河合雅雄先生、しっかりしてください!

兵庫県立森林動物研究センター名誉所長の河合先生が、平成22年度のセンター年報の巻頭に、エッセー「イヌを野に放せ」を発表されています。里山での野生動物追い払いと奥山での野生動物の個体数抑制対策を混同され、「オオカミを放せ」に対して「イヌを放せ」と言っているように思います。それはともかくとして、私たち日本オオカミ協会の提唱するオオカミの再導入、野生オオカミの復活計画に対して、「実行はムリ」であり「実現したとしても、ほとんど効果がないことは説明するまでもない」と書かれました。

この主張の根拠は、ご自身が見られたニホンオオカミの剥製が、想像されていたものよりもずっと小型であったという驚きから、このような小型のオオカミでは「群れで攻撃しなければシカの成獣はとれないだろう」という印象と、江戸時代初期に盛岡藩で行われた巻狩りの記録から、オオカミ生息数はシカの個体数を抑制するものではなかったとする推測です。東北地方では、明治初期の1875~1880年に岩手、宮城の2県で200頭以上のオオカミが捕獲されたことが、当時の県の記録で明らかになっています。ですから、江戸時代の生息数についての推測は明らかに間違っています。そして、オオカミは、群れで狩りをすることにより、自分たちよりも大きいシカなどの有蹄類を好んで餌にする動物です。先生が想像していたオオカミとは一体どのような動物だったのでしょうか。

先生は、オオカミについてそれほど詳しくないのではありませんか。それはさておき、オオカミに対する知識不足のまま、自分の驚きを検証せずに、誤解を改めずに「説明するまでもない」と堂々と主張し、それをまた年報に堂々と掲載する森林動物研究センターとは一体どのような組織なのでしょうか。センター名には「研究」という文字が含まれています。ここで、「研究」や「研究者の姿勢」を説明する必要はないでしょう。オオカミに関し、オオカミとイヌの違いなどを含めて、きちんと研究していただく必要があるようです。

「オオカミを放す」ことは確かに難題です。オオカミ復活には反対のお立場なのでしょう。しかし、「ほとんど効果がないことは説明するまでもない」と一掃できることなのかどうか、偏見抜きで真剣に考えていただきたいと思います。いちいち指摘はしませんが、ほかにも妙なことをお書きになっておいでです。

河合雅雄先生、しっかりしていただけませんか。

Follow me!