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中学生から尾瀬でのオオカミの復活に関して質問がありました。

2015 年 2 月 21 日 土曜日


尾瀬へのオオカミ復活は心配ありません。
早く実現したいものです!


2015年2月08日、日本オオカミ協会の「お問い合わせコーナー」に、中学生から尾瀬でのオオカミの復活に関して質問がありました。その回答を紹介します。

【1】<質問>「オオカミを尾瀬に再導入した場合、オオカミは、外来種に値するのでしょうか。」

<回答>「外来種」とは、国境を越えて移動してくる、あるいは人の手で持ち込まれる野生動物のことを意味します。この用語は、生物学的ではなく行政的な意味合いが強いのです。最近では「国内外来種」などという用語まで使われています。ニホンカラマツは本州中部の山地帯上部に自然分布しているのですが、人工造林する目的で北海道に持ち込まれました。北海道のカラマツは「国内外来種」に当たるようです。このような例は他にも多くあると思われます。

本州尾瀬に再導入されるハイイロオオカミは、どこから連れて来ようが「外来種」と言うことになります。しかし、外来種と判定されるからと言ってハイイロオオカミを尾瀬に再導入してはならないという理由にはなりません。これまでニホンオオカミと呼ばれていた絶滅種は、DNA分析の結果、ハイイロオオカミであることが改めて証明されました。日本列島の九州、四国、本州の「固有種」と考えられていたニホンオオカミは、固有種ではなく、北半球の大陸に広く分布するハイイロオオカミだったのです。尾瀬にもともと生息していた種であるハイイロオオカミを「外来種」だからと言って再導入してはいけないという理由にはなりません。それに、絶滅した日本のハイイロオオカミと現生のハイイロオオカミとで、食性などの生態が違っていたということはありません。

尾瀬へのハイイロオオカミの再導入は生物学的な問題はありません。今のようにシカが増えるままに尾瀬を放置しているならば、尾瀬の素晴らしい現生自然は破壊され、ミズバショウやニッコウキスゲなどのお花畑が消滅し、湿原や池とうは乾いて、かわりにススキ草原になってしまいます。周囲のアオモリトドマツやダケカンバなどの原生林はシカに皮を剥がれて枯れてしまい、ササ草原になってしまうでしょう。昔、生息していた頂点捕食者のハイイロオオカミを再導入するのは、こうした生態系の破壊と退行を防止しにはなっても、悪いことは何も無いのです。ハイイロオオカミの復活を邪魔しているのは、多くの日本人と行政のハイイロオオカミと自然に関する無知なのです。

結論です。日本の自然生態系の回復と保護を第一に考えるならば、行政的な「外来種」の定義にこだわる必要はありません。


【2】<質問>「オオカミが湿原に入ってきて、人間に危害が及ぶことはないのでしょうか。」

<回答> これまで「赤頭巾ちゃん」などの童話や言い伝えによって、オオカミは人を襲うと信じている人が少なくありません。しかし、これはまったくの誤解です。

現在、カナダとアラスカに59,000~70,000頭、アラスカを除く合衆国に約6,000頭、ヨーロッパには約25,000頭、ヨーロッパ以外のユーラシア大陸には約150,000頭が生息していると推定されていますが、オオカミが人を襲ったという報告は本当に稀なのです。「人馴れや餌付けされていない、野生の健康なオオカミは人を襲うことはない」とオオカミ研究者は口を揃えています。

アラスカ州政府の研究者が20世紀と最近に発生したオオカミ人身傷害に関する80例を調査した結果、狂犬病に罹った場合意外は、人に馴れた個体、特に餌付け個体であったと報告しています。人と接触した経験のないオオカミは、人に好奇心を持って近づいてくることはあっても、人を攻撃することはないのです。ヨーロッパの研究者による調査でも、過去50年、信頼できる記録を見る限り9例しかなく、やはり、狂犬病と給餌などの人馴れが原因であることを指摘しています。ヨーロッパでは里山のような田園地帯でオオカミと住民は共存しているのですが、オオカミは人を避けて行動しているので、住民がオオカミを見ることは大変稀だということです。

モンゴル草原では、遊牧の老人や子供がのんびりヒツジの群れの番をしているのですが、オオカミに襲われることはありません。牧民がオオカミを恐れている様子はありません。観光客を喜ばせようとしてオオカミを怖がって見せているようです。また、ヒツジを捕食された牧民はオオカミを悪く言いますが、これはとうぜんといえましょう。2012年春、中国で二例の咬傷事件が発生しましたが、一例は飼犬、もう一例は飼われていたオオカミが逃げ出して人を噛んだことがわかりました。これらも異常な出来事です。中国でも、オオカミが人を襲う事件は殆どないようです。

ただし、犬を連れていると状況は変わってきます。オオカミは犬を攻撃し、犬を連れ去ろうとするのです。山にペットの犬を連れて行くのは禁物です。オオカミを復活すると狂犬病が蔓延すると怖がる人がいますが、それは取り越し苦労と言うものです。狂犬病はことさら恐れる心配はありません。狂犬病はオオカミ同士よりは、犬から伝染することが普通です。オオカミの何百倍も数が多い犬の狂犬病の方が問題なのですが、現在、日本では飼犬の予防接種が義務付けられているので、狂犬病の発生は抑えられていますから、心配は要りません。狂犬病は哺乳類の多くが罹病しますから、心配するとしたら、犬からタヌキ、アライグマ、キツネなどへの伝染でしょう。ただし、現在、野生のオオカミへの狂犬病の伝染を心配する必要はありません。オオカミ再導入に当たって、絶対に禁止しなければならないのは、野生動物への給餌です。

日本では江戸時代の古文書にオオカミの襲撃例が記載されていることがありますが、17世紀以降のものが多いようです。これらの古い記録も丹念に検証してみると、オオカミではなく野犬と混同して記録されている事例が少なくありません。それと狂犬病にかかった個体によるものも少なくないのです。狂犬病個体も犬とオオカミとの混同があるようです。とにかく、江戸時代は野犬が大変多かったのです。明治時代、北海道開拓吏のエドウイン・ダンの記録にも、ヒツジの食害対策で苦労したことが記録にありますが、犯人はオオカミよりも野犬が多かったと書いてあります。東北地方の山村住民は、オオカミを恐れていず、人を恐れて逃げ隠れしている臆病な動物だとみていたことが明治時代の公文書に記されています。

結論です。オオカミが湿原に入ってきても、人間に危害を及ぼすことはありません。ただし、絶対に餌付けをしないこと、馴れ馴れしく可愛がったりしないことが大切です。ペットの犬を尾瀬に連れて行かないこと。野生動物と人間とは一定の距離を置いて共存することが正しい態度です。

[問い合わせ(2015年2月08日16:38-回答:2015年2月12日)]

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