オオカミ、エルクジカとバイソンの関係:アメリカ イエローストーン国立公園で観察された「不安な生態系」

http://www.esf.edu/efb/faculty/documents/laundreetal2001elkandbison.pdf
Laundre,J.W., L.Hernandez, & K.B.Altendorf (2001) Can.J.Zool. 79:1401-1409.

イエローストーン国立公園のエルクジカやワピチ(Cervus elaphus)とバイソン(Bison bison)は、今まで50年間ものあいだオオカミ(Canis lupus)のいない環境で生きてきた。
1994-1995年の冬に、オオカミはイエローストーン国立公園の地域に再導入された。
捕食理論からすると、エルクジカとバイソンが、このオオカミ導入の脅威に対して彼らの警戒レベルを上げるだろうと予測された。我々はこの予測を検証するために、公園のまだ“オオカミ非生息地”とオオカミ生息地でエルクジカとバイソンの警戒レベルを比較した。

雄のエルクジカとバイソンはオオカミの再導入に反応しないように見えたが、研究により、低レベルでの警戒は維持されていることが判明した(約12%~7%の時間は警戒に費やされた)。雌のエルクジカとバイソンは、オオカミ生息地では、非生息地と比較して、かなり高い警戒レベルを示した。最高警戒レベル(47.5%±4.1%SE)が維持される傾向は、オオカミ存在地区で、2年目のメスエルクが子ジカと一緒にいる時には、調査の間3年連続で観察された。

オオカミの分布がオオカミ非生息地にも拡大したので、これらの地区のメスエルク、および子ジカと一緒のメスエルクの警戒レベルは、それまでの20.1±3.5%SEと11.5±0.9%SEから43.0±5.9%SEと30.5±2.8%SE と上昇したことが、5年目までの詳細な研究から判明した。

我々は、こうした社会的グループの違いの間で観察される理由を考察している。
オオカミ生息へのこのような行動学的反応は、エルクジカとバイソンの生態を考える上で、オオカミによる直接的な捕食より大きな影響があるのではないかと考えている。

(抄訳:佐々木まり子 2012,9 19)

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