連続シンポジウム「ドイツに見るオオカミとの共生」(2011年10月3~9日)

会場、講演者および参加者(敬称略)

今回のシンポジウムは北海道、関東の6会場で開催されました。昼間の時間帯が多かったにもかかわらず、多くの方々にご参加いただくことができました。各地の開催日、会場と講演者、そして参加された方々は以下のとおりでした。

◆札幌会場◆10月3日 18~21時     札幌エルプラザ  参加者:120名
講演者:マグナス・ヴェッセル(NABU) 丸山直樹(日本オオカミ協会)
◆帯広会場◆10月4日 14~17時     とかちプラザ  参加者:50名
講演者:マグナス・ヴェッセル(NABU)    丸山直樹(日本オオカミ協会)
◆釧路会場◆10月5日 14~17時     まなぼっと幣舞  参加者:75名
講演者:マグナス・ヴェッセル(NABU)    丸山直樹(日本オオカミ協会)
◆東京会場◆10月6日 18~21時     文京シビックホール  参加者:180名
講演者:マグナス・ヴェッセル(NABU)    小金澤正昭(日本オオカミ協会)
堂本泰章(日本生態系協会)
対 談:横綱白鵬関/丸山直樹
◆松本会場◆10月8日 14~17時     松本市駅前会館  参加者:85名
講演者:マグナス・ヴェッセル(NABU)  小金澤正昭(日本オオカミ協会)
永井一雄(長野県議会議員)
◆山梨会場◆10月9日 13~15時     富士川町民会館  参加者:76名
講演者:マグナス・ヴェッセル(NABU)  小金澤正昭(日本オオカミ協会)

【司会】石川裕一(北海道・東京) 丸山直樹(松本・富士川)
【運営】土田晃嘉(北海道)朝倉 裕(東京)秋葉哲雄(松本)山野井英俊(富士川)
【通訳】桑原康生(北海道)  角田裕志(東京・松本)サイモン・バーナム(富士川)

シンポジウムのねらいと効果   :   一般社団法人日本オオカミ協会常務理事 秋葉哲雄

日本の生態系へのオオカミの復活を妨げている最大の障壁は、国土の自然条件等ではなく、人々の心の中に巣食う、オオカミは人を襲うのではないかといういわれなき恐怖感です。明治以後の公教育、赤頭巾や3匹の子豚等の寓話によるすり込みがオオカミは怖しい野獣という誤ったオオカミ観を人々に強く植付けてしまったのです。健やかな生態系のためには頂点捕食者であるオオカミが不可欠と理解できても、即復活へとは考えられない人たちの存在を、私たちは活動の中で常に感じてきました。

今回のシンポジウム「ドイツに見るオオカミとの共生」では、オオカミが人と生活空間を共にしていながら、人を襲うこともなく文字どおり共生しているドイツの実例を紹介していただきました。多くの人に恐ろしい野獣といった誤ったオオカミ観を変えてもらうことをねらったものです。

横綱白鵬関の、モンゴルでのオオカミとの遭遇体験談やモンゴルの人々が聖なる獣オオカミに寄せる尊敬の心などの話も、オオカミに親しみを感じてもらう上で大きな後押しになりました。

それでも、シンポジウムの各会場で、「オオカミは人を襲わないか?」、「万が一にも人を襲ったらどう
するのか?」といった質問がまだ一部聞かれました。しかしながら、日々獣害に苦しむ地域の方々からはオオカミ放獣の時期や方法などへの踏み込んだ質問や提案があり、オオカミ復活への理解の進んだことが感じられました。
今回のシンポジウムは、新聞、TV、雑誌などの多くのマスメディアの注目も集め、各誌、各局に前向きに取り上げられました。マスメディア経由で「オオカミ復活」を心に留めた人は、シンポジウム参加者の何倍にもなるでしょう。シンポジウムに参加されなかった多くの人にも、オオカミ復活への理解が一層進んだことと思われます。強く、確かにオオカミ復活を支持する人と共に、ソフトに広くオオカミ復活に理解を示す人が増えてゆくことは、シンポジウムの大きな成果といえます。
オオカミは怖くない。健康なオオカミは人を避ける。オオカミは日本の生態系に不可欠な頂点捕食者である。このことを理解する人々が今回のシンポジウムで大きく増えたことは間違いありません。

いまやオオカミ復活は、研究や広報の段階から具体的なプログラムの実践へと、そのステップが一段進んだことを確認できました。

Follow me!