書籍紹介「オオカミの群れはなぜ真剣に遊ぶのか」

オオカミが大好きな皆さん!オオカミを呼び戻そうと望んおいでの皆さん!

エリ・H・ラディンガー著 シドラ房子訳
 『オオカミの群れはなぜ真剣に遊ぶのか
築地書館 2500円+税

もう読みましたか。これはとても面白いし役に立ちます。何よりも素晴らしいのは、オオカミを信頼できるようになるということです。この著者は、本物のオオカミを観察しているから、記述を信じることが出来る。僕はいまオオカミの冤罪を晴らそうと、オオカミが人喰いだと思わせるような著作を批判する評論を書いていますが、この本を読んでいると、巷のオオカミ人喰い譚とは全然違うではないかと叫びたくなります。例えばジャーナリスト栗栖健が紹介している諏訪高島藩の元禄オオカミ事件、それに東北学06(2015)に紹介されている弘前藩、盛岡藩、小田原藩(現・小山町)の江戸時代の事件を読んでいると、オオカミ不信に陥り、やはりオオカミは怖いというおどろおどろしいイメージになってしまいます。でも、このランディンガーはホッとします。同じ動物とは思えない。ともかく、江戸時代の古文書の記載を信じるとオオカミは本当に悪獣だと思えてくる。オオカミを信じると古文書の記載は偽造・捏造だと思えてくる。どっちが真実か?もちろん、本物のオオカミを正しく書いているラディンガーを信じます。

僕は古文書をそのまま鵜呑みにしている民俗学者を信じないし、軽蔑しているからオオカミが人喰いだなんて信じない。多くの民俗学者は分析力に欠ける三流の研究者だと思う。大橋昌人編著『信州の狼(山犬)伝承と歴史』ほおずき書籍(2018)は最悪の出版。ただ古文書の記録とわけのわからない民間伝承を集めて羅列しているだけ。

信頼性????。

オオカミ悪者説は、元禄期、幕藩体制社会の捏造・偽造公文書の妄信が原因です。諸悪の根源は、将軍綱吉の「生類憐みの令」に毒された徳川幕府。幕府の咎めから逃げるのに汲汲としている各地の小藩。権力の愚策の最終犠牲者は百姓とオオカミ。こんなバカげた話を今頃になって世に広めているのは、検証抜きで偽文書をコピーしては本にしている、世俗的三流民俗学者なのです。つくり話のオオカミ伝承を「遠野物語」に収録した柳田文学もその類。のこんな連中の著述を信じるとオオカミが信じられなくなる。

クワバラ、クワバラ。

ラディンガーの本はお勧めです。この本をまだ読んでいない人は、是非是非、お読みください。ストレス解消。スッキリします。一気に読み切っても肩がこるようなことはありません。

一言:書名は違訳過ぎてよくない。長すぎるし、ゆるすぎる。訳者、築地、どちらの好み?原題をそのまま訳した方が短くて気が利いていると思います。『オオカミは賢い!』

丸山直樹

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