自衛隊はトド駆除でもダメだった:1967年の出来事

陸上自衛隊北部方面隊と北海道が2月8日~10日、道内農林業に年間50億円以上の被害をもたらすエゾシカに対し、全国で初めての大規模捕獲事業「白糠の夜明け作戦」を道東・白糠郡白糠町右股地区で実施した。
北海道には2009年10月現在約64万頭のエゾシカが生息すると推定され、市町村の駆除と猟友会会員のシカ猟で毎年約9万2000頭が捕獲されている。だが、エゾシカの自然増加率は約20%(約13万頭)と,捕獲数を上回る。
陸上自衛隊の協力事項は、捕獲時のヘリによるエゾシカ監視、車両での個体運搬、道東のエゾシカ生息状況調査の3つ。自衛隊員約40人と高機動車11、資材運搬車2、スノーモービル3など車両約20両、多用途ヘリと観測ヘリ各1機が参加し、道、町、自衛隊、管理局の合同チーム約120人がエゾシカ捕獲作戦に臨んだ。
8日朝、森林内にエゾシカの姿は確認されたが、ヘリの飛行音を聞いても森から出ず、捕獲数はゼロ。9日は、猟友会会員7人が森の奥に入りシカを追いたて3頭を捕獲。最終日,ハンターの射撃待機位置を山中に進め、ヘリからシカの位置情報を受け移動させた結果25頭を捕獲。3日間の総捕獲数は28頭だった。  
捕獲事業を支援した連隊長は「自治体との連携要領や資材運搬車での運搬要領などを演練でき、十分な成果があった」と話し、道環境生活部も「エゾジカの生息状況調査は今後の捕獲事業立案などにも役立つ。陸自にはこれからも事業への協力を要望していきたい」と話した
(朝雲新聞 2011/2/17 抜粋)

 トドに対して、1958年に道庁・水産庁が駆除に補助金を出すことで始まり、1993年までに統計として少なめに見積もって約23000頭駆除した。だが、いっこうにトド被害は減らなかった。被害軽減の目的で駆除しているのに、駆除の効果判定は一度も行われなかった。駆除で効果がなければ、本来は駆除そのものを中止すべきものであるのだ。現在も駆除は続いている。1994年には年間駆除上限が114頭、2007年には227頭として続いている。明治前半には千島列島に10万頭はいたと推定されているのだが、1963年に18000頭、1995年には5500頭と激減した。1960年代以降の激減の原因は、北海道周辺海域での駆除が原因だとTakahashi and Wada (1998)が結論した。個体数激減の過程で、トド被害が発生していたのだ。
 手を焼いた道庁は自衛隊に出動を要請した。1967年3月27日の読売新聞によると、3月26日に北部方面第1特科団の隊員170人、40ミリ高射機関砲8門、機関銃16丁、75ミリりゅう弾砲数門が日高の新冠町海岸に放列を敷き、沖合い1000mのトド島目指して15分間水しぶきで島が見えなくなるほどの一斉射撃を実施した。大山鳴動してトドは1頭も獲れなかった。3月26日夜、同じ作戦を放映したNETテレビによると、1発3万円の砲弾3300発が発射され、15分間で約1億円の税金がトド駆除のために使われた。そばでは、漁師と道庁からのわずかの補助金で雇った船で散弾を使ってトドを追っているのだ。1968年には、道庁はトドの駆除対策事業補助として100万円を支出した。
 かくのごとく、自衛隊は自分たちの訓練の一環としてしか取り組まない体質であることは明らかだ。なにしろ、日本の軍隊なのだから当然なのだ。 (W)         

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