村の高齢者ワナ駆除隊:その顛末はいかに?

西伊豆、駿河湾に面した松崎町在住の友人の話。
数日前、県の職員によるイノシシ駆除の講習会が開かれた。松崎町は昭和の初めに最後のツキノワグマが討ち取られた場所である。そんな町でも狩猟者が消滅しつつある現状では、残った高齢者に銃猟は無理との判断から、ワナかけ、柵つくりがテーマとなった。松崎町は以前からイノシシ被害に悩まされてきた。それに数年前からシカが増え始め、その分布前線は急速に南下し続け、2,3年のうちには南隣の南伊豆町を飲み込むはずだ。

シカは2方向から松崎町に攻め込んだのだ。ひとつは、踊り子で有名な天城峠方面、もうひとつは西天城高原からだ。ここは明治初めまでオオカミが生息していた。その麓の西伊豆町の黄金崎では、名物のカンゾウがシカに食われてほぼ全滅。

シカが増えたらイノシシは減るだろうが、シカの被害はイノシシ以上だ。そこで、ワナ講習会だった。しかし、集まったのはたった15名。しかも70代中心の高齢者。ウーン、である。このワナ駆除隊はあと何年もつのだろうか。

講師は爆裂花火の使用も推奨していたというが、実はこれについては筆者は経験済みである。庭のユリと畑の作物をイノシシから守るために、1週間以上、連夜、寝る前に発射していた。白煙を噴きながら夜空に「ひゅるひゅる」勢いよく飛び上がり、バーンと景気よく炸裂。「さあ、どうだ」と胸がすく。でも、怯えるのは猫どもだけ。ある朝見たら、ユリ数十本を一夜であっさりと掘り上げられてしまっていた。爆裂花火は効果なし。以後、花火は買わない。イノシシはますます凶暴化している。怖くて夜は用心しないと庭も歩けない。

今頃、ワナ爺たちはお茶を飲みながら談笑しているだろう。「県職はなに言ってるんだか。」そんな爺に野良で会うと挨拶代わりに声をかけられる。「おや、オオカミの先生ではないの。早よ、オオカミを放さんかえ!」これ、今や、あっちこっちの農村で見られる光景ではないか。
(8/31 丸山直樹)

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