福知山市ではなぜ常設捕獲隊が集まらないのか
記事を抜粋すると、次のようになろう。
『常設捕獲隊発足できず 福知山市の有害鳥獣対策』
有害鳥獣対策を狙い、福知山市が目玉事業として本年度当初予算で計画した(京都)府内発の常設の捕獲実施隊が発足できずにいる。地元2猟友会から選抜した隊員が有償で月16日間、市内を駆除に回る構想だが、両会との調整が難航。
同市では昨夏、山中で駆除中の猟友会員2人が死亡する猟銃事故が発生。市は対策のため、猟友会に許可を出して日時や地域を定めず駆除を任せていた従来方針を見直し、月2回の一斉捕獲としたが、今度は農家から実効性に不満が出ていた。
こうした背景から、常設の捕獲隊構想は計画的な駆除と安全確保の両立を図る新たなアイデアとして注目を集め、市も「府内の有害鳥獣対策モデルを目指す」(林業振興課)自負と。2月に発表した当初予算案で事業費1千万円を計上した。ところが今年度に入っても発足せず、今も契約に至っていない。
その理由は、関係者の話を総合すると、各地域の班単位で動いていた従来のやり方と違い、なじみの薄いメンバーと土地勘の乏しい山で駆除を行うことへの懸念や、高齢化で連日動ける会員が少ないため、隊員8人の選抜が難航。さらに猟友会長と市担当者の双方が4月以降に交代したことも影響しているという。<以下略>
京都新聞2011/8/23 http://kyoto-np.jp/politics/article/20110823000031
狩猟者の激減および高齢化は、この市だけでなく全国的な傾向である。今後の獣害対策として、頂点捕食者オオカミは奥山中心、狩猟者は里山中心という図式が考えられるが、これには一定数のハンターの確保が前提となる。ハンター確保に関して、この市の方策は注目されるが、残念ながら難航しているようだ。その理由のひとつは、高齢化により人員確保ができないことにあるのだから、これでは答えになっていない。ハンターが減ってしまって、確保困難ということで常設隊編成構想が出てきたのである。地元で常設隊の人材が集まらないのは当たり前である。この正解は、現役狩猟者でなく、若い新人の採用が必要なのである。人材は、地元に限らず、広く募集し、採用試験も実施すべきである。新人にとっては狩猟に慣れる訓練期間が必要であり、定期的な技能試験も義務付ける必要がある。新人訓練にこそ、土地勘があって狩猟技術に優れた地元の老練ハンターを採用すればよい。福知山市の捕獲隊員は非常勤であるが、正規の常勤にすべきである。そうでなければ人は集まらない。また事故が起きた場合、隊員は業務上過失傷害または致死に問われるので、新保険制度整備に加えて、事故防止技術の開発と常日頃からの厳しい訓練が必要である。人に銃口が向いた際や、駆除地域に侵入者がある場合には、警報装置が作動するといった事故防止技術の開発が不可欠であろう。隊員の連帯感は、時間とともに強くなるから、最初は「なじみ」がなくても心配は要らない。こうした常設捕獲隊システムの確立は、復活オオカミの人馴れ防止教育にとっても不可欠である。工夫を重ねてぜひとも実現してもらいたい。(丸山直樹)