満身創痍の名峰伊吹山
伊吹山現地見学会の報告
9月13日大雨の伊吹山に、オオカミ協会の現地見学会に参加しました。この山を崩すシカは獲っても獲っても減らず、植生を守るシカ柵は作っても作っても食い破られてしまっています。大きな土砂災害もありましたが、行政や保護団体はあきらめないで地道にシカの捕獲と柵の設置・維持管理を続けています。もうあきらめてオオカミ再導入による自然復活にかじを切ったらどうでしょう。

初代井伊直正公から代々の藩主が在国中に御国の誇りとして彦根城から眺めた伊吹山は、合戦もないのに満身創痍の状態でした。西側(画面左)は鉱山会社によって石灰岩が掘り続けられ、南面(正面)には縦しまが深く刻まれ続けています。どちらも現在進行中です。
驚かないでください。南面の大きな傷はこの20年ほどの間にシカが引き起こしたものです。天敵オオカミがいない自然の中で激増し、数の力で最強となったシカは山を破壊する恐ろしい獣です。この写真を撮っているとき、地元の方が大雨で山崩れが起きて裸地が増えていると知人に説明しているのが聞こえましたが、それは間違いです。原因は、オオカミを絶滅させた後に、オオカミのようにシカを減らすことができない人間にあります。

山頂直下の急斜面もこのとおり広範囲の裸地化が見られました。このような岩肌と緑のコントラストを美しい景観と思う方がいるかもしれませんが、ガリー侵食から斜面崩壊の危険があります。ここでは緑があった時の景観写真と比べて、問題を認識できるようにすればいかがでしょうか?
広範囲に植生保護シート(ヤシネット、マット)で覆い植生を回復することが効果的ですが、このような急斜面にシートが浮き上がらないように設置することは困難なことと思われました。また植生が回復しても、自由に移動できる柵外のシカに食べられてしまうでしょう。長年狩猟と柵設置によるシカの管理が試みられてきましたが、負担が大きく成果は期待できないと認めて、今すぐ生態系の修復に舵が切られるべきです。

遊歩道から離れて御花畑を守るために設置された環境保全のための柵ですが、柵外の醜い裸地を来訪者の目から隠す施設のように思えました。観光保全柵ともいえる。ネコの子一匹入らぬように厳重に張られたシカ柵ですが、散策中にシカの警戒発生が聞こえました。明らかに柵内からでした。
日本一の積雪が記録されたという高標高地での柵の維持管理には大変な労力がいりますが、シカが減らぬ限りいつまでも続けられなければならないのです。シカをコントロールするオオカミの復活が必要です。

伊吹山ドライブウェイの展望地で急斜面をのぞくとガリーができていました。シカ食害で荒れ果てた山肌の下方、疎林の縁には数頭のシカが見られました。森の中には、一体何頭いるのだろうか? 2022年に岐阜県が行った調査では平方キロメートル当たり30頭から60頭がいるということです。
生息数を減らせば良いといわれますが、大型囲いワナ、ドロップネット、箱ワナ、くくりワナ、銃猟、運搬用ドローン等あらゆる手が尽くされています。しかし、猟師が足りず高齢化しています。首尾よく減少できたとしてもその状態をいつまで保つことができるのだろうか? 人の管理ができなくなっていることを認めて、早く日本の生態系から消えたオオカミを復活させるべきです。

緩やかな傾斜の山頂付近は、保護団体等の地道な努力により保護柵が設置されて御花畑を守ることができました。しかし、シカの頭数を削減できないままに、このような急傾斜地では、シカを排除する柵は作ることができないで放って置かれたままでした。その結果斜面の植生が消えて保水力を無くした山肌が侵食されています。
柵の設置はムリだとわかります。しかし、伊吹山の山頂だけを残すつもりなのですか? と、あえて問いたい。山本体を守る有効な対策はオオカミ再導入だ。(井上守)

