スウェーデンのオオカミ狩猟とその管理

野生動物と狩猟のための、スウェーデン最大のNGOであるSAHWM(1830年設立)の責任者Fredrik Widemo氏は2011年までのスウェーデンでのオオカミ保護と管理について報告している。スウェーデンの国土面積は日本の約1.2倍、人口密度はずっと低いものの、スウェーデンでの野生動物管理は日本での良い参考になるだろう。

Fredrik Widemo の2011年1月19日のリポートより

http://www.jagareforbundet.se/blogg/index.php/2011/01/wolf-hunting-and-management-in-sweden/

 

スウェーデンにおける野生動物保護に関する法律は下院議員の約80%の支持を得、狩猟を通してオオカミの個体数を管理することはスウェーデン人の過半数が賛成している。しかし、国内外の保護団体の間では常に論争の的である。

 

●スウェーデンのオオカミの個体数

この国のオオカミは、歴史的に捕獲駆除され続けて1960年代に一旦姿を消したが、10数年後の80年代前半に姿を現し、再び復活した。
今日、オオカミは少なくとも250~300の個体数になり、毎年16%の割で増加している。
2009年、スウェーデン議会は、個体数を現在のレベルで維持することを決定した。
オオカミの駆除は、繰り返し家畜やペットを襲った特定の個体に対してのみ行われ、地区の委員会の許可により施行されるが、家畜やペットの所有者も自衛が許されている。オオカミの個体数を維持するために、その繁殖地域には厳しく制限された狩猟規則が設けられている。
2010年までのモニタリング調査から、オオカミの死亡率は、生息個体数のおよそ10%であった。今年(2011年)は、バッグリミット(狩猟制限数)を上回る捕獲数となった。
スウェーデン最北部40%の地域には、先住民であるサーミ人の居住地がある。彼らは独自の言語、文化を持ち、大規模なトナカイ遊牧業を営んでいることで知られている。
そのため議会では、彼らのトナカイを守るためにここにオオカミが侵入しないようにしてきた。このため、スウェーデンのオオカミはフィンランドやロシアのオオカミとの交流が絶たれている。オオカミの現在の分布は、スウェーデンの約20~25%を覆っている。

 

●スウェーデンのオオカミ遺伝学

現在の集団は、2個体から始まり、最初の繁殖は1983年であった。新しく移住してきた3個体が、以後、群れの繁殖に加わった。その結果、スウェーデンの個体の多くは、一部を除いて、非常に同系交配である。
同系交配を繰り返すと、一回の出産頭数が減っていくことが知られており、若干の奇形も見られるが、深刻な影響は今のところほとんどない。しかし遺伝的多様性の偏りは、長期的にみれば深刻な問題につながりかねないため、予防策として、オオカミの地域的移動が計画されている。また、サーミ人のトナカイ遊牧地にオオカミを入れないことで、他の個体群との自然交流が絶たれており、問題視されている。

 

●オオカミに対する国民の態度

スウェーデン人は、オオカミの生態保護を強く支持しており、その意識は高まり続けている。2004年に64%だった支持は、2009年には71%となり、スウェーデンにオオカミがいることを歓迎している。一方で、オオカミ生息地域での支持は減少している。
ストックホルムでは81%が賛成している一方、ダラーナではわずか56%だった。オオカミ生息地区の住民の多くが、オオカミ個体数の国家目標を減らしてほしいと考えている。
スウェーデンには、約270頭のオオカミ、3200頭のヒグマ、700匹のクズリ、1500~1800匹のオオヤマネコ、1800羽のイヌワシが生息している。
家畜やペットを襲うケースの71%はオオカミの仕業ではないかと考えられており、国民は狩猟による個体数管理で、家畜やペットを守ってほしいと望んでいる。
このように、一般のスウェーデン人は、オオカミの生態を保護し一定の個体数を保ちたいと望んでいると同時に、増えすぎによる問題を減らすための十分な管理を要求しているのである。

 

●オオカミ管理

オオカミの移入は、フィンランドから2年おきくらいにあり、(その移入個体が繁殖するとすれば)、スウェーデンのオオカミの個体群は、現在のまま正常に維持できることになる。移入のような移動などの他地域との交流は、オオカミの遺伝子を健全化する大切なファクターである。同時に、狩猟による個体数管理が行われている。
スウェーデンの250,000頭のトナカイのうち、50,000頭以上は、毎年、主にオオヤマネコに襲われている。既存のオオヤマネコ、ヒグマやクズリの上にさらにオオカミが加わることは、問題を拡大しかねない。
これは、大型肉食動物管理の複雑さを示しており、生物学的観点からも社会学的観点からも、社会的問題として取り組まなければならないことを示している。
現在のオオカミ分布地区では、こうした問題解決に向けて、何らかの方策によってオオカミの個体数の増加を阻止してほしいという声があがっている。

 

●オオカミの狩猟

スウェーデンのオオカミの個体群は、最もよく調査され世界的に認められている。彼らはオオカミ個体群の成長率と個体の分布を的確に予測している。さらに、全集団の血統を、どの個体が同系交配か、そうではないかよく把握している。
スウェーデンでは、ヒグマを皮切りに、最近ではオオヤマネコでの持続可能な管理を成功させた実績がある。両者の個体数も、数十年前は、オオカミと同様絶滅の危機にあった。広範囲なモニタリング調査と保護活動を通じて、厳しい管理下での狩猟とともに、個体数は増加し拡大することができた。制限つきの狩猟を認めることは、大型肉食動物に関する国民の理解を得るための鍵となっている。
スウェーデンのオオカミの群れは、平均1,000km2の、広範囲ななわばりを持つ。移入個体や、彼らの仔どもたちが殺されないよう、狩猟は同系交配の個体が生息するなわばり内でのみ許可されている。同系交配の個体だけを間引いてきた結果、その割合を、群れ全体から減らすことができた。スウェーデンでは、オオカミ個体群の遺伝子を健全化するために、新しい個体の導入や、場合によって生息地の入れ替えも行っている。
このように、綿密なモニタリングを行っていくことで、個体数、遺伝子ともに正常かつ健全なオオカミを生態系内に維持していくことに成功している。

 

●スウェーデンのハンターの状況

狩猟は、スウェーデンの社会に根ざした伝統でありスウェーデン人の86%が狩猟を高く支持している。SAHWMには、スウェーデンの265,000人のハンターのうち72% が加入している。現在スウェーデンでは、スウェーデン原産動物の種の生存可能な個体数をすべて維持している。スウェーデン人は、伝統ある狩猟文化を用い、生物多様性を保つだけでなく、すでに失われた生物種を復元させながらも、持続可能な範囲で利用していくことを尊重している。オオカミの個体数を正しく管理していけば、各地での理解を得ることができるのである。

(抄訳:佐々木まり子 2012年4月10日)

◇編集部注◇   SAHWM:Swedish Association for Hunting and Wildlife Management

 

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