ライチョウとオオカミ

雷鳥

ライチョウが生息する高山帯では、各地で天敵が増え、シカ、イノシシ等による環境の破壊が進んでいます。南アルプスでは、多くのシカが、夏季、高山地帯にまで出現。シカによる植生の破壊が原因でライチョウが急減。シカによる採食、踏みつけ、掘り起しで植生を破壊され、ライチョウの幼鳥が隠れ場所を失い、猛禽類のチョウゲンボウの攻撃に曝されるようになり、食物を失っています。

氷河期からの遺存種が生育する高山植物群落は、一度裸地化すると再び高山植物で覆われることはありません。その高山帯の植生をシカから守るための防護柵設置、柵のメンテナンス、土壌流出を防ぐため種子を吹き付けたムシロ設置工事が行われていますが、いつまでも続けられなければなりません。根本的な対策として天敵オオカミの復活が必要なのです。

オオカミの復活に対して、“オオカミがいた江戸時代にもシカ、イノシシは非常に多く、農山村は獣害に悩まされ続けてきたから獣害抑制にオオカミは役立っていない。オオカミはシカを抑制しない。”とする反対があります。しかし、この反対論者は自然領域と人間領域の境で人里や農作物を獣害から守る獣害対策と、奥山の自然領域で生物多様性を守るための生態系の復元対策とは全く次元の異なるものであることに気が付かれていないのです。

高山帯でシカや中間捕食が乱暴になりライチョウが苦しんでいる

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