祝オープン!熊野の森オオカミみゅーじあむ

ドイツ、リーツインのオオカミ博物館(NABU運営)

日本オオカミ協会は発足以来30年余にわたりオオカミ再導入による国土の保全運動を展開してきた。この一環として各地で「オオカミフォーラム」や「オオカミ展」を開催し、毎回数十名から300名を超える参加者を集めてきた。これらの1万人以上の参加者に獣害による国土の荒廃を警告し、その対策としてオオカミ再導入を提案してきた。

獣害のなかでもシカによる被害は日本全土にわたり、最早放置できない状態となっている。高齢と狩猟離れなどにより銃猟者は減少する一方で、残された罠猟などでは繁殖率の高いシカの増加を防げない。多くの国民に理解されているのかどうか心配だ。

日本オオカミ協会が1993年以来実施して来たオオカミ復活の是非を問うアンケート結果では、いまだに賛否半々にとどまっている。もどかしいことだ。これではまだまだ保守的な政治は動きそうにない。大多数の国民の賛成が必要だ。山林を中心とした生態系の惨状とあるべき姿を、国民に詳しく知ってもらうためには普及教育を目的とするオオカミと生態系に関する常設博物館の開設は悲願であった。

日本オオカミ協会は、2000年代になってオオカミが復活したドイツを視察した。ザクセン州リーチエン町の公園の一角にある、自然保護団体が運営するオオカミ博物館を観てきた。その施設は簡素なものだったが、オオカミ復活による生態系復活の歴史の展示、オオカミグッズの販売、レストラン、宿泊棟などを備えていた。小学生の生態系保全に関する学習などにも利用するため、絵や置物など解りやすい展示がなされており効果をあげている。

日本オオカミ協会としては、従来通り、各地を巡廻するオオカミフォーラムや展示会を続けていかねばならないが、常設の展示館を早く持ちたいとの考えを早くから持っており実現を模索してきた。

今回とうとうオオカミミュージアムの設立に漕ぎつけることが出来た。これは奈良県在住の会員、大槻国彦氏の提案である。大槻氏と大学の同門、安原克彦氏が熊野本宮大社の背面の鳥居前にある古書店“kumano森のふくろう文庫”の経営者であり、同氏が大槻氏の申し出に快くご同意していただいたことにより、日本オオカミ協会「熊野の森オオカミみゅーじあむ」を文庫に併設させていただくこととなった。

この地は日本人だけでなく多くの外国人旅行者が訪れる熊野古道散策路の起点であるだけでなく、多くの参拝者が熊野神社の鎮守の森を目指してくる門前町に位置し、日本オオカミ協会のオオカミミュージアムとして格好の地である。

展示物はこれまで制作展示してきたパネルなどを店内壁面全体に飾り、充実した内容となっている。まだオオカミ関係の書籍、関係展示物など設置可能なスペースもあり、会員による展示物のご恵送などお願いしたい。

今後は視聴覚機器による広報活動も欠かせない。日本オオカミ協会としては、大型スクリーンによるイエローストーン国立公園の映像やモンゴル国立公園視察による動画など、一層なじみ深い啓発運動も行って行きたい。その為には敷地内に別館を建てることも将来必要となってくる。会員諸氏によるお力添えはもちろん、ご理解一般の方々、そして企業に応援して頂くことをお願いしたい。みなさんのご協力をお願いしたい。

一社)日本オオカミ協会副会長 岩堀弘明
(2024.4.5)

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