スイス製のハイテク首輪があればオオカミなんて怖くない

 オオカミ撃退用首輪の開発を報じているのは、Swissinfo.ch2010年10月8日のサイモン・ブラドレーによる記事である。これをかいつまむと「スイスは19世紀にオオカミを絶滅に追い込んだ。しかし、EUの協定によってオオカミの保護が進められたことにより、10年ほど前からイタリアからオオカミが移住し、現在20頭が生息している。問題は放牧されているヒツジやウシの捕食被害問題である。オオカミ撃退用首輪は、ウエスタン・スイス応用科学大学工学部の学生ファビアン・マッター氏らが開発中だ。現在実験段階にある首輪の装置は、ヒツジの心拍数をモニターし、オオカミの襲撃によるストレスでヒツジの心拍数が大幅に増加したときに作動する。ヒツジには聞こえないがオオカミには聞こえる超音波、眩しい閃光、トウガラシスプレーなどが首輪から放出される仕組みだ。まだ厳密な試験が必要だ。」
(http://www.swissinfo.ch/jpn/detail/content.html?cid=28433828)
 
 スイスはじめポーランドやドイツでは、伝統的なオオカミ避けは、オオカミに対してきわめて攻撃的なオオカミ犬やロバを家畜の群れに入れておく方法、牧場の周りに無数の赤い布切れを結わえた紐を廻らす方法が行われてきた。スイスでのヒツジなどに対するオオカミによる捕食は、こうした対策を何も行っていないからだという。この伝統的方法に、ハイテク首輪が加われば、オオカミ問題はほとんどなくなる可能性が高い。家畜被害を心配してオオカミ復活に納得しない日本の牧畜業従事者や行政には、こうした対策の存在を知ってもらいたいものだ。
 ただし、日本では、オオカミが復活しても、米国や欧州諸国のようなヒツジや牛への攻撃が起きることは当面はなさそうである。連日搾乳が欠かせない酪農牛は舎飼が中心で、大規模放牧はまずないといってよい。ヒツジの飼育頭数は1万頭以下とわずかなうえに、寒さに弱いためにほとんどが半舎飼であり、オオカミが攻撃する機会はほとんどない。北海道・日高の軽種馬牧場は、高価な馬ゆえに管理が厳しく、捕食されるリスクは極めて小さい。一部の肉牛が放牧されているが、その面積はごく狭く、耕作放棄地など人里に位置するので、やはりオオカミに攻撃される心配はない。それに身体が大きい牛はオオカミに攻撃される可能性は極めて低い。
 今や日本は全国的に、シカやイノシシに対する侵入防止柵が張り巡らされている。これらは。若干の改良でオオカミ用にも活用できるであろう。学習能力が高いオオカミが、過剰に生息しているシカやイノシシを差し置いて、大きなリスクを犯してまで家畜を狙うとは考えられない。いずれにせよ、日本でのオオカミ復活は避けられないのだから、スイスのような技術開発を日本でも取り組んだら良いだろう。心配性の牧畜家にはハイテク首輪の使用を推奨したい。その価格は、ひとつ4300~8600円というから安いものである。
(記:2011年5月3日)

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