「オオカミ再導入」について発言!【南アルプスフォーラム】
「南アルプスフォーラム」が、2011年12月3日(土)、山梨県韮崎市東京エレクトロン韮崎文化ホールで開催された。このフォーラムは、南アルプス世界自然遺産登録推進協議会が、南アルプスの魅力や登山の楽しさをより多くの人に知ってもらおうと主催したものである。
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プログラムは2部構成。前半は登山家の天野和明氏の講演「南アルプスの魅力」、後半はパネルディスカッション「南アルプスの自然を語る」である。会場には、2009年に天野氏が受賞したピオレ・ド・オールの金のピッケルも展示されていた。参加は、一般のほか、近隣の10市町村の首長、議長。それに後藤斎・米長晴信国会議員、山梨県知事代理、環境庁関東支局、林野庁、南アルプス市在の環境省自然保護官など。
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パネルディスカッションでは、南アルプス芦安山岳館館長の塩沢久仙氏がコーディネータを、天野和明、富士山ガイドの渡辺佐智、山梨放送の小林慶太、山梨県山岳連盟会の秋山泉の4氏がパネリストを務めた。南アルプスの世界自然遺産登録に向けた活発な意見交換が行われ、シカの食害も問題になった。天野氏は、自然回復に向けてオオカミ再導入について言及した。
最後に、会場全体に意見が求められたので、JWA会員のY氏は次のように述べた。
「私は、自給自足の生活を目指し、山梨県に移住した。しかし、サル、シカ、イノシシの害が甚大で、網を張る、鉄砲所持の許可を得て駆除するなどの対策をしているが、それほど効果はない。特に感じることは自然の生態系の狂いであり、この狂いは明治時代にオオカミを絶滅させてしまったことに起因している。近年は、アライグマも増加している。天敵がいなくなってしまったわけで、現状を元に戻すために、日本の山にオオカミを復活させ自然を取り戻そうと主張する日本オオカミ協会に入って活動している。この秋には、富士川町と南アルプス市、さらに長野県の松本でも、オオカミ再導入をテーマにした連続シンポジウムと講演会が開催され、とても盛況であった。オオカミ復活に関心を示す多くの人々の存在が明らかになった。南アルプスが世界自然遺産に登録されるためには、南アルプスの自然を取り戻すための活動、オオカミ再導入が必須である。」天野氏のオオカミを放すという発言を受けて、南アルプスが抱える自然破壊を防ぐという難題の解決策として、JWAのオオカミ再導入活動という選択肢を知らしめたことは時宣に適っていた。
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JWAが行った連続シンポジウムは、すでにオオカミと共生しているドイツから専門家を招聘し、札幌、帯広、釧路、東京、松本、富士川町(山梨県)で開催したものである。予想以上の聴衆を集め、社会的関心が高まっていることが実証された。米国のイエローストーン国立公園では、1990年代にオオカミの再導入が行われ、生態系の復元が確認されている。今後の登山は、趣味や余暇にとどまらず、自然生態系の保護・再生の観点が求められていると言えよう。