房総鴨川のナラ枯れ
房総の一足早い紅葉? この山には芽吹きが少ない沈黙の春がやってきます。
赤茶色に見えるのは枯れた葉が残っている常緑樹です。
房総半島南東部鴨川市内国道沿いの山の様子です。一足早い紅葉かと驚きましたが、常緑樹の山で、赤茶色に枯れた葉と落葉した樹木の灰色の幹と枝が目立っています。
カシノナガキクイムシ(カシナガ)が媒介する糸状菌(カビ)が引き起こす伝染病で、樹木内部の通水障害で枯れます。ナラ枯れというのだそうです。
シイ、カシ類は、伐って薪や炭に利用されていたのですが、1960年頃から化石燃料の普及により利用されなくなり、カシナガが好む大木に育ち、被害を受けやすくなっています。1990年頃から日本海側を中心に目立つようになり、2000年頃から拡大の様子を見せ、2010年頃ピークとなり、その後減っていましたが、近年関東周辺でも広がりを見せるようになりました。千葉県内では2017年9月鴨川市のマテバシイから初めて発見されたそうです。薪炭に利用していた当時のように、木材やバイオマスとして利用するために伐採して萌芽更新させ、森を若返らせる仕組みが必要だと思います。
ところが、森の若返りを妨害するものがいます。当地域周辺に、異常に増えているシカです。シカが多くなった地域では、下層木のアオキなどがシカに食べ尽くされ、林床の植生は乏しくなっています。むき出しになった表土は乾燥し硬化、流亡しています。シイ、カシの大木が寿命を迎えても、次代の木々はありません。萌芽更新しても幼木はシカに食べられて育たないでしょう。シカ対策が重要ですが、イノシシの農作物被害対策に手いっぱいで、シカ対策は進んでいません。猟師も住民も少なくなっています。オオカミの再導入により生態系の機能を復活させて、シカを適性密度にすることが重要です。
カシナガは持続可能な自然を取り戻すことについて、警告してくれているのかもしれません。
井上守
灰色に見えるのは枯死した樹木の幹枝です。5年位で倒れたのちにできるギャップに生えてくる植物は、シカの餌となりシカを更に増やす恐れがあります。ギャップはシカ食害で埋まらず、土砂流出、山崩れの危険があります。