【EU発!Breaking News】ドイツ:保護種のオオカミを撃ったハンター、懲役5年か?

ドイツのハンターが、Saxony-Anhalt地方東部に生息する2頭のオオカミのうちオス1頭を撃ったとし、起訴された。もしこのハンターが「故意に」このオオカミを撃ったことがわかれば、このケースは連邦の自然環境保全法に従って扱われる。その場合、懲役5年と罰金が課されることになる。また、もしハンターがこれをオオカミと知らずに「偶然」撃ってしまったのであったとしても、最長で6カ月の懲役が課されることになるという。自然環境大臣のPetra Wernicke氏は、この件に関し「保護種に対して慎重に対処するのは、ハンターとしての基礎知識の一部である」「今回の件は、非常に許しがたい行為」と厳しく批判している。   (TechnisightJapan編集部 しんたにゆみ:2009年6月10日)

 

昨年配信の記事であるが、読み返すたびに、ヨーロッパでのオオカミ保護の厳格さが伝わってくる。アメリカ合衆国でオオカミを保護する絶滅危惧種保護法(Endangered Species ACT)が成立したのは1973年であるが、6年後の1979年にECも自然と野生生物の保護に関する協定を締結した。オオカミやオオヤマネコのような中大型捕食者も保護種に指定され、これまでのように簡単に駆除することができなくなった。この協定はEUに引き継がれて今日に至っている。オオカミが家畜を捕食したとしても簡単には駆除許可は出ない。オオカミが何頭もの家畜を犠牲にした場合にだけ駆除が認められる。しかも、加害個体を特定しなければならない。

「赤頭巾ちゃん」「三匹の子豚」などの寓話を生んだ土地柄だけに、牧畜業者をはじめとして、家畜を襲うオオカミなど捕食者への憎しみは格別で、その分、保護に対する風当たりが強いことは想像できるが、かくも厳格な罰則が準備され、しかもきっちり適用されているのは驚きである。ということは、オオカミ保護派の政治的パワーが反オオカミ派のそれをはるかに上回っているということを意味する。

19世紀までに、ヨーロッパの多くの国では、オオカミを絶滅ないしはその寸前まで追い込んできたのであるが、最近ではフランス、ドイツ、スイス、イタリアなど28カ国で17000頭から25000頭のオオカミが復活している。2011年時点でドイツには約60頭が生息しているとされている。約150年振りの復活であるという。今や、オーストリア、イギリス、オランダ、デンマークなどオオカミが生息していない国をあげたほうが早い。これらの国も近いうちにオオカミが生息するようになると推定されている。海に隔てられている島国のイギリスでも、日本と同じように、オオカミ復活運動が展開されており、多くの国民から支持を集めている。

依然、誤解・偏見に影響されて、オオカミを怖がる「赤頭巾症候群」が根強い日本であるが、こうしたヨーロッパの状況を見れば、恐怖心は和らぎ、真にオオカミの生態系での役割を理解し、その復活を支持してもらえるのではないかと期待したい。

(丸山直樹・2011年8月7日)

 

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