詩:オオカミの復活

花水川物語132

(府川 清)

(1)シッポを振って
あなたの愛犬は  オオカミが祖先
大むかし  尻尾を振って人間に近づいてきた
肉食のオオカミは  リーダーの統率のもと
小動物には目もくれず  鹿・猪など有蹄類を襲う
数万年前 人間のゴミ捨て場に彼らの一部が  生きる道を見つけた
楽して 餌にありつけるため
群れから離れた危機が  そうさせたのか
残飯を漁る姿は 進化なのか 退歩なのか
人間に近づいたオオカミは  急速に温和になり
野性を捨て  家畜になる道を選んだ
動物学者の研究で  わかってきた

(2)大神と誤解
オオカミは大神  野生動物の頂点として君臨
自然のバランスを維持する  重要な捕食者

襲われるシカ、イノシシにとって
存在自体が豊かな森を追われ  繁殖を妨げられた
花水川上流  丹沢周辺の旧家では
魔除けとしてオオカミの頭蓋骨が祀られ
オオカミは農民の守り神として敬愛されている
いまも  各地の神社で「オオカミの護符」が配られ
害獣・盗難・火災除け等として信じられている

狂犬病  餌付けで人馴れしたオオカミが 人を襲うことがあっても

健全なオオカミは襲わない
放牧した病弱な家畜を襲い  農民に喜ばれていた
だが  童話「赤ずきん」のように
子供や女性を襲うオオカミの「物語」が作られ
害獣として  駆除の対象にされた
銃・毒薬で退治され  狂犬病の蔓延もあり
日本のオオカミは 百年前に「絶滅」に追い込まれた
人間により  シカ  イノシシが乱獲され

頼りにしていた餌の減少も重なった

(3)自然のバランス
花水川右岸の丘陵地帯は  人家があり禁猟区
イノシシが大繁殖

収穫前の作物は被害甚大
楽しみにしていたイモ掘り

玉蜀黍 落花生など
イノシシに食い荒らされ農家は困惑
捕獲用の鉄製の大きな檻を  数十箇所に設置
年に数十頭捕まるが  被害は増えるばかりだ
イノシシは  夜行性だが  人と接する機会も増え
猪突猛進の襲撃で  ケガをする人もいる
高麗山・湘南平のハイキングコースに
「イノシシ出没・注意」の看板が あちこちにある

シカは 里山から原生林まで 木や草を食い荒らす
食害で困るのは  農業・林業だけではない
自然を破壊  森が枯れ  山のお花畑が消滅
裸になった斜面から  土砂が崩落・流出
住処を奪われた羚羊  雷鳥  シマフクロウなど
野鳥  昆虫  渓流のイワナ  沿岸の生態系も・・・

かつて狩人は大勢いて  狩猟が活発に行われていた
いまは  高齢化が進み  後継者も少ない
北海道から屋久島まで  猪・鹿は大繁殖
日本の自然・環境  農業・林業を守るため
天敵・オオカミの復活が  求められている
日本のオオカミと同種の東アジアに棲息する
ハイイロオオカミの再導入が候補に上がっている

(4)復活
グリム童話「赤ずきん」発祥の地・ドイツ

隣国・ポーランドから  越境したオオカミの群れ
住民も納得し  順調に復活がすすんでいる
放牧の羊が襲われれば  飼い主は補償される

日本で絶滅したトキ  コウノトリ
中国  ロシアから再移入  復活が進められている
ニホンカワウソも  復活して欲しい
それらが順調にすすみ
人口が減り  過疎地の広い山野に
オオカミの復活が待望される

※①日本の自然にオオカミの復活を進める『日本オオカミ協会』の
「チラシ」に触発され、参考にした。
②小倉美恵子著「オオカミの護符」も参考にした。

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