オオカミ絶滅のリスクを無視する環境行政は無責任!

[HP記事環境省野生生物課長会見記2013年6月5日]

 

リスク幻想に囚われた自然保護行政はオオカミ復活に後ろ向き!

環境省自然環境局野生生物課長の見解

 

2013年5月27日、JWAの山崎八九生氏他3役員が環境省野生生物課中島課長と意見交換しました。この席での中島課長の発言の要点は次の通りです。

「環境省は獣害対策の一環としてオオカミ復活は検討していないし、今後の検討課題にもならないだろう。その理由は、今の日本の社会では『ゼロリスク』が求められている。そのため、万が一の人身害や家畜への被害が予想される以上、オオカミ導入は選択肢にはならない。獣害の実態は環境省も把握している。農水省とも協議しながら、従来のような猟友会任せではない、専門の対策チームを編成して、増えすぎたシカなどを大幅に減らす方向で臨む」

この発言は、環境省がオオカミ生息国からの客観的・科学的な情報収集をすることなく、ひたすら「思い込みリスク」を避けようとしている様子がよくわかります。ヒトや家畜へのリスクを口にしてはいますが、行政は、実は行政自身のリスクを避けようとしているためのことなのです。環境行政は、農林行政とともに、2008年以来の「鳥獣害対策特別措置法」を、その効果の有無にかかわらず、何も考えずに繰り返していれば、責任を追及されることはないと考えているのでしょう。この法律には、狩猟・駆除による個体数の調節を行うという、人間による自然支配しか書かれていません。オオカミ復活による自然調節についてはまるで触れられていないのです。この間にもシカは増え続け、各地の生態系や農地に被害を拡大し、国土は荒廃し続けています。行政は自らこの特措法の効果に関する検証は行わないのでしょうか。そして、この行政の無為がもたらす、国土荒廃のリスクについては一切考えないのでしょうか。限りなくゼロに近いオオカミによる人身リスクにこだわって、毎日、全国各地で進行している深刻なシカによるリスクは無視しようというのでしょうか。環境行政は思考停止状態だとしか言いようがありません。今や、このようにリスク化した環境行政によって美しい国土を壊されてしまえば、私たちは子孫ともども悲しみ悔やむことになるでしょう。私たち国民は、自己保身的で守旧的な時代遅れの環境行政を厳しく監視批判し、あるべき方向に向かわせる働きかけが必要なのです。

ちなみに、国民の多くは、今や、オオカミが人を襲う動物でないこと、その復活が緊急に必要であることに気がついています。環境行政は、いつまでも明治時代の「赤ずきんちゃん」プロパガンダに囚われているのではなく、国民の認識の進化をきちん知るべきなのです。もちろん、原発など人間が作り出す技術に関してはゼロリスクを目指さなければなりませんが、自然にゼロリスクを求めるのは間違いです。リスクを失くした自然は、自然ではなくなり、自然を失くして、リスクのない環境におかれる、私たち人間は家畜のように活力を失い、退化することになるのです。これを「自己家畜化」と呼んで警鐘を鳴らした学者がいたことを思い出します。これは恐ろしいリスクです。

 

平成25年6月5日

 

山﨑八九生

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