第9回全国オオカミアンケート調査2019報告


全国12,114人から回答

オオカミ復活「賛成」41.2%

前回(2016年:3年前)に
比べて2.1ポイント減少。

「反対」14.5%

3.5ポイント増加。

「わからない」43.9%

0.6ポイント増加

2012年以降、総じて横ばい!

オオカミ復活賛否の変動

【1】日本へのオオカミ再導入に関する国民の理解及び賛否の状況を知るために、1993年以来3年ないし4年毎に実施しているものである。この報告書は、一社)日本オオカミ協会による第9回全国オオカミアンケート調査(2019年1月1日から12月31日の間に収集)の結果である。

 アンケート集めは、日本オオカミ協会会員560名(全国13支部)とともに会員以外の多くの協力者にもお願いした。アンケート回答者は、協会会員を除く一般人とし、公園、駐車場、ハイキング道路、行楽地、お祭りの会場等、多数の人々が集まる場所で行うように努めた。オオカミに関する講演会や展示会会場等では、回答の偏りを避けるために実施しないこととした。本調査は、僅かな資金で実施せざるを得なかったために、お金のかかる系統抽出手法を採用できず、「行き当たり的・場当たり的」に、可能な限り多数の回答を国民各層から集め、国民の偏りのない平均的な答えを得ることとした。このため、調査手法によるバイアスを極力小さく抑えるために、回答数は可能な限り多数とし、その目標数を1万以上とした。結局、回答者数は目標数を上回る12,114人であった。

 地方別回答者数は、北海道419、東北20、関東2381、中部2,024、近畿620、中国1,116、四国5,034、九州433、その他15及び無回答54となった。居住環境は都市部34.4%、都市以外63.3%であった(無回答2.2%)。性別は、女性36.8%、男性62.9%(無回答0.3%)。回答数の年齢分布は、10代8.0%、20代14.7%、30代21.4%、40代20.1%、50代10.6%、60代10.6%、70代以上14.1%であった(無回答0.5%)。

【2】「オオカミ復活必要」41.2%は前回(2016年)に比べて2.1ポイント減少、「不必要」14.5%は3.5ポイント増加、「わからない」43.9%は0.6ポイント増加となった。

このアンケート調査を始めた1993年以降、オオカミの復活賛成数はS字状に増加してきたが、今回は頭打ちとなった。「不必要」は直線状に減少してきたが、今回は減少が止まって僅かに増加した。「わからない」は緩い山なりを描いて、2002年までやや増加、2009年以降緩やかに減少していたが、今回は前回とほぼ変わらなかった。全体の傾向は、2012年調査結果と類似し、2012年以後の7年間は総じて動きが僅かな横ばい傾向を示している。オオカミ復活の必要性に関して国民各層への教育普及活動の強化が求められる。

【3】「オオカミ復活賛否」を性別にみると、「必要」は男性43.0%、女性38.5%、「不要」は、男性16.1%、女性11.8%、「わからない」は男性40.9%、女性49.7であった。理由はわからない。

【4】年齢階別では、復活必要については前回と同様に10代で高く、30代、40代で底を打った後、高齢化につれて徐々に高くなった。高齢世代の60代及び70代以上は前回よりも各8、10ポイントも低くなった。高齢世代の下降原因は不明である。30・40代の底打ちは、この世代が生計・育児などで厳しい生活条件にあり、環境・文化などに目を向けるゆとりに欠けることと関係しているのかもしれない。

オオカミ復活賛否の年齢階別

【5】オオカミは「生息している」26.9%、「わからない」19.5%、「元々いない」1.4%といった誤答は47.8%に及んだ。一方、「絶滅した」との正解は52.0%であった。「生息」との誤答者の理由に直近放映の「狼探し」番組(NHK)の影響があったようである。日本と外国のオオカミの種類についての誤答は、「別の種」が63.0%であり、正解の「同じ種」は僅かに6.3%に過ぎなかったのには驚きであった。「わからない」30.3%であった。総じて国民のオオカミの分類学的知識は浅く、一層の啓発が必要である。オオカミの習性についての正解「臆病で通常は人を襲わない」が51.0%を占め、次いで「わからない」30.8%、誤答「どう猛で人を襲う」は17.3%と僅かであった。これは、日本オオカミ協会などの最近の啓発活動の成果かもしれない。

