長野県知事 阿部守一様 あなたのオオカミ答弁は変ですよ!

[毎日新聞2012年2月28日地方版、仲村隆記者]

この記事によると、同県2月定例議会で永井一雄県議によるオオカミ導入に対する阿部知事の答弁は、「オオカミの一つの群れが、生息に必要な面積は県の10分の1に当たる広さ。現実として難しい」であった。エッ、本当?これには驚いた。

同県の面積は、13,133平方キロメートル。その10分の1は1,313平方キロメートルとなる。こんな「べらぼう」なオオカミのナワバリ面積などツンドラ地帯以外の地域では聞いたことがない。通常、食べ物となるシカの頭数が十分であれば、オオカミの一つの群れ(群れ構成数5ないし6頭)のナワバリの面積は100~200平方キロメートルと考えられ、長野県のようなシカの増えすぎ状況下では、100平方キロメートル以下になることも知られている。ドイツのラウジッツ地方のように森林率が20パーセントと低いところでも、オオカミの群れは8群が生息し、単純に同地方の面積2500平方キロメートルを群れで割ると300平方キロメートルである。同知事の答弁にあるオオカミ一群れの必要面積は、実際の10倍前後ととてつもなく大きいことが分かる。知事は、事務当局が用意したメモにある数値を一桁読み違えたのかもしれない。そんなことで「現実として難しい」もあったものではなかろう。

しかも、「オオカミがニホンジカの頭数をコントロールするのは困難」などと、見当違いで頓珍漢な答弁をされると、質問者にとってもオオカミにとってもまったく腹立たしい限りであろう。ちなみに、北米や欧州のデータに基づく概算では、長野県のオオカミの可住面積を同県の60パーセント、7800平方キロメートル、オオカミの一群れに必要な面積をナワバリ面積と緩衝地帯面積を合わせて120平方キロメートルと想定すると60群、360頭のオオカミが生息可能である。もちろん、この推計は前提となる数値によって変動するが、どう転んでも知事の答弁のような結論にはならないのである。

失礼ながら、阿部知事に申し上げたい。きちんとした生態情報に基づくことなく、否定的結論を出すのは、科学的ではない。正しい情報を集めて客観的な分析を行い、公正な判断を下すべきである。また、事務当局も、オオカミを毛嫌いするのではなく、オオカミについてよく勉強し、正確で公平な情報を知事にテーチインしてもらいたい。無知蒙昧な行政は県民を不幸にする。それだけでなく、かけがえのない自然を破壊してしまう。

(2012年4月30日記:狼花亭)

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