オオカミが絶滅した生態系の今昔:忍び寄るシカの害

紀伊半島大台ケ原の白骨林の今昔

1980年代からシカが全国各地で急増している。低地から高山帯まで、その被害は甚大だ。ごく最近の植生学会の調査によると: 国立公園など全国での調査箇所の48%で食害の影響があり、20%では林床の草本の著しい減少や土壌の流出など重度の影響が出ているという。これに気がついている人は少ない。美しい国土を守るためには、「増えすぎのシカ」対策が緊急に必要だ。

紀伊半島大台ケ原の白骨林の今

この白骨化した枯死林を見て「これこそ深山幽玄の世界」と感心する人が多い。伊勢湾台風(1959年)の被害を受けた後、シカに齧られて枯死したオオダイトウヒやウラジロモミの原生林の残骸だ。場所は、紀伊半島、三重県と和歌山県境にまたがる大台ケ原(東西5km、最高峰日出ヶ岳標高1695m)の無残な光景だ。
本来の風景は半世紀前に遡らないと出会えない。この写真の中に移っている看板の中の写真にかつての森が写っている。これこそ、深山の昼なお暗い苔むした原生林なのだ。もう誰もこれを見ることはできない。こうした光景は、ここだけではない。環境省の遅すぎる対策が被害を大きくしてしまった。

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