シカ・イノシシの生息数管理とオオカミ再導入について
環境省が4月に公表した、2023年度末の二ホンジカの推定個体数は、中央値で本州以南が230万頭、今回調査から含まれるようになった北海道を加えると303万頭でした。イノシシの推定個体数は122万頭でした。
環境省と農水省は2013年に共同で「抜本的な鳥獣捕獲強化」対策を策定し、2011年の推定個体数を基準にして10年後の2023年度に半減することを目標に捕獲を強化してきましたが減少することはできず、依然として高い水準にあるため目標年を2028年度に延期し引き続き捕獲強化を進めることとしました。2014年から2023年の10年間に、シカ580万頭、イノシシ640万頭もが捕獲されたのですが、目標は達成できず、生息地も広がり、市街地や高標高地域等にも進出しています。2024年にはシカ74万頭、イノシシ64万頭が捕獲されました。
シカ、イノシシなどの野生動物の増加は、化石燃料や化学肥料、プラスチック、家畜の肉等が大量消費されるようになり、里山を中心に成立していた循環型社会に変化が進んだ1970年代後半から1980年代に始まっています。ハンターの登録免許数は、1970年頃が最も多く53万人でしたが、その後急減し、2000年代は20万人前後で推移しています。ハンターが減少すると野生動物の激増が始まり、ハンター1人当たりの負担は大きなものとなっています。他方、1920年から1950年頃の登録免許数は10万人前後で推移していたために、少ない猟師が野生動物を管理していたと誤解されていることがあります。しかし、この時代には多くの未登録の元気なハンターがいて、熱心に狩猟(密猟)をしていたために多くの野生動物が絶滅に瀕しました。大半のハンターが40歳以下であり、野生動物の肉や皮に経済的価値があったため1人当たりの捕獲数も多かったためです。
シカ、イノシシは繁殖力が高く、シカのメスは生後1~2年で出産でき、その後高齢になるまで毎年1頭の子供を産み続けます。イノシシは、1回に4~6頭の子供を産み、年に2回出産することがあります。生後約1年で子供を産めるまで成熟するので、放置すると爆発的に増加します。このような増加は捕食者オオカミが絶滅し、ハンターが減少・高齢化した環境に適応した結果です。捕獲を強化し狩猟圧を高めるとともにオオカミの捕食圧を再導入で取り戻す必要があります。オオカミは捕食で直接個体数を減らすことに加えて少数のオオカミが存在すると捕食されるシカは行動を変え、栄養のある草木が少ない森の奥に逃げ込み、栄養不足となり妊娠率と出生率が下がります。加えてオオカミの存在そのものが恐怖となってシカの心理に影響し繁殖力を下げ、個体数を減らします。人間の行う狩りは恐怖のストレスがないので繁殖率を下げられず、ほとんどのメスシカが妊娠しています。捕食者のオオカミは欠かせません。(井上守)


