ウサギの耳に学ぶ野生動物との共存

私は広葉樹林業に取り組んでおり、山間地の苗畑で広葉樹の苗を育てています。

先日、播種したばかりのイチイガシのドングリと、育成しているイチイガシの苗がサルに軒並み食べられてしまうという被害にあいました。

すぐに既設の防獣ネットの上に電気柵を取り付ける対策をとり、サルが侵入したと思しき箇所に自動カメラを設置して、電気柵へのサルの反応を見ることにしました。

数日後、自動カメラに写ったのはなんとウサギでした。以前防獣ネットに開いた穴から苗畑にウサギが侵入した形跡があり、今回もまた苗を食べに来たようです。

https://www.facebook.com/otsuki.kunihiko/posts/303030848133971

動画を拡大してみてみると、防獣ネットのすぐそばで、周囲を警戒している一匹のウサギの左右の耳が高性能のアンテナのように角度を変えながら回転しています。真夜中で周囲に人間はいませんが、10秒間で一歩進んだきりでした。

「人と野生動物の共存」といいますがシカ、イノシシ、サル、クマなどの野生動物は互いに食う食われるの関係、また餌や生活場所を取り合うライバル関係にありながらも、自然の中で共存しています。

このウサギを例にとれば、自動カメラには身を守るために耳が発達し、常に周囲を警戒している姿が写っています。ほかの動物と一緒の場所で生きていくためにこのような自己防衛の手段を持つよう進化したと解釈できるでしょう。

我々もシカ、サル、イノシシに畑を荒らされたり、山でクマに出会ってしまうことがあります。人間も野生動物と相対したときにきちんと自己防衛ができないと共存は無理なのではないでしょうか。電気柵やモンキードッグの利用、自然の中での思慮深い行動やクマスプレーの携行などは共存のための手段です。

人間は肉体的な能力は野生動物に劣りますが頭脳を用いて個人の身体・財産、そして社会を防衛することができます。欧米でオオカミ復活が実現した後に電気柵や護衛犬を用いて家畜を守り、被害補償により牧畜業者の生活を守る取り組みがなされているのも良い例です。

もし日本がオオカミと共存できないような社会だと考えオオカミ復活は困難だと主張するのであれば、人身への危険性の高いクマと共存したり、鉄砲をもつ狩猟者や猟犬を適切に管理することなど不可能と言わざるを得ません。日本におけるオオカミとの再共存は、私たちに自然との本当の付き合い方を教えてくれることでしょう。

(記:大槻国彦)

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