環境省のおかしな及び腰:「懸念があるからオオカミ復活を検討しない」

 「山と渓谷」掲載インタビュー記事から (2011年2月28日記)

 不思議な記事を見つけた。「オオカミですが、問い合わせはありますが、遺伝的特性の問題や生態系への影響、人的被害、家畜・哀願動物被害、感染症などの懸念から、現状では具体的な検討をする状況にあるとは考えていません」。これは、オオカミ復活案に対する環境省国立公園課佐々木真二郎氏、柴原崇氏、同野生生物課尾山真一氏、苅部博文氏の談話として「山と渓谷」(2011.01)に掲載されていたものである。この陣容からして環境省の公式的な見解だと理解される。驚かされたのは、オオカミ復活に否定的だというだけではない。優秀な行政官としての彼らが、誰が見ても首をひねるような屁理屈を平然と述べていることである。

 普通の人の常識としては、「懸念」があるなら、多くの情報を集めて、論理的、科学的に検討すればよい。それが日本の自然を救う手段ならばなおさらである。懸念があるから「検討しない」というのなら、どのように懸念を検討し、どのような結論に達したのかを国民に示さなければならない。また、「有効な」代案を示さなければならない。そうした作業もせずに、「具体的検討の状況にない」というのは、馬鹿げた屁理屈である。検討すべき問題は、彼らがあげた個々の「懸念」そのものなのであるから。環境省では、誰がどのように、どのような理屈で、個々の懸念を「懸念」と結論したのか、国民がわかるように説明すべきなのである。「懸念」があっても、そうであるからこそ、そうした「懸念」も含めて、先入観なく公平な立場で冷静にオオカミ復活の可能性を検討するのが国民の利益と幸福につながる。これこそ、行政の正しい態度と行動である。

 今回の「山と渓谷」で発表された見解は、守旧的で自己保身的強弁としか言いようがない。環境省の動きは不可解である。ハンターの減少対策もなく、頂点捕食者であるオオカミを欠いたまま、シカ、イノシシのコントロールと獣害問題解決のための実効性のある方策があるのか具体的に説明してもらいたいものだ。公開の場で議論すべきである。
                             

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