Asian Rewilding Forum への参加報告
2024.10.13 拡大理事会
大槻国彦
【日時】2024年9月26日(木)~28日(土)
【場所】
26日:梨花女子大学(韓国ソウル特別市)
27日アートギャラリー、ミニシアター(〃)
28日 始華湖(始興市ほか)
【参加者】大槻国彦、辻本篤郎
【主催者】
生物多様性財団(梨花女子大学内)
会長 Jae C Choe 博士 (霊長類研究者)
事務局長 Sanha Kim 博士
26日 講演会
新聞でも広報したそうで会場は 200 人程の聴衆でいっぱいとなった。韓国語の発表は言
葉が理解できなかったが、後半では英語の同時通訳レシーバーが貸し出された。
当日のプログラムは末尾に記載。
「Rewilding Japan: Current status and issues of wolf reintroduction movement」と
して大槻がオオカミ協会の活動やオオカミ再導入の必要性について発表した。
質問:1「どこのオオカミを連れてくるのか、その方法は検討されているか」
回答:1「韓国では絶滅してしまったので中国やモンゴルが候補として考えられる」
質問:2「オオカミを再導入したら捕食される動物の愛護団体から抗議があるのではないか」
回答:2「捕食される動物も何かの生き物を食べているのだから仕方ない」
27日:リワイルディングウィークとしてミニアート展を開催
人間にとって不快な動物の鳴き声が出る作品や、鳥や小動物の死骸が分解されていく様子の展示(ある動物の死はそれを食べる動物の祭りでもあるとの解説)。様々な動物の影を重ねていくとオオカミの形の影ができる作品も。お客さんはちらほら。
午後は今回参集した各国の活動を取材した映画を鑑賞。日本は 5 月にオオカミみゅーじあむが取材された。森林のシカ被害状況が映されたほか、上野さん、辻本さん、金生さんへのインタビューが素晴らしいと感じた。映画は後で送ってくれるとのこと。
28日:現地見学 始華湖
1994 年、農工業用の淡水の確保のため湾を堤防で閉め切ったがうまく水がたまらず水質が悪。後に淡水化をあきらめ
2011 年に潮力発電所を建設した。湾内は淡水に海水が混ざる人工的な汽水湖や湿原となり、渡り鳥の楽園になった。リワイルディングの成功事例。
【リワイルディング「再野生化」】
自然再生、自然の復元という意味の用語。欧米では近年よく耳にするがアジアではまだこれからなので今回の Asian Rewilding Forum を開催したと説明されていた
主催者の講演では「人間の介入をなるべく少なくしていき自然の仕組みにゆだねる」ことや「自然の行きたい方向に自然が向かう、それでよい」というようなニュアンスが強調されているように感じた。絶滅種の再導入は自然を再生させる手法の1つとして組み込まれている。これは日本の「狩猟によりシカやイノシシが減るならそうすればよい」という考え方
を否定するのに使える概念だと思った。
各国からの参加者はリワイルディングという用語・概念がこれまでの自然再生とどう違うのかが分かりにくい様子だった。絶滅したオオカミの再導入は Rewilding そのものであり必要性が理解できる、一方で日本政府が消極的である理由については理解しにくいというような反応であった。
※なお会長からリワイルディングは新しい概念ではなく従来の Nature restoration「自然の回復」の焼きなおしであるとの指摘を頂きました。
【主宰者の受け入れ態勢と参加者との交流】
主催者側は事務局長の Sanha Kim 氏が運営を取り仕切っていた。Jae Choe 会長は1日目の講演と夕食会に出席。我々には日本語のできるスタッフが世話係として付いてくれた。
モンゴルの Saraana Nature Conservation Foundation の Sarangerel Ichinkhorloo 氏には今後の JWA との交流をお願いした。コロナ前には東京でホスタイ国立公園のガンボルト氏の講演会を実施したが、今後またオオカミと人との共存についての講演会を日本で開催したり、モンゴルでのオオカミ観察ツアーなどができたら JWA 会員の理解が深まることと
思った。
【ハンギョレ新聞の記者からのインタビュー】
10月10日付けオンラインサイトに掲載されました。
https://www.hani.co.kr/arti/animalpeople/human_animal/1161728.html#ace04ou
【講演会プログラム】
2024年9月26日(木)10:30 ~ 17:00
「Making a case for Rewilding:Why now,why here, and why bother?」
Sanha Kim(韓国、生物多様性財団事務局長)
「Rewilding Japan: Current status and issues of wolf reintroduction movement」
大槻国彦
「Reimagining a city in a garden: Wilder by nature or by design?」
Kang Min(シンガポール、シンガポール自然協会副会長)
(昼食)
「Restoring the leuser Ecosystem as a New Home for Flora and Fauna」
Rio Ardi & Syafrizaldi Jpang
(インドネシア、オランウータン インフォメーション センター調査官・執行役員)
「Accidental Nature: Rewilding in and around the DMZ, Cheorwon, South Korea」
Myung-Ae Choi(韓国、延世大学教授)
「The wildlife and rewilding of Mongolia」
Sarangerel Ichinkhorloo (モンゴル国、サラアナ自然保護財団会長)
「Giving up space: Urban rewilding in Seoul’s Noeul Citizen Park」
Sungran Kim(韓国、ノウル公園市民グループ委員)
「自然, Being byself」Jae C Choe(韓国、生物多様性財団会長)
(質疑応答)