シカの駆除に無駄使いは許されない! 北海道でのシカ駆除:自衛隊との協定事業

陸上自衛隊北部方面隊と北海道が2011年1月28日、道内の農林業に年間50億円以上の被害をもたらしているエゾシカの駆除に関する支援協定を締結し、全国で初めての大規模エゾシカ捕獲事業「白糠の夜明け作戦」が2月8日から10日まで道東の白糠町右股地区で行われた。

 この作戦の実施体制は、道が全体調整や報道対応など、白糠町と猟友会白糠支部が捕獲部隊編成とシカの処理、森林管理局が道路除雪を担当。北方は27普連(釧路)の隊員40人、高機動車11、資材運搬車2、スノーモービル3など車両約20両、5飛行隊(帯広)のヘリ2機が参加し、道、町、自衛隊、管理局の合同チーム約120人。8日朝、急峻な森林の上空を低空で偵察飛行。森林内にエゾシカの姿は確認されたが、飛行音を聞いても森から出ず、この日の捕獲数はゼロ。9日、地域を移動。猟友会会員7人が森の奥に入りシカを追いたて3頭を捕獲。最終10日は2日目と同じ地域でハンターの射撃待機位置を移動し、ヘリからシカの位置情報を受け移動させた結果、25頭を捕獲。3日間の総捕獲数は28頭だった。年間50億円以上の農林業被害を抱える北海道のシカ対策は深刻だ。2010年10月現在のエゾシカの推定生息数は64万頭。対して、狩猟・駆除による捕獲数は9万2千頭。年増加率20%といわれるエゾシカの増加数、約13万頭に及ばない。
<以上、朝雲新聞 2011/2/17 から抜粋>

 「白糠の夜明け作戦」は、なんのことはない「大山鳴動ネズミ1匹」、失敗に終わった。シカの専門家の立場からは、初めから結果がみえていた愚策であった。減る一方の北海道内のハンター4千人台では、とてもシカに太刀打ちできない。この苦肉の策が今回の駆除作戦である。初めての試行というハンデを差し引いても、3日間で28頭という実績はまことに情けない。それでも「エゾシカの生息状況調査は今後の捕獲事業立案などにも役立つ。陸自にはこれからも事業への協力を要望していきたい」とは、道環境生活部の開き直りの強弁だ。この次は、この経験を学習したシカたちはさらに巧妙に逃げ回るであろう。

それにしても、この「夜明け作戦」の経費はどれくらいかかったのか、新聞は報じていない。この点も忘れずに取材して欲しいものだ。あえて見積もれば、少なめに算出しても1千5百万円はくだらないだろう。駆除1頭約50万円というコストだ。現在の全国市町村の駆除報酬額は1頭5千円から1万円と比べると、べら棒な金額だ。明らかに税金の無駄使いである。国・地方自治体合わせて行政赤字1千兆円を超え、東日本大震災からの復旧に莫大な財政支出を強いられる今後を考えると、こんな繰り返しはもう許されない。こんな「放蕩」に行政が手を染めるのは、ハンターが全国的に急減し、どのような管理計画も、実行手段を欠き、机上の空論化しているからである。

今後は、お金の無駄使い防止のため、シカ被害対策にも国民の厳しい監視が必要である。無駄な経費を極力省き、大震災、原発事故からの復旧を進め、格差解消、福祉、年金、医療、教育、産業育成などに予算を回さなければならない。シカのコントロールで経費がほとんどかからない方策はただ一つ、極力自然に逆らわず、自然は自然の手に委ねること、すなわち、オオカミ復活による食物連鎖の修復を急ぐべきである。生態学のイロハとも言うべき、わかりきったことをためらう理由は無いはずだ。

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