この現状を放置したままでよいの!? 悲しい雁坂峠
1 登山口付近のササ枯れ
2 ササが枯れ、咲いているのはトリカブト
3 ササが枯れている
4 以前の道の両脇はクマザサだったと思う
5 稚樹・幼樹が見られない
9月の連休に、塩山から雁坂嶺に行ってきました。撮影した写真を上から順に紹介します。
1 登山口付近、急斜面のササは元気ですが、傾斜の緩い所はどこもこのような有様でした。
2 見られた花は毒性のあるトリカブトばかりではなかったでしょうか。 シカが食べない花です。
3 写真の風景は昨秋に行った天城片瀬峠付近の状況とそっくりだなと思って撮りました。枯れているのは、おそらくスズタケです。生長点(芽の位置)が高くにあるために、シカの採食に弱く、一気に枯れてしまいます。
4 40年近く前、ササの中を朝露に濡れないように雨具を付けて歩いた記憶があります。以前はクマザサだったと思います。この場所かどうかは定かでありませんが、ずぶ濡れになりました。ササの種類が変わったようです。この小さなササはたぶんミヤコザサで、地下茎が深いためにシカの踏圧に強く、生長点が地中または地際にあるためにシカの採食を免れ、矮小化しながらも枯死することがありません。
5 稚樹、幼樹が見られないことが、山中の風景から生気をなくし、単調な寂しいものにしていると思います。また、シカによって皮剝ぎされている木々も目立ちます。
オオカミが消滅して100年以上経過した事実をもって、生態系はオオカミがいた当時の生態系ではなく、もはやオオカミの居場所は失われていると考える人がいると思います。しかし、それは、私たちの先祖たちが確かな記憶を残さぬまま短時間にオオカミを消し去ってしまったために、私たちがオオカミについての正しい知識を持たず、オオカミを知らないからです。オオカミの居場所はないと考える人は、一体どのようなオオカミを想像しているのでしょうか。
深い山中で、オオカミが躍動した昔からこの森を見続けてきた残存する大木は、数少ない証人たちです。増えすぎたシカによる食害に怯えながら、今の森を悲しみ、オオカミたちの帰還を待ち続けています。
登山者たちは、雁坂峠のテント場で一晩中聞かれたシカの鳴き声にある種の異常さ、不気味さを感じています。さあ、「捕食者であるオオカミの遠吠えが甲州、武州、信州にまたがる広い奥秩父の深い山中でなぜ聞こえないのか」と、オオカミの不在を疑問に思ってください。