好評!山陰初の米子オオカミ展

米子市美術館での展示

中国山地にもオオカミ復活を

 山陰地方初めてのオオカミ展を去る2024年3月22日~24日、米子市美術館で開催しました。米子市教育委員会、境港市教育委員会から後援を、株式会社山陰合同銀行から協賛を頂きました。

 山陰へのイノシシの進出は半世紀以上前に遡りますが、シカの進出がはっきりしたのはここ20年ほどのことと言われています。イノシシは積雪の少ない日本海岸沿いを山口県方面からやってきたと見られています。一方、シカは、最近十数年の間に雪の少ない山陽地方から中国山地を越えて一斉に侵入し、大山をはじめとした山地森林に深刻な被害を発生させています。その被害は、大山に代表される自然生態系だけでなく、林業、農業、交通など広汎に及んでおり、その激しさは年々増しています。他の地方と同じように、これを防止する手立てが見つからず、このまま放置するならば被害の拡大はとどまることはなく、オオサンショウウオのような稀生物の生存をも脅かすことになります。

 オオカミの再導入による復活が残された希望なのですが、県民の理解はまだまだです。そこでオオカミに親しみを感じて、オオカミ復活の重要性を科学的に知ってもらうことを目的にして、各方面のご理解とご協力を得て、今回のオオカミ展を開催しました。

 開催3日間で約190名の来訪者があり、熱心に展示を見ていただきました。25枚の展示パネルによるオオカミ再導入に関する説明を中心に、今回のオオカミ展開催に併せ、古庄弘枝さんの新作絵本「オオカミのパペット(操り人形)」も展示しました。神奈川県横須賀市からはるばる駆け付けた高木英寿さん(JWA理事)による組み立て式のミニジオラマを見てもらいながらのオオカミ・パックとテリトリーシステムについての説明も関心を引いていました。

 特別展として、子ども達を対象に、オオカミの絵コンテストを行いました。会場を賑やかに飾った応募作品20点はきっとオオカミファンを増やしたはずです。Tシャツをはじめとしたオオカミグッズの物販も行い、多くの売り上げがありました。これもオオカミに親しんでもらうのに役立っています。

 感想を来場者の何人もの方から頂きました。後掲しましたのでどうぞご覧ください。例えば、「オオカミ導入による自然保護の考え方があることを今回初めて知り、大変興味深く感じました。」「地道な活動に感謝します。全てを自然に委ね、人間が自然をコントロールしない世界が出来ますように。」「図書館に来ましたが、のぼりを見て来場しました。大切な社会問題を知ることが出来、また誤解を知ることが出来、とても勉強になりました。」などの感想を頂きました。

 一方このような意見もありました。「シカ被害の根本原因の一つがニホンオオカミの絶滅による生態系ピラミッドの崩れであることは間違いないと思う」としながら「ニホンオオカミと近縁であるハイイロオオカミを再導入すべきと考えるには疑問がある」との感想もありました。

 この方が考えておいでの「疑問」とはどのようなものかわからないのですが、近縁亜種といっても絶滅したニホンオオカミと同じ役割を果たすとは限らないのではないかということなのでしょうか。そうだったら心配は要りません。ハイイロオオカミの食性の中心は中・大型の植食性哺乳類ですから、日本に再導入されれば、シカやイノシシを中心にして積極的に捕食することでしょう。「郷に入ったら郷に従え」の例えのように、食性などの再導入種の生態は日本の環境条件によっても決まるので、細かい心配は無用です。日本の生態系と日本に住む人々に悪い影響が出ることは先ず考えられません。

 今回使用した展示パネルは2023年安曇野展用に作成したものです。普段はJWAの新設「熊野の森オオカミみゅーじあむ」(熊野本宮在、館長大槻国彦氏)で展示・保管されています。別の場所でのオオカミ展開催に際しては貸出し可能です。

 今回の展示は、一社)日本オオカミ協会本部の支援の下、鳥取県会員有志(辻元篤郎、中村富士子他数名)のボランティアで開催しました。
(米子/辻本篤郎)

米子オオカミ展 来場者の感想

  • 森林保全を職場を通じて少し取り組んでいます。オオカミ導入による自然保護という考えがあることを今回初めて知り、大変興味深く感じました。色々な方法があると思いますが、今回のパネル展を通じて意識の変化があることを祈念します。
  • たまたま通りかかったら、大好きなオオカミの展示をやっていてびっくり。興味深い。美しい。自然のためにも復活して欲しいと思いました。
  • イノシシの獣害にずっと悩まされており、何をやってもいたちごっこ状態です。何かヒントが得られればと思い、寄らせて頂きました。欧米の例を見ても十分に検討されるべきものだと感じました。
  • イエローストーン同等に日本でもオオカミの復活が必要なのかも知れませんね。
  • 興味深い展示でした。日本にオオカミが居ないのはおかしいと思いました。
  • シカ被害の根本原因の一つがニホンオオカミの絶滅による生態系ピラミッドの崩れであることは間違いないと思う。しかし、その問題を単純に考え、ニホンオオカミと近縁であるハイイロオオカミを再導入すべきと考えるには疑問がある。イエローストーンの例を出しているが、再導入したカナダはそもそも大陸が繋がっており、生物相が同じであるが、日本は島国であるためその例を当てはめて考えるのは怪しいと私は思う。ただ、このようにニホンオオカミの再導入に焦点を当てて議論を続けることは大切であると思う。より良い世界となるようこれからも頑張って欲しい。
  • 知らないことの恐怖心を減らすことが出来ました。多くのデータの中には日本列島のような島国でのものも含まれていくことも願います。
  • 地道な活動に感謝します。すべて自然に委ね、人間が自然をコントロールしない世界が来ますように。
  • オオカミがいなくなった生態系を知れて良かった。オオカミにいつか会いたいなと思いました。
  • 昔、保護犬のシベリアンハスキーを飼っていたのを思い出し懐かしいような(飼っていたのは犬ですが)最近は都会の土地開発で熊、イノシシ、シカの被害が多く共存について考えさせられます。TVで時々特集しているように、幻のニホンオオカミが発見できればと思います。企画して頂きありがとうございます。
  • オオカミと言う生物の偉大さ、かわいらしさを感じました。獣害が増えているので、是非頑張ってほしいです。
  • 図書館に来た際にたまたまのぼりを見て来館しました。大切な社会問題を知ることが出来、誤解の問題を知ることだ出来、とても勉強になりました。ありがとうございました。

以 上

米子市美術館での展示
米子市美術館での展示
絵コンテストを行いました。右から二人目、筆者(辻元篤郎)
絵コンテストを行いました。右から二人目、筆者(辻元篤郎)
古庄弘枝さん作「オオカミのパペット」
古庄弘枝さん作「オオカミのパペット」
高木英寿さんによるジオラマを使いオオカミ・パックとナワバリの説明
高木英寿さんによるジオラマを使いオオカミ・パックとナワバリの説明
お絵描き
お絵描き

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