【6】「オオカミは必要」とする職業別回答は、農林漁業者(303人)で特に少なく20.8%、ついで公務員(356人)で32.6%であった。この2グループでは「わからない」は各61.1%、53.4%と特に高かった。これらの集団は保守的であるために「オオカミ」を禁句としている行政を忖度した結果かもしれない。

【7】「オオカミ復活必要(4,994人)」に関する理由(複数回答可)のうち最も多かったのは、「オオカミは生態系・生物多様性にとって必要」68.6%であった(前回比0.1ポイント減少)。次は「獣害対策に狩猟だけでは不十分」47.8%(前回比3.4ポイント増加)、「絶滅種の復活は人間の責務」32.5%(前回比7.6ポイント減少)であった。「オオカミは好きな動物」という感情的な理由は18.6%で、前回に比べて5.1ポイント増加していた。

【8】「オオカミ不必要(1,760人)」の理由(複数回答可)で、高かったのは「オオカミは人を襲う」41.3%、(前回比2.4ポイント増加))、「生態系へ悪い影響を及ぼすから」「家畜やペットを襲うから」がほぼ同じで各35.8%、34.3%だった。

「オオカミ復活必要」の理由に「オオカミは生態系・生物多様性にとって必要」をあげる人は約7割であり、オオカミの捕食者としての役割が期待されている。しかし、反対の理由として「生態系へ悪い影響を及ぼすから」をあげる人が増えていることは、国民が正しい生態学的知識をまだ十分に理解していないことを表している。オオカミの生態系への役割について誤解が増えていることが、今回調査で「オオカミ復活必要」が減少し、「オオカミ復活不要」が増加した一因と考えられる。外来生物排斥論が喧伝される中で、再導入されるオオカミは外来種ではないこと、再導入オオカミの生態系への役割について一層理解を求めることが重要である。

また、「オオカミ復活必要」の理由として「獣害対策に狩猟だけでは不十分」47.8%(前回比3.4ポイント増加)であるのに対し、「オオカミ復活不要」の理由で「獣害対策には狩猟を強化すればよい」「ジビエ振興でよい」からとするのは、合わせて17.5%(前回比3.1ポイント増加)であった。ジビエ(野生鳥獣肉料理)普及に関するニュースは非常に多いが、ジビエによる狩猟振興政策は期待されていない。

【9】カワウソについては、前回調査ではオオカミよりも復活支持率が低かったが、今回オオカミとほぼ同じ41.4%(前回比4.0ポイント増加)になり、「不必要」8.1%、「わからない」が47.8%(前回比7.1ポイント減少)であった。これは、2017年に長崎県対馬で38年ぶりに野生カワウソが確認されたニュースが全国に報道され、カワウソを身近にしたためと考えられる。

 年齢階別の賛否は、オオカミの賛否とほぼ同じ傾向である。「復活必要」は10代が56.5%と最も高いが、20代ではやや減少し、30代では36.4%、40代37.3%と底を打った後、70代以上の47.7%に向かって再び上昇している。「分からない」は「必要」とは反対の傾向を示した。年齢階間に一定の傾向が見られなかったのは「不必要」で、どの年齢階も6.7%~9.7%と低値であった。

 オオカミと比較してカワウソは人身傷害といった誤った偏見は社会的にはっきりしないことから、30代、40代の「復活必要」賛成の底値は、これらの年齢階の社会に関する無関心と子育て世代ゆえに馴染みの無いものに対する警戒心が影響しているのかもしれない。カワウソは河川湖沼といった水界生態系の頂点捕食者である。オオカミと同じように強力なカワウソ復活運動が必要であり、世論喚起が求められる。

カワウソ復活の賛否

【10】日本オオカミ協会(JWA)を「知っていた」のは、19.9%(前回比0.8ポイント増加)と前回とほぼ変わらなかった。都市と都市以外での認知度はほぼ同じであった。これを性別で見ると、男性22.4%(前回比2.1ポイント減少)、女性15.7%(前回比3.0ポイント増加)であった。

【謝辞】 今回アンケートに当たり快く回答していただいた全国各地にお住いの皆様にあらためて厚く御礼申し上げます。またアンケート集めにご協力いただいた一般の皆様、ボランティアはじめJWA会員および支部役員の皆様に感謝いたします。

【調査グループ】 総括:丸山直樹、井上守、集票・集計:井上守、PC入力:小野寺美洋子、澤川隆、斉藤恭子、吉田和夫、石原宏一、青野ダイチ、渡辺隆一、知念さくら、手戸博信、井上千代子、ヨーコ (Kyat)、清水大詩、日亜化学㈱(順不同)

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