霧ヶ峰でオオカミを語る夕べ:活動報告

ころぼっくるひゅってで開催 「霧ヶ峰でオオカミを語る夕べ」11

 

10月26日長野県の真ん中にある高原地帯、霧ヶ峰の山小屋「ころぼっくるひゅって」の協力により「オオカミを語る夕べ」を成功裡に開催できましたので、ご報告します。

霧ヶ峰では増えすぎたシカが観光資源である高山植物を食害し、いまや電気柵の内側だけのお花畑になっています。その中心地で地元の人たちとオオカミについて語り合いたいと考え、ころぼっくるひゅってのオーナーに相談したところ、こころよく引き受けていただき、当日貸切で開催することになりました。

開催にあたって最初の問題は集客です。今までなんのつながりもない人たちに来てもらうために、新聞を利用しました。長野は小さな地域新聞も多いので、記事や行事欄に取り上げてくれるよう30社にファックスで案内のチラシを送り、40ほどある自然保護関係のNPO団体にも、郵送で案内しました。

これを長野新報、信濃毎日が取り上げ、参加の申込が相次いで、幸先よいスタートが切れました。

台風27号の影響で直前まで開催できるかどうか判断に迷いましたが、当日は雨も風もやみ、参加者も予想外に増えて、立ち見も出る結果となりました。取材の新聞社も計4社あり、関心の高さがうかがえます。

今回は丸山会長が和歌山集会のためこちらには来れませんので、それでも説得力を持たせるため、映像を多用することにしました。雪の美ヶ原に登ってくる大群の鹿と、イタリアのアブルッツォ国立公園の鹿とオオカミの緊張関係、それにイエローストーンでエルクを捕食するオオカミの映像を対比し、オオカミの存在が鹿に与える影響をイメージさせてから説明にとりかかります。そしてドイツのオオカミ地帯を視察した長野県議の永井一雄さん、堀場秀孝さんとアメリカの国際オオカミシンポジウムに参加した南部成美会員の報告で、世界から見た日本のオオカミ再導入を考えることができるような構成です。

そのテーマごとに自由に質問を受ける形式にしたため、質疑は活発でした。ストーブを囲んだ、密着感のある部屋の中、リラックスして話し合えるなごやかな雰囲気もありましたが、出てくる質問自体は、同じものばかりです。人を襲うか、法的にはどうなのか、ニホンオオカミは固有種か、悪いイメージには理由があるのか等でしたが、いくつか変わった質問もありました。

たとえば、オオカミがいる山を歩くときに、熊鈴のようなものは必要か、という質問は既にオオカミが日本に戻ることを想定したものです。もちろん、必要ないのですが。22

また、屋久島はオオカミがいなくても大丈夫なようだが、と屋久島のひどい状態を知らないらしい質問もありました。農業者らしき人も参加されていて、シカの対策に悩んでいる様子がうかがえます。

最後に、日本全国で起きていることと、アメリカの環境保護当局や団体がオオカミをどう捉えているかと、日本の環境省、長野県知事がオオカミ復活の議論を拒否していることを対比して、この状態を変えるのは、市民の声です、と締めくくると、長野県議会での活動活発化を永井さんに促す声が上がり、そこにいるみんながその気になった雰囲気がありました。

最後には、オオカミ復活への協力を呼びかけました。まずは自分の周囲の人に話してください、そして次に、オオカミのイベントにいっしょに参加しようと誘ってください、また日本オオカミ協会の会員になってください、そしてオオカミについて語る機会を設け、そこで話をさせてください、と。

参加者の一人が他の参加者に向かって、「長野県の環境レンジャーにこの問題を伝えていきましょう」と呼びかけ、また、別の参加者は別れ際に、「私もまわりの人に話をしますから」と声をかけてくれました。

シカの被害が大きい地域のど真ん中で、オオカミについて語る夕べ、というコンセプトのイベントは、どの地域でも誰でもできます。出てくる質問は、すでにどこかで出された内容ばかりで、答えられないものはありません。現在のシカ対策に疑問を感じて参加される人には、オオカミ復活を受け入れる下地は十分です。全国各地で、このようなイベントを繰り返し行っていけば、世論は必ずもっと盛り上がってくるに違いないと手ごたえが感じられたのでした。33

霧ヶ峰を足がかりに、長野で来年もこうした会を継続し、拡大していきたいと思います。

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