のバランスの大切さを見つめて絵に表現しました。
自然界の動物たちに、私達は畏敬の念を抱き、純粋に生きる姿を見つめることにより、命の大切さを知らされます。また、動物達へのいつくしみの気持ちから平安な気持ちを得られることを絵に表現しようと努めています。
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2月1日〜4日まで平井睦氏が会場においでになります。
2月2日午後、オオカミ協会会長、静岡県支部長の仁杉さん、副支部長の三島さんが会場を訪れる予定です。
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平井睦個展
開催日:2018年2月1日(木)~2018年2月28日(水)
開催日補足:月曜日休み
開催時間:9:00~21:00
会場:瀬戸谷温泉ゆらく
住所:〒426-0134 藤枝市藤枝市 本郷5437番地
料金:無料絵画鑑賞
駐車場:駐車場完備
公共交通:無料シャトルバスが藤枝駅南より運行、詳細はホームページでご確認ください。
HP:http://yuraku.tv/

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鹿の食害を考える ドイツに見るオオカミとの共生

当協会が紹介されています
(動物や自然を守ろう にて)

トカゲ太郎のワンダー・ワールド

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