オオカミと生態系について勉強が進まない環境省: 南ア自然保護官の発言は明治時代

『オオカミの導入で、ほかの生態系に影響を及ぼす可能性があり、オオカミが人里に現れ、人や家畜に被害が出ることも考えられる』山梨日日新聞(2012年10月12日)掲載の環境省南アルプス自然保護官中村仁氏のコメントである。これを見る限り、環境省のオオカミ復活に関する理解は、オオカミ駆除に明け暮れた明治時代そのものである。オオカミ導入が影響を及ぼす可能性があるほかの生態系とは一体何なのか具体的に指摘しなければ、議論のしようがない。人畜被害に関するコメントは国語辞典そのままだ。何かほかの文献でも読んだのなら、是非紹介してもらいたい。まさかグリム童話の「赤ずきんちゃん」ではないだろうが。重ねて言う。根拠を示してもらいたい。

2012年4月、日本オオカミ協会は、全国から集めた94,500人分のオオカミ復活要求署名を環境大臣あてに提出したのだが、その折の担当者の「オオカミについて勉強する」という発言の結果はこれだったのか。これではシカの増えすぎによる生態系被害や、シカ以外のイノシシやサルなどによる農林業などの諸被害がいつまでたっても終息しないのは当然だ。オオカミ復活以外にどんな有効策があるのか。これを示せないで根も葉もない思い込み発言を繰り返すのは職務怠慢であり、全く不真面目である。これでは自然保護官の名前が泣く。妄言はやめて勉強すべきだ。この瞬間も南アはじめ各地の生態系ではシカの食害で植生の破壊が進み、山が崩れているのだ。

その後、10月22日、JWAによる問い合わせに対して「担当官の私的発言」との回答があった。公務員のマスコミへの私的発言は職分を逸脱するものではないか。さらに言えば、たとえ私的発言とはいえ、それなりの論拠を示してもらいたい。根も葉もない流言飛語の類のコピー的発言ならば軽薄のそしりは免れない。さらに、このことを上層部へ報告して環境省として返答する機会を設けるとのことだが待ち遠しいことである。

(2012年10月20日記 狼花亭)

10年前の南アルプス、櫛型山 (2002)

現在の南アルプス、櫛型山 (2012)

シカ食害で枯れた木、南アルプス

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